ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~

実川えむ

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第6章

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 Aランク冒険者を侮っていた。
 まさか、あそこまで化け物じみているとは思わなかった。

「あんた、すげぇなっ!」
「どうやったら、そんな技が使えるんだ?」
「きゃぁ~♡」

 へリウス、もみくちゃ。
 怪我している少年たちには、誰も目を向けない。俺は、テントから飛び出し、彼らの方へと向かう。

「お前ら、大丈夫か?」

 俺の声に、虚ろな目でへリウスたちを見ていた少年たちが、俺の顔を見た。二人ともが血の気のひいた真っ白な顔に、胸が痛む。見た感じだと十二、三才くらいだろうか。こんな子供でも、ポーターとして危険なところについていくのか、と思うと、愕然とする。

「……」
「とりあえず、矢、抜けるか?」

 俺の言葉に、今更ながら矢が刺さってたことを思い出したようで、どさりと倒れこむ。痛みのせいか、顔を歪ませ、うーうー唸りながら、唇を噛んでいる。
 思い切り貫通しているのは、俺の力なんかじゃ無理なのはわかる。かといって、少年たちの力でも無理そうだ。肝心のへリウスの方へ目を向けるけど、まだ、冒険者たちの熱狂から抜け出せないでいるようだ。

「チッ、使えねぇな」

 俺は自分のウェストポーチから、水の入った水袋と、傷薬を取り出す。ちなみに、この水袋は魔道具になってて、いくら使っても減らない代物。絶対、高価なヤツだ。どうも、ボブさんかメアリーさん、どっちかがこっそり入れておいてくれたみたい。

「そっちは、もうちょっと我慢な。もう一人に兄ちゃん、傷、見せろ」

 歩ける方の少年が、のろのろと歩いてきた。

「……俺は、大した傷はない、ほとんどが返り血だから」

 そう言いながら目の前にしゃがんだ少年は、矢の刺さっている少年へと目を向け、ポロポロと涙をこぼし始める。

「ヘイドンさんたちが逃がしてくれなきゃ、ここまで来れなかったけど……まさか、同じ冒険者から殺されそうになるとは思わなかった……」

 ヘイドン、というのが『剛腕の獅子』のメンバーの一人なんだろう。
 ぽつぽつと状況について話をし始める少年。その話を聞きながら、俺は血で汚れたところを、洗い流せるだけ流してやった。
 よくよく聞いてみると、ワイバーンの討伐自体は、ほとんど成功していたようだった。ここに飛んできたのは最後の二羽だったらしい。それなのに、なんで、こんなことになったのか、と思ったら。

「ワイバーンの巣から少し離れたところに、ブラックヴァイパーの生息地があったみたいだ……」

 何かを思い出したのだろう。急にガタガタと身体を震えだした。

「や、やつらが来なきゃ、剛腕だって、に、逃げられたかもしれないのにっ」

 複数で挟み撃ちにでもあったというのだろう。たぶん、ワイバーン用の準備はしていったかもしれないが、そのブラックヴァイパーなるもの……たぶん、蛇系の魔物か……の対策はしてなかったのかもしれない。もしくは、予想以上に多くの敵に囲まれたのか。


「そのブラックヴァイパー? っていうのは」
「に、逃げるときに、剛腕が斃したワイバーンに食らいついてた姿が見えた……だ、だけど、残ってたワイバーンは、俺たちに気が付いてたんだと思う……追いかけてきたんだから」
 
 少年は追われる恐怖を思い出したのか、ガクガクッと震えたかと思うと、そのまま倒れて気を失ってしまった。
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