おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第8章 先輩になった私と人気俳優の彼

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 あのドタバタの昼休みの検索で、ちょっと気になったのを見つけたから、仕事帰りに寄ろうかな、と思った。
 先輩たちは決算の準備で慌ただしくなってたけど。
 私もお手伝いしなくちゃいけないんだけど。
 今日なら、まだ早くあがれるか? と思って、定時であがってしまった。本城さん、笠原さん、ゴメンナサイ。

 そして。結局、買ってしまった。誕生日までもう少しだけど、見たら買いたくなってしまった。普段、自分のためにすら、買わないアクセサリー。私の唯一のアクセサリーともいえるのは、遼ちゃんからのネックレスだけだし。
 ちょっと迷ったけど、奮発してみた。
 オニキスのブレスレット。ポイントにシルバーのスカル。彼の趣味かわからないけど、これくらい細身のブレスレットなら派手ではないと思う。たまに使ってもらえればいい。ニヤニヤしながら、足取りも軽くなる。

「あれ~? 神崎さんじゃないですかー?」

 今度はいつ会えるかな、とワクワクしながら思いながら歩いてたのに、なんで、聞きたくない声が聞こえてくるんだろうか?

「神崎さ~ん」

 いや、きっと、私の勘違いだ。そうに違いない。

「神崎さんてば~」

 聞こえなかったフリして、改札を抜けてホームに向かう。

「もう、無視しないでくださいよ~」

 声が真後ろに迫り、急に右肩をつかまれ、思い切り振り向かされる。

「う、うわっ!!!」

 目の前に、スーツの胸の部分が迫ってた。

「おっと。ちょっと強かったですかね~」

 見上げれば、案の定、関根くんに抱きとめられてた。

「な、なにすんのよっ」

 慌てて離れようとするも、彼の腕から逃れられない。

「無視しなくてもいいじゃないですか」

 上から見下ろす関根くんは、笑ってるようで目が笑ってない。

「は、離さないと大声出すわよ」

 すでにちょっと大きい声を出してるけど、そばを通り過ぎていく人たちは、この状況に誰も助けてくれない。むしろ、痴話げんかでもしてるとでも思ってるのか。

「冷たいなぁ。先輩。あ、そうだ。先輩って、この路線なんですか?」

 今日はたまたま、ショップを見るために普段使わない電車に乗ってきた。

「ち、違うけど」
「え~、残念~。俺、この電車使ってるんで~、一緒だったら嬉しかったのにな~」

 全然、嬉しそうに見えないんですけど。

「いい加減にして」

 あまりにも頭にきたせいで、普段は出しもしない怒りの低音が出てしまう。さすがに、私の怒りが伝わったのか、掴んでいた腕を離す。

「じゃあ、お疲れ」
「あ、せっかくだから、ご飯でも」

 ほぼ同時に言ってきた言葉を無視して、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。混雑した電車の中から、ホームにいる関根くんの姿が見える。同じ場所から動きもせずに、じっとこちらを見てる。

 なんなの、あの目つき。

 昔の出来事を思い出させて、すごく嫌。あの頃は、兄ちゃんがいたけど。
 頭に浮かんだのは、遼ちゃんの顔。いや、彼に迷惑になるようなことは、彼の邪魔になるようなことは、しちゃいけない。余計な心配させたくない。
 笠原さんに相談すべきか? でも、あの二人、仲がいいし。というか、職場では、ウザいくらいでなんとかしのげていた。イライラはしたけど。
 もうちょっと様子見てからでもいいか、とは思ったけれど、念のため、一馬には相談しておこうと、とりあえず、L〇NEで明日の都合を聞いてみた。

『久しぶり。明日の夜、時間ある?』
『あるよ』
『ちょっと相談したいことが』
『遼ちゃんのこと?』
『いや、別件』
『わかった。会社のそばのカフェで待ってればいい?』
『それだと助かる』

 一馬は、大晦日のあれ以来、遼ちゃんとあまり接触していないらしい。まぁ、肝心の私の方が許してるのに、一馬はやっぱり納得できないらしい。清濁併せ呑む、っていうのは、まだまだ難しい青年ってことか。
 それでも、たぶん、遼ちゃんのことは心配してはいると思う。

 結局、仕事が終わりそうなころに連絡いれるという話になった。
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