おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

文字の大きさ
9 / 95
第2章 新入社員の私に人気俳優の彼

09

しおりを挟む
 私、神崎 美輪かんざき みわは、無事に社会人一年生になった。

 妖艶王子(またはオカマ)の遼ちゃんとは、あれから何度かL〇NEのやりとりしかしていない。たいがいは、たわいのないこと。



 彼が映画の撮影に入ったからだ。



 おかげで直接会う機会もなく、テレビの画面の彼の姿を見ては、いい思い出だったのよ、と思うようになっていた。



「神崎! 本社の会議室、抑えられたか?」



 上司の楢橋ならはしさんが、顔もあげずに言った。



「あ、はい。十一時時半から抑えてます。」

「その時間からだと、お弁当の手配はもうしたのよね?」



 メガネの奥の瞳をキランとさせて私を見ているのは、向かい側に座る三年先輩の本城ほんじょうさん。



「あっ!」



 ああ、まだだったっ!



「す、すみません!これから手配します!」

「よろしくね」



 ニッコリ笑顔で言ってくれる本城さん。ス、ステキすぎる……。ほ、惚れてまうやろ……と、ほけーっと見惚れてると、



「ほら、早く電話しないと、本気で本城に怒られるぞ」



 隣から、大きな身体を小さくしながら言ってくれたのは本城さんと同期の笠原かさはらさん。



「はい!」



 二人とも、年の近い兄や姉がいない私にとっては頼りになるお兄さんと、お姉さん。お互いにいい感じで競いあってる姿が、憧れで、私も、あんな風になれたらいいな~、と思ってる。

 私のいる部署は、販売企画部の中のなんでも屋的な役割をする統括チーム。総務のような会議室の手配はもちろん、スケジュール調整もすれば、部内の経費・原価の管理もする。

 本城さんや笠原さんは、どちらかというと経理的なお仕事をしていて、私は総務的なお仕事。

 私が入社するまでは、私のお仕事も本城さんがやってたという。



 ……やっぱり、ステキだ。惚れる。



「さてと、そろそろ行くか」



 黒いスーツで、これから葬式ですか?みたいな格好の楢橋さん。

 ニコチン中毒ですか? みたいなヘビースモーカーで、そばに行くと、いつもタバコの匂いがしてる。かっこよく言えば『大人の男』……のはずなんだけど、いっつもヨレヨレの雰囲気があって、なかなか決まらない。



「いってらっしゃいませ」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃ~い」

「おう~」



 片手をあげて、フロアから出て行く姿は……酔っ払い……?

 あれでも課長さんなんだけどな……。



「ねぇ、今日の会議ってさ」



 パソコンの画面を見ながら話す、本城さん。



「例の新創刊のやつだっけ?」

「ああ」

「どうなんだろうね。後発で今さらって思うんだけど」

「まぁ、多少の勝算はあんじゃねぇの?」

「そうじゃなきゃ困るけどさ」



 ……大人な会話だ。入社して三か月の私には、まだまだ知識が足りない、未知の世界。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。 継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。 しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。 彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。 2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

幸せのありか

神室さち
恋愛
 兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。  決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。  哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。  担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。  とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。 視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。 キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。 ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。 本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。 別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。 直接的な表現はないので全年齢で公開します。

記憶喪失のフリをしたら夫に溺愛されました

秋月朔夕
恋愛
フィオナは幼い頃から、自分に冷たく当たるエドモンドが苦手だった。 しかしある日、彼と結婚することになってしまう。それから一年。互いの仲は改善することなく、冷えた夫婦生活を送っていた。 そんなある日、フィオナはバルコニーから落ちた。彼女は眼を覚ました時に、「記憶がなくなった」と咄嗟にエドモンドに嘘をつく。そのことがキッカケとなり、彼は今までの態度は照れ隠しだったと白状するが、どんどん彼の不穏さが見えてくるようになり……。

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

処理中です...