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第4章
閑話:エルフ王の血族
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時は、ハルがアルム神の世界に送られてきた頃まで遡る。
場所は、多くのエルフたちの住む、シャイアール王国の王城内。
その王城の中でも、しばらく人が入ったことがないような、ほこりが浮いた家具がいくつも並べられた薄暗い小さな部屋。カーテンもしっかりと締め切られ、隙間にうっすらと白い光が染み出ているように見える。
その部屋の主は、はるか昔、森の奥で無念を胸に秘めて亡くなったハルの母、アカシア・シャイアール、その人の部屋だった。
その部屋の奥に、小さくて古びた宝石箱が置かれている。その箱の隙間から、緑色の光とともに濃い魔力までもが漏れ出ていた。
バタンッ
いきなりの部屋のドアが開くと、部屋のほこりが舞い上がる。
同時に生活魔法のクリーンによって、部屋中のほこりが、消え去った。
「この部屋か」
三十代後半くらいに見える、銀色に輝く王冠を載せたエルフが一人、苛立たしい顔つきで入ってきた。
「デメトリオ様、どうされたのです? まだ執務の途中だというのに」
そのエルフの背後に立つ、似たような顔つきのエルフの男が、困惑気味に声をかける。
しかし、デメトリオと呼ばれた男……このシャイアール王国の国王、デメトリオ・シャイアールは、その言葉を無視して、中へとずんずん入っていく。
「あれかっ!」
古びた宝石箱を手に取り、蓋を開けようとしたが、鍵がついているわけでもないのに開かない。怒りのあまり、宝箱を思い切り床に投げつけた。
「あっ!?」
エルフの男が驚きの声をあげるも、やはり宝箱は壊れることはなかった。
「くそっ、死してなお、私を怒らせる天才だな、従妹殿はっ!」
「……従妹とは……まさか、アカシア様……そ、そういえば、この部屋は」
「あれは、従妹が唯一残していった宝箱……あの光は、おそらく従妹の子供の守り石だろう」
「えっ、あの人族との間にできたという?」
国交や商売相手としての人族には無難に接することが出来るエルフの王族たちではあったが、血筋のこととなると、あからさまに人族を見下している。
国王の後を追いかけてきたエルフの男も、王族のはしくれ、嫌悪に歪んだ顔になる。
そんな王家にありながら、ハルは、国王の従妹アカシア・シャイアールと、シャイアール王国よりももっと北に位置する人族の王国、エノクーラ王国の第三王子、ゲラルド・エノクーラとの間に出来た子供だった。
本来、遠方にある別のエルフの一族の元へと政略結婚する予定だったアカシアだったが、その移動中に、魔物に襲われてしまった。その場で助けに入ったのが、部下数人と修行の旅に出ていたゲラルド王子だった。
その場で一目で恋に落ちた二人は、逃避行をするも、すぐに捜索隊であるエルフたちに捕まり、別れ別れとなる。
王家に戻されたアカシアは、この部屋に幽閉される。彼女の妊娠がわかったのは、すでに堕胎のできる時期を過ぎた頃。そして、再び、ゲラルド王子の元へとアカシアは逃亡を試みたが……すでに、ダークエルフたちによって王子は亡き者にされていたのだった。
「今まで光らなかった理由は、わからんが、アレが光りだしたということは、生きてどこかにいるということだ。それも、これだけの魔力を溢れさせるとは……我が王家に、禍根を残してはならぬ。見つけ次第、消せ。我が王族に人族の血など、一滴たりとも入り込む余地はないのだっ!」
「はっ!」
国王デメトリオのギラギラとした目には、狂気の色が浮かぶ。
「我が一族に、人族の血など流れてはならぬ……」
こうして、ハル本人の知らないところで、身内のエルフたちからも狙われることとなる。
場所は、多くのエルフたちの住む、シャイアール王国の王城内。
その王城の中でも、しばらく人が入ったことがないような、ほこりが浮いた家具がいくつも並べられた薄暗い小さな部屋。カーテンもしっかりと締め切られ、隙間にうっすらと白い光が染み出ているように見える。
その部屋の主は、はるか昔、森の奥で無念を胸に秘めて亡くなったハルの母、アカシア・シャイアール、その人の部屋だった。
その部屋の奥に、小さくて古びた宝石箱が置かれている。その箱の隙間から、緑色の光とともに濃い魔力までもが漏れ出ていた。
バタンッ
いきなりの部屋のドアが開くと、部屋のほこりが舞い上がる。
同時に生活魔法のクリーンによって、部屋中のほこりが、消え去った。
「この部屋か」
三十代後半くらいに見える、銀色に輝く王冠を載せたエルフが一人、苛立たしい顔つきで入ってきた。
「デメトリオ様、どうされたのです? まだ執務の途中だというのに」
そのエルフの背後に立つ、似たような顔つきのエルフの男が、困惑気味に声をかける。
しかし、デメトリオと呼ばれた男……このシャイアール王国の国王、デメトリオ・シャイアールは、その言葉を無視して、中へとずんずん入っていく。
「あれかっ!」
古びた宝石箱を手に取り、蓋を開けようとしたが、鍵がついているわけでもないのに開かない。怒りのあまり、宝箱を思い切り床に投げつけた。
「あっ!?」
エルフの男が驚きの声をあげるも、やはり宝箱は壊れることはなかった。
「くそっ、死してなお、私を怒らせる天才だな、従妹殿はっ!」
「……従妹とは……まさか、アカシア様……そ、そういえば、この部屋は」
「あれは、従妹が唯一残していった宝箱……あの光は、おそらく従妹の子供の守り石だろう」
「えっ、あの人族との間にできたという?」
国交や商売相手としての人族には無難に接することが出来るエルフの王族たちではあったが、血筋のこととなると、あからさまに人族を見下している。
国王の後を追いかけてきたエルフの男も、王族のはしくれ、嫌悪に歪んだ顔になる。
そんな王家にありながら、ハルは、国王の従妹アカシア・シャイアールと、シャイアール王国よりももっと北に位置する人族の王国、エノクーラ王国の第三王子、ゲラルド・エノクーラとの間に出来た子供だった。
本来、遠方にある別のエルフの一族の元へと政略結婚する予定だったアカシアだったが、その移動中に、魔物に襲われてしまった。その場で助けに入ったのが、部下数人と修行の旅に出ていたゲラルド王子だった。
その場で一目で恋に落ちた二人は、逃避行をするも、すぐに捜索隊であるエルフたちに捕まり、別れ別れとなる。
王家に戻されたアカシアは、この部屋に幽閉される。彼女の妊娠がわかったのは、すでに堕胎のできる時期を過ぎた頃。そして、再び、ゲラルド王子の元へとアカシアは逃亡を試みたが……すでに、ダークエルフたちによって王子は亡き者にされていたのだった。
「今まで光らなかった理由は、わからんが、アレが光りだしたということは、生きてどこかにいるということだ。それも、これだけの魔力を溢れさせるとは……我が王家に、禍根を残してはならぬ。見つけ次第、消せ。我が王族に人族の血など、一滴たりとも入り込む余地はないのだっ!」
「はっ!」
国王デメトリオのギラギラとした目には、狂気の色が浮かぶ。
「我が一族に、人族の血など流れてはならぬ……」
こうして、ハル本人の知らないところで、身内のエルフたちからも狙われることとなる。
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