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第3章 しつこい男は嫌われますわよ
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ギルドカードを手に入れた私たちは、残り少ないお金で、できるだけ身の回りの物を買うことにした。
ギルドで武器や防具、道具などを安く売ってる場所を聞き、町の中を歩いていく。勧められた店はけっこう近くにあった。きっと、みんなまとめて買うんだろう。密集してあったのはありがたかった。
まずは、互いの格好を隠せるようなマント、それに身を護る武器も手に入れなくちゃいけない。キャサリンは元々帯剣しているけれど、私の武器といえるものは……乗馬に使う鞭くらいしかない。この先、野営は必須だろうから、そのための食料や魔物除けもだ。
「さすがにテントは買えないわねぇ……」
サンプルの下に置いてある値段を見て溜息が出る。
「お嬢様……まさか、本気で冒険者になろうなどと……」
「やぁねぇ、キャサリン。私にできるわけないでしょう」
余剰金でもあれば買いたいところだけど、そんな余裕なんかないからね。
実際、冒険者など無理な話なのだ。魔物とまともに戦ったことなどないのに、討伐のクエストなど受けられるわけもない。そもそも、今の低ランクでは、薬草採取くらいしか受けることが出来ないことは、私でもわかる。
結局買えたのは、二人分のマント(それも古着)と、私が使えそうな短剣、魔物除けのお香に、水筒。それに、干し肉や固いパンが少しだった。これで正直、どこまで行けるのか、不安ではあるけれど、まずは先に進むのが先だ。
私たちは買い物を終えると、すぐに宿に戻る。戻ったら急いで母に連絡をしなくては。お金を送ってください、と。
「キャサリン、お母様って冒険者の登録してるのかしら」
「っ!? え、ぞ、存じませんっ」
今更ながら、思いついたことを呟いてみれば、キャサリンも知らないという。
あれ、冒険者同士じゃないと送金できないんだっけ? 失敗した。そこんとこ確認してない。
「ん~、もう、ギルドに戻る気力ないから、あちらに丸投げしちゃいましょう。たぶん、お母様なら、色々知っていそうだし」
「そ、そうですね」
「で、連絡しおわったら、キャサリンは早く寝ること!」
「い、いえ、私は護衛ですから」
「……寝不足の護衛で、ちゃんと私を守れるの?」
「っ!?申し訳ございません……」
たぶん、さっきのことを思い出しているんだろう。彼女の罪悪感を利用するのは悪いけど、ちゃんと休んでもらわないとね。
まだ日は高いけれど、明日は早くにこの町を出なくては。目的地のモンテス伯爵領までは、確か乗合馬車で三日ほどと聞いた。馬で走れば、二日くらいで行けるはず。
キャサリンが伝達の魔法陣で鳥を飛ばしたのを見て、すぐさまクリーンをかけてベッドに押し込む。多少の抵抗をはあったものの、ベッドに入ってしまえば、やっぱり疲れてたのか、すぐに寝息をたてはじめた。
「さてと、後は何が出来るかしら」
無意識に耳に手をやり、考え込む。
……ん?
あ、忘れてた。
屋敷から出ていくときに、着替えの際に、邪魔になりそうなネックレスなどは取ってきたけれど。
「やだ、ピアスつけたままじゃない」
ぶら下がるタイプのイヤリングだったら気が付いたけれど、ピアスのことはすっかり忘れていた。血のように赤くて小指の爪ほどの大きさのルビーのピアス。
ピアスの穴は、ゴードン辺境伯領にいた時に母が開けてくれた。
王都に来た時までは母のくれたシンプルな小さな緑色の魔石をつけていたけれど、いつだったか、アルフレッド様からのプレゼントで頂いた物に変えたのだった。普段からつけていたものだから意識すらしていなかった。
もう私には愛着のない物となっているけど。
「これ、売れたりしないかしら」
取り外した二つのルビーのピアスを掌に転がすと、私はニンマリと悪い顔になっていた。
ギルドで武器や防具、道具などを安く売ってる場所を聞き、町の中を歩いていく。勧められた店はけっこう近くにあった。きっと、みんなまとめて買うんだろう。密集してあったのはありがたかった。
まずは、互いの格好を隠せるようなマント、それに身を護る武器も手に入れなくちゃいけない。キャサリンは元々帯剣しているけれど、私の武器といえるものは……乗馬に使う鞭くらいしかない。この先、野営は必須だろうから、そのための食料や魔物除けもだ。
「さすがにテントは買えないわねぇ……」
サンプルの下に置いてある値段を見て溜息が出る。
「お嬢様……まさか、本気で冒険者になろうなどと……」
「やぁねぇ、キャサリン。私にできるわけないでしょう」
余剰金でもあれば買いたいところだけど、そんな余裕なんかないからね。
実際、冒険者など無理な話なのだ。魔物とまともに戦ったことなどないのに、討伐のクエストなど受けられるわけもない。そもそも、今の低ランクでは、薬草採取くらいしか受けることが出来ないことは、私でもわかる。
結局買えたのは、二人分のマント(それも古着)と、私が使えそうな短剣、魔物除けのお香に、水筒。それに、干し肉や固いパンが少しだった。これで正直、どこまで行けるのか、不安ではあるけれど、まずは先に進むのが先だ。
私たちは買い物を終えると、すぐに宿に戻る。戻ったら急いで母に連絡をしなくては。お金を送ってください、と。
「キャサリン、お母様って冒険者の登録してるのかしら」
「っ!? え、ぞ、存じませんっ」
今更ながら、思いついたことを呟いてみれば、キャサリンも知らないという。
あれ、冒険者同士じゃないと送金できないんだっけ? 失敗した。そこんとこ確認してない。
「ん~、もう、ギルドに戻る気力ないから、あちらに丸投げしちゃいましょう。たぶん、お母様なら、色々知っていそうだし」
「そ、そうですね」
「で、連絡しおわったら、キャサリンは早く寝ること!」
「い、いえ、私は護衛ですから」
「……寝不足の護衛で、ちゃんと私を守れるの?」
「っ!?申し訳ございません……」
たぶん、さっきのことを思い出しているんだろう。彼女の罪悪感を利用するのは悪いけど、ちゃんと休んでもらわないとね。
まだ日は高いけれど、明日は早くにこの町を出なくては。目的地のモンテス伯爵領までは、確か乗合馬車で三日ほどと聞いた。馬で走れば、二日くらいで行けるはず。
キャサリンが伝達の魔法陣で鳥を飛ばしたのを見て、すぐさまクリーンをかけてベッドに押し込む。多少の抵抗をはあったものの、ベッドに入ってしまえば、やっぱり疲れてたのか、すぐに寝息をたてはじめた。
「さてと、後は何が出来るかしら」
無意識に耳に手をやり、考え込む。
……ん?
あ、忘れてた。
屋敷から出ていくときに、着替えの際に、邪魔になりそうなネックレスなどは取ってきたけれど。
「やだ、ピアスつけたままじゃない」
ぶら下がるタイプのイヤリングだったら気が付いたけれど、ピアスのことはすっかり忘れていた。血のように赤くて小指の爪ほどの大きさのルビーのピアス。
ピアスの穴は、ゴードン辺境伯領にいた時に母が開けてくれた。
王都に来た時までは母のくれたシンプルな小さな緑色の魔石をつけていたけれど、いつだったか、アルフレッド様からのプレゼントで頂いた物に変えたのだった。普段からつけていたものだから意識すらしていなかった。
もう私には愛着のない物となっているけど。
「これ、売れたりしないかしら」
取り外した二つのルビーのピアスを掌に転がすと、私はニンマリと悪い顔になっていた。
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