43 / 81
第6章 もう我慢の限界ですっ!
39
しおりを挟む
ヘリウスの叫び声に、すぐに飛び込んできたのはハイドとロー。キャサリンも顔を青ざめてドアから中を覗き込んでいる。
「ちょ、ちょっと、お嬢さん、なんてことを」
「はぁ!? 貞操の危機に、なんてことも何もないでしょう」
「え、まさか、ちょ、へ、ヘリウス、マジか」
「ふんっ、キャサリン!」
「は、はいっ」
私の声に、ビクッとしている。そりゃそうだろう。今まで、こんな風に怒鳴ったことなどなかった。しかし、へリウスのせいで、冷静さはどこかへいってしまった。完全に私の怒りはMAX状態。
「まさか、貴女に裏切られるとは思わなかったわ」
「お、お嬢様、私はけしてっ」
「言い訳は結構。今すぐ、お母様に手紙を送りなさい。この者たちとの契約は無効。そして、お前も私と同行する必要はない」
「なっ!? お、お嬢様、それではっ」
「二度と同じことは言わない。言われた通りにしなさいっ」
悔し気に顔を歪めるキャサリン。それでも、言われたことはやるつもりらしく、部屋の片隅のテーブルにで手紙を書き出す。
「おいおい、ちょっと落ち着けよ」
ハイドが困ったような顔で宥めようとしているが、私の怒りは治まらない。
なんか、どんどん言葉でもなんでも吐き出さないと、熱くなってきて……爆発しそう。
「え、ちょっと、まて、お嬢さん、ま、まさか」
呻き続けているヘリウスの側にいたはずのローが、慌てて何やら言ってるが、私の耳には入って来ない。
「ま、まずいぞ。あれは、魔力暴走の兆しだ」
「な、なんだって」
「え、だが、あのお嬢さん、生活魔法くらいしか使えないんじゃ」
「ああ、そうだった。そうだったんだが、……まさか、もしかして、使えないようにされてたのか!?」
「メ、メイ……」
どうしてこの世界の男は、なんでもかんでも女に言うことを聞かそうとするのか。
言うことを聞かなければ、怒鳴り、暴力を振るう。野蛮な奴ら。こんな奴ら、みんな消えてしまえばいいのにっ!
「うわっ、ちょっとベッド、ベッドに火がっ、な、なんで?」
「まずい、お、お嬢さん、お、落ち着いてくださいっ! 深呼吸、深呼吸ですよ」
『煩いっ!』
思い切り腕を振るうと、簡単にローが飛ばされ壁に激突した。呻き声一つあげずに、そのまま倒れたままのロー。
「ロ、ロー!」
「メイ、メイ……悪かった、悪かったから、落ち着け……」
「お、お嬢様!?」
『悪かった、ですって? 何が、悪かったのかも、わかってもいないくせに』
私が向けた目に、ヘリウスは一瞬、寒気を感じたかのように身震いする。
『誠意のない謝罪など無意味。貴方の存在も無意味』
「メイ! そんなこと言うな!」
『気安く人の名を呼ぶな!』
ドンッ、と空気の圧がヘリウスを吹き飛ばす。
「ぐっ、はっ」
「ま、マジかよ……あのお嬢ちゃん、なんなんだ……」
「お、お嬢様……」
呆然とするハイドに、キャサリンはカタカタと震えている。
そんな彼らの脇に、一瞬、空間が歪み、人影が浮かび上がる。
そこに現れたのは。
「あら、やだ。なんてタイミングで来ちゃったかしら」
15、6才くらいの女の子。
……黒髪に黒い目……今まで見たことがないアジアンな顔……まさか、日本人?
というか、何、あれ。テレポート? 何、SF? SFなの?
「何、ヘリウス、ぶっ倒れて。カッコ悪~」
続いた彼女のセリフに驚いているのは、私だけではなかったみたいだけど、それのお陰で、怒りは霧散して……
「メイッ!」
再び意識を失ったのだった。
「ちょ、ちょっと、お嬢さん、なんてことを」
「はぁ!? 貞操の危機に、なんてことも何もないでしょう」
「え、まさか、ちょ、へ、ヘリウス、マジか」
「ふんっ、キャサリン!」
「は、はいっ」
私の声に、ビクッとしている。そりゃそうだろう。今まで、こんな風に怒鳴ったことなどなかった。しかし、へリウスのせいで、冷静さはどこかへいってしまった。完全に私の怒りはMAX状態。
「まさか、貴女に裏切られるとは思わなかったわ」
「お、お嬢様、私はけしてっ」
「言い訳は結構。今すぐ、お母様に手紙を送りなさい。この者たちとの契約は無効。そして、お前も私と同行する必要はない」
「なっ!? お、お嬢様、それではっ」
「二度と同じことは言わない。言われた通りにしなさいっ」
悔し気に顔を歪めるキャサリン。それでも、言われたことはやるつもりらしく、部屋の片隅のテーブルにで手紙を書き出す。
「おいおい、ちょっと落ち着けよ」
ハイドが困ったような顔で宥めようとしているが、私の怒りは治まらない。
なんか、どんどん言葉でもなんでも吐き出さないと、熱くなってきて……爆発しそう。
「え、ちょっと、まて、お嬢さん、ま、まさか」
呻き続けているヘリウスの側にいたはずのローが、慌てて何やら言ってるが、私の耳には入って来ない。
「ま、まずいぞ。あれは、魔力暴走の兆しだ」
「な、なんだって」
「え、だが、あのお嬢さん、生活魔法くらいしか使えないんじゃ」
「ああ、そうだった。そうだったんだが、……まさか、もしかして、使えないようにされてたのか!?」
「メ、メイ……」
どうしてこの世界の男は、なんでもかんでも女に言うことを聞かそうとするのか。
言うことを聞かなければ、怒鳴り、暴力を振るう。野蛮な奴ら。こんな奴ら、みんな消えてしまえばいいのにっ!
「うわっ、ちょっとベッド、ベッドに火がっ、な、なんで?」
「まずい、お、お嬢さん、お、落ち着いてくださいっ! 深呼吸、深呼吸ですよ」
『煩いっ!』
思い切り腕を振るうと、簡単にローが飛ばされ壁に激突した。呻き声一つあげずに、そのまま倒れたままのロー。
「ロ、ロー!」
「メイ、メイ……悪かった、悪かったから、落ち着け……」
「お、お嬢様!?」
『悪かった、ですって? 何が、悪かったのかも、わかってもいないくせに』
私が向けた目に、ヘリウスは一瞬、寒気を感じたかのように身震いする。
『誠意のない謝罪など無意味。貴方の存在も無意味』
「メイ! そんなこと言うな!」
『気安く人の名を呼ぶな!』
ドンッ、と空気の圧がヘリウスを吹き飛ばす。
「ぐっ、はっ」
「ま、マジかよ……あのお嬢ちゃん、なんなんだ……」
「お、お嬢様……」
呆然とするハイドに、キャサリンはカタカタと震えている。
そんな彼らの脇に、一瞬、空間が歪み、人影が浮かび上がる。
そこに現れたのは。
「あら、やだ。なんてタイミングで来ちゃったかしら」
15、6才くらいの女の子。
……黒髪に黒い目……今まで見たことがないアジアンな顔……まさか、日本人?
というか、何、あれ。テレポート? 何、SF? SFなの?
「何、ヘリウス、ぶっ倒れて。カッコ悪~」
続いた彼女のセリフに驚いているのは、私だけではなかったみたいだけど、それのお陰で、怒りは霧散して……
「メイッ!」
再び意識を失ったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
※新作です。アルファポリス様が先行します。
憎しみあう番、その先は…
アズやっこ
恋愛
私は獣人が嫌いだ。好き嫌いの話じゃない、憎むべき相手…。
俺は人族が嫌いだ。嫌、憎んでる…。
そんな二人が番だった…。
憎しみか番の本能か、二人はどちらを選択するのか…。
* 残忍な表現があります。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
『番』という存在
彗
恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。
*基本的に1日1話ずつの投稿です。
(カイン視点だけ2話投稿となります。)
書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。
***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!
『完結』番に捧げる愛の詩
灰銀猫
恋愛
番至上主義の獣人ラヴィと、無残に終わった初恋を引きずる人族のルジェク。
ルジェクを番と認識し、日々愛を乞うラヴィに、ルジェクの答えは常に「否」だった。
そんなルジェクはある日、血を吐き倒れてしまう。
番を失えば狂死か衰弱死する運命の獣人の少女と、余命僅かな人族の、短い恋のお話。
以前書いた物で完結済み、3万文字未満の短編です。
ハッピーエンドではありませんので、苦手な方はお控えください。
これまでの作風とは違います。
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる