伯爵令嬢はケダモノよりもケモミミがお好き

実川えむ

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第6章 もう我慢の限界ですっ!

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 ヘリウスの叫び声に、すぐに飛び込んできたのはハイドとロー。キャサリンも顔を青ざめてドアから中を覗き込んでいる。

「ちょ、ちょっと、お嬢さん、なんてことを」
「はぁ!? 貞操の危機に、なんてことも何もないでしょう」
「え、まさか、ちょ、へ、ヘリウス、マジか」
「ふんっ、キャサリン!」
「は、はいっ」

 私の声に、ビクッとしている。そりゃそうだろう。今まで、こんな風に怒鳴ったことなどなかった。しかし、へリウスのせいで、冷静さはどこかへいってしまった。完全に私の怒りはMAX状態。

「まさか、貴女に裏切られるとは思わなかったわ」
「お、お嬢様、私はけしてっ」
「言い訳は結構。今すぐ、お母様に手紙を送りなさい。この者たちとの契約は無効。そして、お前も私と同行する必要はない」
「なっ!? お、お嬢様、それではっ」
「二度と同じことは言わない。言われた通りにしなさいっ」

 悔し気に顔を歪めるキャサリン。それでも、言われたことはやるつもりらしく、部屋の片隅のテーブルにで手紙を書き出す。

「おいおい、ちょっと落ち着けよ」

 ハイドが困ったような顔で宥めようとしているが、私の怒りは治まらない。
 なんか、どんどん言葉でもなんでも吐き出さないと、熱くなってきて……爆発しそう。

「え、ちょっと、まて、お嬢さん、ま、まさか」

 呻き続けているヘリウスの側にいたはずのローが、慌てて何やら言ってるが、私の耳には入って来ない。

「ま、まずいぞ。あれは、魔力暴走の兆しだ」
「な、なんだって」
「え、だが、あのお嬢さん、生活魔法くらいしか使えないんじゃ」
「ああ、そうだった。そうだったんだが、……まさか、もしかして、使えないようにされてたのか!?」
「メ、メイ……」

 どうしてこの世界の男は、なんでもかんでも女に言うことを聞かそうとするのか。
 言うことを聞かなければ、怒鳴り、暴力を振るう。野蛮な奴ら。こんな奴ら、みんな消えてしまえばいいのにっ!

「うわっ、ちょっとベッド、ベッドに火がっ、な、なんで?」
「まずい、お、お嬢さん、お、落ち着いてくださいっ! 深呼吸、深呼吸ですよ」
『煩いっ!』

 思い切り腕を振るうと、簡単にローが飛ばされ壁に激突した。呻き声一つあげずに、そのまま倒れたままのロー。

「ロ、ロー!」
「メイ、メイ……悪かった、悪かったから、落ち着け……」
「お、お嬢様!?」
『悪かった、ですって? 何が、悪かったのかも、わかってもいないくせに』

 私が向けた目に、ヘリウスは一瞬、寒気を感じたかのように身震いする。

『誠意のない謝罪など無意味。貴方の存在も無意味』
「メイ! そんなこと言うな!」
『気安く人の名を呼ぶな!』

 ドンッ、と空気の圧がヘリウスを吹き飛ばす。

「ぐっ、はっ」
「ま、マジかよ……あのお嬢ちゃん、なんなんだ……」
「お、お嬢様……」

 呆然とするハイドに、キャサリンはカタカタと震えている。
 そんな彼らの脇に、一瞬、空間が歪み、人影が浮かび上がる。
 そこに現れたのは。






「あら、やだ。なんてタイミングで来ちゃったかしら」

 15、6才くらいの女の子。
 ……黒髪に黒い目……今まで見たことがないアジアンな顔……まさか、日本人?
 というか、何、あれ。テレポート? 何、SF? SFなの?

「何、ヘリウス、ぶっ倒れて。カッコ悪~」

 続いた彼女のセリフに驚いているのは、私だけではなかったみたいだけど、それのお陰で、怒りは霧散して……

「メイッ!」

 再び意識を失ったのだった。

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