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第2章 新入社員の私に人気俳優の彼
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私、神崎 美輪は、無事に社会人一年生になった。
妖艶王子(またはオカマ)の遼ちゃんとは、あれから何度かL〇NEのやりとりしかしていない。たいがいは、たわいのないこと。
彼が映画の撮影に入ったからだ。
おかげで直接会う機会もなく、テレビの画面の彼の姿を見ては、いい思い出だったのよ、と思うようになっていた。
「神崎! 本社の会議室、抑えられたか?」
上司の楢橋さんが、顔もあげずに言った。
「あ、はい。十一時時半から抑えてます。」
「その時間からだと、お弁当の手配はもうしたのよね?」
メガネの奥の瞳をキランとさせて私を見ているのは、向かい側に座る三年先輩の本城さん。
「あっ!」
ああ、まだだったっ!
「す、すみません!これから手配します!」
「よろしくね」
ニッコリ笑顔で言ってくれる本城さん。ス、ステキすぎる……。ほ、惚れてまうやろ……と、ほけーっと見惚れてると、
「ほら、早く電話しないと、本気で本城に怒られるぞ」
隣から、大きな身体を小さくしながら言ってくれたのは本城さんと同期の笠原さん。
「はい!」
二人とも、年の近い兄や姉がいない私にとっては頼りになるお兄さんと、お姉さん。お互いにいい感じで競いあってる姿が、憧れで、私も、あんな風になれたらいいな~、と思ってる。
私のいる部署は、販売企画部の中のなんでも屋的な役割をする統括チーム。総務のような会議室の手配はもちろん、スケジュール調整もすれば、部内の経費・原価の管理もする。
本城さんや笠原さんは、どちらかというと経理的なお仕事をしていて、私は総務的なお仕事。
私が入社するまでは、私のお仕事も本城さんがやってたという。
……やっぱり、ステキだ。惚れる。
「さてと、そろそろ行くか」
黒いスーツで、これから葬式ですか?みたいな格好の楢橋さん。
ニコチン中毒ですか? みたいなヘビースモーカーで、そばに行くと、いつもタバコの匂いがしてる。かっこよく言えば『大人の男』……のはずなんだけど、いっつもヨレヨレの雰囲気があって、なかなか決まらない。
「いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃ~い」
「おう~」
片手をあげて、フロアから出て行く姿は……酔っ払い……?
あれでも課長さんなんだけどな……。
「ねぇ、今日の会議ってさ」
パソコンの画面を見ながら話す、本城さん。
「例の新創刊のやつだっけ?」
「ああ」
「どうなんだろうね。後発で今さらって思うんだけど」
「まぁ、多少の勝算はあんじゃねぇの?」
「そうじゃなきゃ困るけどさ」
……大人な会話だ。入社して三か月の私には、まだまだ知識が足りない、未知の世界。
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「す、すみません!これから手配します!」
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「はい!」
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……やっぱり、ステキだ。惚れる。
「さてと、そろそろ行くか」
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