10 / 95
第2章 新入社員の私に人気俳優の彼
10
しおりを挟む
二人が新創刊といってるのは、ブライダル雑誌。
散々、大手のところのCMを見てたりするから、私もどうなのかなぁ、と思うけど。所詮、私程度の新人には、予想もつかない世界。
だから、先輩方の話を、耳をダンボにしながら聞いてしまう。
……手元が疎かになってることも忘れて。
「神崎さ~ん、手が止まってるわよ~」
パソコンの画面から、相変わらず目を離さない本城さん。
「か、考え事してました! す、すみません!」
慌てて指が動き出すのを見て、吹き出す笠原さん。
「慌てないで。ミスするほうが困るから。」
ああ、優しいお兄ちゃん……って、違うからっ!
時計を見ると、すでに12時半近くになっていた。
「おっと、もうこんな時間かよ。飯行こうぜ」
集中すると時間を忘れるのが三人の共通項のようで、時間に気が付かないとお昼を食べそこねることがある。
「げ。私、午後一で本社経理と打ち合わせなのよね。」
時計を睨みつける本城さん。はっ! 凛々しい!
「あ、じゃあ、私コンビニでお弁当でも買ってきますよ?」
「あー、でも移動とか準備とかで、時間ないからいいや。打ち合わせやってから、なんか食べて戻ってくる……たぶん、夕方になるかなぁ……戻り時間」
「お~、じゃあ、神崎、食いにいくか。」
「は~い♪」
「いってらっしゃ~い」
まるで餌付けされる子豚……いやいや、子犬のようだ……と、本城さんは思っているに違いない……。
時間がないときは、てっとり早く済む牛丼屋さん。会社のそばには、いくつかのチェーン店の牛丼屋さんが競いあっている。学生時代には行ったことがなくて、仕事を始めてから、二人に連れて来てもらった。
「牛丼の大盛りと……健康セットで」
「……牛丼のミニと……サラダのセット」
「なんだ、神崎、ダイエットか?」
お茶を飲みながらニヤニヤする笠原さん。
「……いやぁ……ここ、意外に量が多いんで」
実際、並盛だと多いし。でもダイエットも、あながち……違ってはいない。
最近、不摂生がたたって、入社前に買ったスーツがキツイ。新しいスーツも欲しいけど、それはもう少し絞ってからのほうがいいかな?と、思ってる。
「ふふん、そんな気にするほど、太ってないぞ?」
「いやいや、私的には太ってるんですよ」
思わず、遠い目をしながら、壁に書いてあるメニューを見る。
「ぽっちゃりしてるとは思うけど、健康的なぽっちゃりならいいんじゃねぇ?」
「くっ、ぽっちゃりは禁句でお願いします。これでも女子です。気にしてます。」
「はっはっは。」
笠原さんは豪快に笑って……あっという間に食べ終えた。
私は、食べるのが遅い……ついつい味わって食べてしまう……たとえ、それが牛丼であっても。これでも社会人になってから、少しは早くなったはずなんだけど、当然、笠原さんのスピードについていけず。
「まぁ、営業とか外回りを経験してると、自然と外での飯は早くなるんだよ。」
そういうものなのでしょうか。
「気にせず、ゆっくり食え。まだ時間はある。」
いやいや、そんなに時間はないですよ。時計をちらっと見ると、昼休憩が終わる五分前。
「俺、先に戻ってるから、無理せず後からこい。」
じゃぁな、といって、さらっと私の伝票ごと持って行った笠原さん。か、かっこよすぎる。
「はぁ……」
とろくさい自分に嫌気を感じつつも、箸は進む。コンビニ弁当買って、席で食べたほうがよかったかなぁ、と俯きながら食べていると、どこからか視線を感じた。
ふっと、店の外に目をやるけど、私を見ている人など、誰もいない。
なんだったんだろ? と思いつつも、急いで食べ終えて会社に戻った。
散々、大手のところのCMを見てたりするから、私もどうなのかなぁ、と思うけど。所詮、私程度の新人には、予想もつかない世界。
だから、先輩方の話を、耳をダンボにしながら聞いてしまう。
……手元が疎かになってることも忘れて。
「神崎さ~ん、手が止まってるわよ~」
パソコンの画面から、相変わらず目を離さない本城さん。
「か、考え事してました! す、すみません!」
慌てて指が動き出すのを見て、吹き出す笠原さん。
「慌てないで。ミスするほうが困るから。」
ああ、優しいお兄ちゃん……って、違うからっ!
時計を見ると、すでに12時半近くになっていた。
「おっと、もうこんな時間かよ。飯行こうぜ」
集中すると時間を忘れるのが三人の共通項のようで、時間に気が付かないとお昼を食べそこねることがある。
「げ。私、午後一で本社経理と打ち合わせなのよね。」
時計を睨みつける本城さん。はっ! 凛々しい!
「あ、じゃあ、私コンビニでお弁当でも買ってきますよ?」
「あー、でも移動とか準備とかで、時間ないからいいや。打ち合わせやってから、なんか食べて戻ってくる……たぶん、夕方になるかなぁ……戻り時間」
「お~、じゃあ、神崎、食いにいくか。」
「は~い♪」
「いってらっしゃ~い」
まるで餌付けされる子豚……いやいや、子犬のようだ……と、本城さんは思っているに違いない……。
時間がないときは、てっとり早く済む牛丼屋さん。会社のそばには、いくつかのチェーン店の牛丼屋さんが競いあっている。学生時代には行ったことがなくて、仕事を始めてから、二人に連れて来てもらった。
「牛丼の大盛りと……健康セットで」
「……牛丼のミニと……サラダのセット」
「なんだ、神崎、ダイエットか?」
お茶を飲みながらニヤニヤする笠原さん。
「……いやぁ……ここ、意外に量が多いんで」
実際、並盛だと多いし。でもダイエットも、あながち……違ってはいない。
最近、不摂生がたたって、入社前に買ったスーツがキツイ。新しいスーツも欲しいけど、それはもう少し絞ってからのほうがいいかな?と、思ってる。
「ふふん、そんな気にするほど、太ってないぞ?」
「いやいや、私的には太ってるんですよ」
思わず、遠い目をしながら、壁に書いてあるメニューを見る。
「ぽっちゃりしてるとは思うけど、健康的なぽっちゃりならいいんじゃねぇ?」
「くっ、ぽっちゃりは禁句でお願いします。これでも女子です。気にしてます。」
「はっはっは。」
笠原さんは豪快に笑って……あっという間に食べ終えた。
私は、食べるのが遅い……ついつい味わって食べてしまう……たとえ、それが牛丼であっても。これでも社会人になってから、少しは早くなったはずなんだけど、当然、笠原さんのスピードについていけず。
「まぁ、営業とか外回りを経験してると、自然と外での飯は早くなるんだよ。」
そういうものなのでしょうか。
「気にせず、ゆっくり食え。まだ時間はある。」
いやいや、そんなに時間はないですよ。時計をちらっと見ると、昼休憩が終わる五分前。
「俺、先に戻ってるから、無理せず後からこい。」
じゃぁな、といって、さらっと私の伝票ごと持って行った笠原さん。か、かっこよすぎる。
「はぁ……」
とろくさい自分に嫌気を感じつつも、箸は進む。コンビニ弁当買って、席で食べたほうがよかったかなぁ、と俯きながら食べていると、どこからか視線を感じた。
ふっと、店の外に目をやるけど、私を見ている人など、誰もいない。
なんだったんだろ? と思いつつも、急いで食べ終えて会社に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~
百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。
放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!?
大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる