おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第2章 新入社員の私に人気俳優の彼

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 二人が新創刊といってるのは、ブライダル雑誌。

 散々、大手のところのCMを見てたりするから、私もどうなのかなぁ、と思うけど。所詮、私程度の新人には、予想もつかない世界。

 だから、先輩方の話を、耳をダンボにしながら聞いてしまう。

 ……手元が疎かになってることも忘れて。



「神崎さ~ん、手が止まってるわよ~」



 パソコンの画面から、相変わらず目を離さない本城さん。



「か、考え事してました! す、すみません!」



 慌てて指が動き出すのを見て、吹き出す笠原さん。



「慌てないで。ミスするほうが困るから。」



 ああ、優しいお兄ちゃん……って、違うからっ!

 時計を見ると、すでに12時半近くになっていた。



「おっと、もうこんな時間かよ。飯行こうぜ」



 集中すると時間を忘れるのが三人の共通項のようで、時間に気が付かないとお昼を食べそこねることがある。



「げ。私、午後一で本社経理と打ち合わせなのよね。」



 時計を睨みつける本城さん。はっ! 凛々しい!



「あ、じゃあ、私コンビニでお弁当でも買ってきますよ?」



「あー、でも移動とか準備とかで、時間ないからいいや。打ち合わせやってから、なんか食べて戻ってくる……たぶん、夕方になるかなぁ……戻り時間」

「お~、じゃあ、神崎、食いにいくか。」

「は~い♪」

「いってらっしゃ~い」



 まるで餌付けされる子豚……いやいや、子犬のようだ……と、本城さんは思っているに違いない……。



 時間がないときは、てっとり早く済む牛丼屋さん。会社のそばには、いくつかのチェーン店の牛丼屋さんが競いあっている。学生時代には行ったことがなくて、仕事を始めてから、二人に連れて来てもらった。



「牛丼の大盛りと……健康セットで」

「……牛丼のミニと……サラダのセット」

「なんだ、神崎、ダイエットか?」



 お茶を飲みながらニヤニヤする笠原さん。



「……いやぁ……ここ、意外に量が多いんで」



 実際、並盛だと多いし。でもダイエットも、あながち……違ってはいない。

 最近、不摂生がたたって、入社前に買ったスーツがキツイ。新しいスーツも欲しいけど、それはもう少し絞ってからのほうがいいかな?と、思ってる。



「ふふん、そんな気にするほど、太ってないぞ?」

「いやいや、私的には太ってるんですよ」



 思わず、遠い目をしながら、壁に書いてあるメニューを見る。



「ぽっちゃりしてるとは思うけど、健康的なぽっちゃりならいいんじゃねぇ?」

「くっ、ぽっちゃりは禁句でお願いします。これでも女子です。気にしてます。」

「はっはっは。」



 笠原さんは豪快に笑って……あっという間に食べ終えた。

 私は、食べるのが遅い……ついつい味わって食べてしまう……たとえ、それが牛丼であっても。これでも社会人になってから、少しは早くなったはずなんだけど、当然、笠原さんのスピードについていけず。



「まぁ、営業とか外回りを経験してると、自然と外での飯は早くなるんだよ。」



 そういうものなのでしょうか。



「気にせず、ゆっくり食え。まだ時間はある。」



 いやいや、そんなに時間はないですよ。時計をちらっと見ると、昼休憩が終わる五分前。



「俺、先に戻ってるから、無理せず後からこい。」



 じゃぁな、といって、さらっと私の伝票ごと持って行った笠原さん。か、かっこよすぎる。



「はぁ……」



 とろくさい自分に嫌気を感じつつも、箸は進む。コンビニ弁当買って、席で食べたほうがよかったかなぁ、と俯きながら食べていると、どこからか視線を感じた。

 ふっと、店の外に目をやるけど、私を見ている人など、誰もいない。

 なんだったんだろ? と思いつつも、急いで食べ終えて会社に戻った。
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