ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~

実川えむ

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第10章

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 それからの道中は、不思議なくらい順調で、この後、何か起こるんじゃないだろうな、と逆に不安になったくらい。
 女性の冒険者も、アーロンに無体な接近はなく、サバサバした女性たちだった。それだけ、こういう護衛の仕事に慣れてるってことなのだろう。

「さて、そろそろカイドンの町が見えてきてもいいはずだ」

 荷馬車の御者のところに座っている俺に、御者のおじいさんが声をかけてきた。
 この集団の中でアーロンの次に、一番年下の俺を気にかけてくれていたおじいさんだ。

「ほら、潮の匂いがしてきたぞ」
「……ほんとだ」

 周囲は森なのに、街道に沿って海の匂いが送られてくる不思議。

「あれがカイドンの入口だな」

 おじいさんに指をさされて、前のほうを見るために立ち上がるけれど、へリウスがそこにいるかなんてわかるわけもない。

「ハル、立ち上がると危ないぞ」

 荷馬車のそばにアーロンが寄ってきた。

「わかってるんだけど、落ち着かなくて」
「気持ちはわかるがな。着いたらまずはそのまま姉さんのところに連れていくからな」
「うん、わかった」

 俺はもうアーロンの人柄と、精霊たちに好かれやすい彼の言うことを信じるようになっていた。アーロンが言うからには、問題ないだろうな、と。
 問題なくカイドンの町に入り、馬車はそのあままノドルドン商会に向かう。港町特有の賑やかな空気感に、俺もわくわくしてくる。

「えぇぇぇ……」

 馬車がゆっくりと動きを止めた場所は、俺が思ってたよりも、めちゃくちゃデカい建物だった。たくさんの人や荷物の出入りに、目を瞠る。

「よし、ハル、下りるぞ」
「あ、う、うん……おじいさん、ありがとうございました」
「いやいや、私も楽しかったからのぉ、こちらこそ、ありがとうだよ」

 俺はアーロンに抱きかかえられながら、おじいさんに手を振る。

「随分と仲良くなったんだな」
「うん? 俺は話をずっと聞いてただけだけどな」

 話好きのおじいさんのおかげで、退屈な時間を過ごすことなく、ここまで来れたのだから、感謝してもいいと思う。

「アーロン!」

 突然、女性の声が聞こえて、俺はびっくりする。
 一方のアーロンの方は、一瞬だけ、嫌そうな顔をして、すぐに、笑顔を貼りつけた。

「やぁ、姉さん」
「よくやったわ! その子が、へリウス様の?」

  女性にしてはかなり大柄で、白い髪をひっつめている。年のころは、アーロンより、少し上くらいにしか見えない。なかなか迫力のある美女が、ニカリと笑って立っている。
 うん、アーロンの感じから、なんとなく、わかってた。お姉さんだろうって。
 もしかして、苦手に感じてたりするんだろうか。今まで一緒に行動してきて、見たことのない顔だったので、新鮮だ。
「ああ、そうだよ。へリウス様は?」
「まだいらしてないわ。でも」

 困ったような顔で、アーロンの腕を掴んで、建物の方へと進んでいく。

「なんなんだよ」
「……ご領主様の方からのお達しがきてるのよ」

 うわ、嫌な予感しかしない。
 アーロンのお姉さんも、申し訳なさそうな顔になってるし!

「あんたが連れてる子供を、ご領主様のところに連れて来いって」

 なんで、そうなるっ!
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