65 / 81
第9章 ケモミミに絆されてしまったようです
58
しおりを挟む
私は今、王都へ向かう街道側にある城壁の上に立っている。
目の前には、開墾された土地が広がっている。スタンピードの話が来た時点で、城壁周辺の木々が伐採された。まだ、いくつかの場所で伐採は続けられている。
魔物たちが領都に接近した場合に、大規模魔法の内容によっては火災が起こる可能性があるからだ。
土の精霊を貸してもらえたんだし、このスタンピードが落ち着いたら、耕してもらってもいいかも、なんて考えている私の隣には、キャサリンと文官の一人が、この領都周辺の地図を開いて見ている。
そして私の背後には、その土の精霊たち。大量の黄色い光の球が浮かんでいて、周囲からは、不気味なモノでも見るような目を向けられている。まぁ、確かに、不気味だけどさ。
まだ、街道にはお祖父様たちの姿は見えないし、魔物の気配も感じられない。空は普通に青くて、全然、スタンピードの気配すらないけれど、それが目に入ってからでは遅すぎる。
「とりあえず、まずは街道沿いに高い壁を立ててくれる?」
私の言葉に、黄色い光たちが一気に街道の方へと飛んでいく。その飛んでいく方向へと、ドドドッと勢いよく高さが三メートルくらいありそうな土壁が作られていく。
「……凄いですね」
「うん、凄い」
キャサリンと文官が呟いている。私も唖然としてしまったが、目の前を黄色い光がふよふよと浮かんで、『これで終わり?』みたいに見ているように見えたので、慌てて次の指示を出した。
結局、日が傾き始めた頃、伐採された土地の半ばくらいの所に、ぐるりと領都を囲むように分厚い土壁が出来上がっている。元々ある城壁よりも高さも厚みもあって、丈夫そうだ。
土壁の内側には、かなり深い堀があり、底はとげとげ。落ちたら、悲惨な状態になるのは目に見えている。万が一、土壁を登ってこられても、そこに落ちてくれれば、少しは戦力を削れるのではないか、と期待している。
そして街道だけがこの領都への入口になり、一気には入って来れない。お祖父様たちが入ってきたらすぐに入口を閉めれば、例え追いつかれていたとしても、大量の魔物を相手にすることにはならないはずだ。
「メイリン様っ!」
城壁に備え付けられている展望台の方から、衛兵の一人が小型の望遠鏡を手に、駆け寄ってきた。
「ご、ご領主様の馬車が見えてきましたっ」
「やっとね!」
私は慌てて街道の方へと目を向けるけれど、まだ土壁のところまで来ていないのか、姿が確認できない。
森の方のかなり遠くで、何かが爆発したかのように土埃が舞っているのが見えた。そして、あちこちで、いくつか煙があがり始めた。さすがに森の中、火の魔法は使えないのか、木々の間からは、土の大きな棘があちこちで生えたり、いくつもの氷の槍が日の光にきらめいたりしている。凄い。
――馬車が見えた!
街道を走る馬車の様子を見るために、思わず城壁の端で身を乗り出す。
目の前には、開墾された土地が広がっている。スタンピードの話が来た時点で、城壁周辺の木々が伐採された。まだ、いくつかの場所で伐採は続けられている。
魔物たちが領都に接近した場合に、大規模魔法の内容によっては火災が起こる可能性があるからだ。
土の精霊を貸してもらえたんだし、このスタンピードが落ち着いたら、耕してもらってもいいかも、なんて考えている私の隣には、キャサリンと文官の一人が、この領都周辺の地図を開いて見ている。
そして私の背後には、その土の精霊たち。大量の黄色い光の球が浮かんでいて、周囲からは、不気味なモノでも見るような目を向けられている。まぁ、確かに、不気味だけどさ。
まだ、街道にはお祖父様たちの姿は見えないし、魔物の気配も感じられない。空は普通に青くて、全然、スタンピードの気配すらないけれど、それが目に入ってからでは遅すぎる。
「とりあえず、まずは街道沿いに高い壁を立ててくれる?」
私の言葉に、黄色い光たちが一気に街道の方へと飛んでいく。その飛んでいく方向へと、ドドドッと勢いよく高さが三メートルくらいありそうな土壁が作られていく。
「……凄いですね」
「うん、凄い」
キャサリンと文官が呟いている。私も唖然としてしまったが、目の前を黄色い光がふよふよと浮かんで、『これで終わり?』みたいに見ているように見えたので、慌てて次の指示を出した。
結局、日が傾き始めた頃、伐採された土地の半ばくらいの所に、ぐるりと領都を囲むように分厚い土壁が出来上がっている。元々ある城壁よりも高さも厚みもあって、丈夫そうだ。
土壁の内側には、かなり深い堀があり、底はとげとげ。落ちたら、悲惨な状態になるのは目に見えている。万が一、土壁を登ってこられても、そこに落ちてくれれば、少しは戦力を削れるのではないか、と期待している。
そして街道だけがこの領都への入口になり、一気には入って来れない。お祖父様たちが入ってきたらすぐに入口を閉めれば、例え追いつかれていたとしても、大量の魔物を相手にすることにはならないはずだ。
「メイリン様っ!」
城壁に備え付けられている展望台の方から、衛兵の一人が小型の望遠鏡を手に、駆け寄ってきた。
「ご、ご領主様の馬車が見えてきましたっ」
「やっとね!」
私は慌てて街道の方へと目を向けるけれど、まだ土壁のところまで来ていないのか、姿が確認できない。
森の方のかなり遠くで、何かが爆発したかのように土埃が舞っているのが見えた。そして、あちこちで、いくつか煙があがり始めた。さすがに森の中、火の魔法は使えないのか、木々の間からは、土の大きな棘があちこちで生えたり、いくつもの氷の槍が日の光にきらめいたりしている。凄い。
――馬車が見えた!
街道を走る馬車の様子を見るために、思わず城壁の端で身を乗り出す。
11
あなたにおすすめの小説
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
※新作です。アルファポリス様が先行します。
憎しみあう番、その先は…
アズやっこ
恋愛
私は獣人が嫌いだ。好き嫌いの話じゃない、憎むべき相手…。
俺は人族が嫌いだ。嫌、憎んでる…。
そんな二人が番だった…。
憎しみか番の本能か、二人はどちらを選択するのか…。
* 残忍な表現があります。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
『番』という存在
彗
恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。
*基本的に1日1話ずつの投稿です。
(カイン視点だけ2話投稿となります。)
書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。
***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!
『完結』番に捧げる愛の詩
灰銀猫
恋愛
番至上主義の獣人ラヴィと、無残に終わった初恋を引きずる人族のルジェク。
ルジェクを番と認識し、日々愛を乞うラヴィに、ルジェクの答えは常に「否」だった。
そんなルジェクはある日、血を吐き倒れてしまう。
番を失えば狂死か衰弱死する運命の獣人の少女と、余命僅かな人族の、短い恋のお話。
以前書いた物で完結済み、3万文字未満の短編です。
ハッピーエンドではありませんので、苦手な方はお控えください。
これまでの作風とは違います。
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる