ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~

実川えむ

文字の大きさ
49 / 95
第6章

47

しおりを挟む
 へリウスの鋭い眼差しに、ガクガクと震えだすおばさん。
 周囲にいた一般人も顔が青ざめている。

「悪いが、うちの子に触れないでもらえるか」
「は、はひっ!」

 返事の声が裏返ってるし。怖すぎて、後ろのおじさんに倒れこんでるし。
 まぁ、ちょっと本気で殺気を飛ばしたら、一般人なら腰を抜かしてもおかしくはない。というか、それ以前なのに、室内全員固まってる。俺? 俺はもう慣れた。

「悪いが、下がらせてもらうぞ」

 へリウスの言葉に誰も反応しないのをいいことに、俺たちはその場を離れた。
 建物から出て、さっさと外壁にあるテントへと向かう。もう夜も遅くなってしまったせいか、町の中は真っ暗だ。そんな中を迷いなく進むへリウス。外に出る大きな門はすでに閉じられている。

「わ、悪いが門は開けられんぞ」

 門番のおっさんが、びくびくしながら言ってきた。ワイバーンを瞬殺したへリウス相手に、頑張ったな。

「あぁ? ……まぁ、いいか」

 そう言うと、よいしょっ、という掛け声とともに……外壁を飛び越えた。けして低くはない外壁なのに、さすがだね。
 おっさんの驚きの声を後に、俺たちはさっさとテントの方へと向かう。
 結界を張ったままだったからか、持ち去られることもなく残っていた。周囲を見渡すと、まだ、いくつかのテントはあるようだが、テントの中の灯りはほとんど落ちている。その代わりに、入口付近で焚火をしながら見張りについている姿が何人か見受けられた。町の傍であっても、また魔物が出てこないとも限らないからだろう。

 俺たちは、そのままテントの中へ入った。

「あ゛あぁぁぁ~、めんどくせぇぇぇぇ」

 へリウスの心底嫌そうな声が響く。この結界付きテント、防音効果もあるらしく、思い切り、愚痴モードになるへリウス。

「お疲れ、お疲れ」
「んとによぉ、ハルのおかげで、出てこられたがよぉ。なんで、俺たちがBランクの奴らの尻ぬぐいせにゃ、ならんのよ」
「そうだよねぇ」

 結局は、『剛腕の獅子』を助けに、じゃなく、ワイバーンの取りこぼしを、押し付けたいだけに決まっているのだ。その上、ブラックヴァイパーがいるわけで、それをわかった上で、押し付けに来ている。
 本当に質が悪い。

「……そういえば、魔法使いのお友達は、どうなったの?」
「あ、忘れてた……けど、返事は来てないな」
「そっかぁ」

 さっさとこの町から逃げてしまいたいところなんだけど、そうもいかないか。
 荷物に身体を傾けると、眠気が襲い掛かってきた。

「とりあえず、ハルは寝ておけ」
「うん、ごめん」

 実は、すでに身体がふらふらと揺れてて、倒れそうだったのだ。
 子供の身体は、なかなか厳しい。

「大丈夫だ。ゆっくり寝とけ」

 目を閉じて意識が落ちる瞬間、へリウスの優しい声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

モブっと異世界転生

月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。 ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。 目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。 サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。 死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?! しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ! *誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...