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第三話
シャンプー
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美容室に着いた時、受付にいたのは、この前、シャンプーをしてくれた野村さんだった。
「珍しいですね。黒川さん、指名されないなんて」
「あ、ちょっと、すぐに切ってもらいたくて」
「でも、黒川さん、今日は大丈夫みたいですよ?」
ニッコリ笑う野村さん。
黒川さんがフリーなのは、いつもなら嬉しいはずなのに、今日は少し微妙な気分になって苦笑いが浮かんでしまう。
「いらっしゃいませ」
背後から聴こえたのは、黒川さんの柔らかい声。
いきなりだったから、肩がビクンッと震えてしまう。
「こ、こんにちわ」
ふりむくと、今日もステキな笑顔の黒川さん。
私、ちゃんと笑えてるかな。
結局、黒川さんに案内されて、鏡の前の椅子に座る。
「今日は、どうしますか?」
やっぱり、そのまま黒川さんが担当してくれるらしい。
鏡越しに見れば、たぶん、大丈夫、なんて少しだけ思ってたけど、やっぱり笑顔が固い自分が、真正面にいる。
「え、えと。そろそろ気分転換に、髪型変えようかなって」
「いいですね」
そういいながら、私の髪に触れる彼の手。
耳をかすめたその手は、冷たくて、心地いい。
「でも、もうちょっと長さが出てきてからのほうがいいかもしれませんね」
「あ、やっぱり、そうですか?」
「ええ。ちょっと、この長さだと、まだ何もできないっていうか」
こういう時にこそ、気分を変えたかったけど、長さが足りないと言われれば、仕方がない。
「まずは、少し伸ばしてからにしましょうか。そうだな、来月くらいなら、少しは変えられるかも」
来月になれば、私も変われるかな。
とりあえず、毛先だけ整える感じに、という話になった。
「じゃあ、シャンプー台へどうぞ」
他のスタッフさんもいるみたいだけど、今日は、黒川さんがそのままシャンプーしてくれるらしい。
大きな手が、ギュッギュッと私の頭をもみほぐす。
やっぱりシャンプーは、男の人の力強い手の方が気持ちがいい気がする。
「……何かあった?」
黒川さんが、小さな声で、優しく聞いてきた。
さすがに、涙腺が緩みそうになる。
「何もないですよ?」
「……そう? ……なんだか辛そうだけど?」
ガーゼ越しに、顔が歪みそうになる。
――そんなふうに優しく言うから、辛くなるんです。
やっぱり、来なければよかったかな、そんな思いが頭をよぎる。
「き、きっと正月疲れです。仕事、忙しかったから」
「……そっか、お疲れ様」
この想いもシャワーで流れ去ってくれればいいのに、と思うけど、実際は、そんな簡単には流れてはくれなかった。
「珍しいですね。黒川さん、指名されないなんて」
「あ、ちょっと、すぐに切ってもらいたくて」
「でも、黒川さん、今日は大丈夫みたいですよ?」
ニッコリ笑う野村さん。
黒川さんがフリーなのは、いつもなら嬉しいはずなのに、今日は少し微妙な気分になって苦笑いが浮かんでしまう。
「いらっしゃいませ」
背後から聴こえたのは、黒川さんの柔らかい声。
いきなりだったから、肩がビクンッと震えてしまう。
「こ、こんにちわ」
ふりむくと、今日もステキな笑顔の黒川さん。
私、ちゃんと笑えてるかな。
結局、黒川さんに案内されて、鏡の前の椅子に座る。
「今日は、どうしますか?」
やっぱり、そのまま黒川さんが担当してくれるらしい。
鏡越しに見れば、たぶん、大丈夫、なんて少しだけ思ってたけど、やっぱり笑顔が固い自分が、真正面にいる。
「え、えと。そろそろ気分転換に、髪型変えようかなって」
「いいですね」
そういいながら、私の髪に触れる彼の手。
耳をかすめたその手は、冷たくて、心地いい。
「でも、もうちょっと長さが出てきてからのほうがいいかもしれませんね」
「あ、やっぱり、そうですか?」
「ええ。ちょっと、この長さだと、まだ何もできないっていうか」
こういう時にこそ、気分を変えたかったけど、長さが足りないと言われれば、仕方がない。
「まずは、少し伸ばしてからにしましょうか。そうだな、来月くらいなら、少しは変えられるかも」
来月になれば、私も変われるかな。
とりあえず、毛先だけ整える感じに、という話になった。
「じゃあ、シャンプー台へどうぞ」
他のスタッフさんもいるみたいだけど、今日は、黒川さんがそのままシャンプーしてくれるらしい。
大きな手が、ギュッギュッと私の頭をもみほぐす。
やっぱりシャンプーは、男の人の力強い手の方が気持ちがいい気がする。
「……何かあった?」
黒川さんが、小さな声で、優しく聞いてきた。
さすがに、涙腺が緩みそうになる。
「何もないですよ?」
「……そう? ……なんだか辛そうだけど?」
ガーゼ越しに、顔が歪みそうになる。
――そんなふうに優しく言うから、辛くなるんです。
やっぱり、来なければよかったかな、そんな思いが頭をよぎる。
「き、きっと正月疲れです。仕事、忙しかったから」
「……そっか、お疲れ様」
この想いもシャワーで流れ去ってくれればいいのに、と思うけど、実際は、そんな簡単には流れてはくれなかった。
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