おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

文字の大きさ
65 / 95
第9章 宣戦布告される私と人気俳優の彼

65

しおりを挟む
 涙をこらえながら、言葉をつむぐ。

「な、なんで、兵頭さん?」

 今の私が気になることなんて、そんなことくらい。

「目の前であの状況だったら、身体動くでしょ」
「び、病室で泣いてた」
「申し訳なかっただけでしょ」
「な、なんで、警察みたいな、ひ、人がいたの?」
「……」
「何か、あるの……?」

 遼ちゃんは大きく深呼吸して、私を見つめなおした。

「……これから言うことは、絶対秘密ね」

 真剣な顔になった遼ちゃんは、視線を窓のほうへと向ける。

「たぶん、あれは事故じゃない。故意に誰かが倒したんだ」
「なんで、そう思うの」
「僕、見ちゃったんだよね。倒すとこ」
「えっ」

 冷静に言ってるけど、それって目撃者になっちゃったってこと?

「ん、でも、ちらっとだけだから、誰だかはわからなかったけどさ。まぁ、そういうこと?」
「それって、兵頭さんが狙われてたってこと?」

 それで、『申し訳ない』って、いうこと?

「兵頭さんも、わかってるってこと? 狙われたこと」

 フフッと目を細めて私を見る遼ちゃん。

「美輪は、変なところ、察しがいいね」

 少し、遠い目をしてる遼ちゃんは、何かを思い出してる。

「もとはと言えば、年末のあれも」
「年末の『あれ』って」

 クスっと笑う遼ちゃん。

「美輪の『初めて』を頂くきっかけになった『あれ』?」

 意地悪そうな笑顔。

 ――小悪魔だ。

 そんな彼を見ただけで、身体中が熱くなる私もバカだ。

「まぁ、映画のためって、薄々はわかってるでしょ?」

 笑顔が一転、悔しそうな顔。

「でもね、それだけじゃなかったんだ」

 私の手をぎゅっと握りしめた。

「兵頭さん、嫌がらせされててね」
「遼ちゃんとのスキャンダルで?」
「いや、その前から」
「……なんで?」

 いい演技をする綺麗な女優さん。
 遼ちゃんと絡んでなかったら、ただそれだけの印象しかない。

「報道はされてないけど、彼女、付き合ってる人がいるんだよ。たぶん、それ絡み」
「えっ」

 そんなこと、私が聞いちゃってよかったんだろうか。

「あ、兵頭さんには、美輪に説明するのに話してもいいって言われてる。でも、秘密だからね」

 二人の秘密に、私もまぜてもらえた。仲間にしてもらえた気分は、なんか、こそばゆい。

「僕との噂で、少しでも標的にされるのが抑えられればよかったんだけど、結局、あんまり効果がなかったみたいだね」
「でも、それって、遼ちゃん絡みに変わった、とかじゃなくて?」
「美輪、怖いこと言うね。」
「ごめん……でも、どんな嫌がらせだったのか、わかんないし」
「そうだなぁタイミング、かな。彼女たちが一緒にいた前後に、トラブルが起きてる」
「でも、今回のは」
「いたんだ。あそこに。その相手が」
「え。じゃあ、彼女の相手って、やっぱり」
「僕じゃないからね。わかってると思うけど」

 半分呆れたような顔。

「も、もちろん、そうじゃなくて、現場の関係者なのかなって言いたかったのっ。」
「ただ、今までは姿を見せたことがなかったのに、今回はかなり危険を冒してきたから、ちょっと心配ではあるんだよね。まぁ、おかげで警察も絡みやすくなったけど。」
「え?」
「ほら、警察は事件にならないと動かないっていう、あれ」

 よくストーカー殺人とかで後手後手に回るっていうパターンか。

「まぁ、事務所も稼ぎ頭の兵頭さんだけに、大事に守ってるはずなんだけど、今回みたいに勝手に動かれたら、守るものも守れないってね」

 遼ちゃんがいたのは、本当にタイミングがよかったということか。

「でも、美輪は、僕のことだけ心配して?」

 また上目遣いで甘えてくる。
 ……当然、負けちゃうんだけど。

「仕事ほっぽって、僕のこと心配で来てくれて、嬉しいよ」

 ほっぽって来たつもりはなけれど、遼ちゃんが少しでも喜んでるなら、よしとするかな。

「で。ケガが早く治るようにキスして?」

 いきなりの発言に息をのむ。
 こ、ここは病院ですっ。個室とはいえ、看護師さん、いつくるかわからないんですけどっ!

「だめぇ?」

小悪魔王子降臨。
 目を閉じて、私からのキスを待っている姿は、正直、クラクラしちゃうんだけど。病室じゃなければ、大胆なキスもしたいくらい。耳が真っ赤になってるのを自覚しつつ、おずおずと、彼に近づいて、おでこにチュッ。

「……そんなのじゃ、効かない~。」

 お前は子供かっ!と言いたくなるのを我慢し(一応、怪我人だし)、うーうー言いながら、頑張ってほっぺたにチュッ。

「ねぇ、それって拷問?」

 ジトーっとした目で見られても、恥ずかしいものは恥ずかしい。

「ククククッ」

 笑いをこらえているような声がしたので、慌てて振り返ると、入口のカーテンから一人の男性が覗き込んでいた。

「阿川さん!」

 顔を真っ赤にしてベッドで背筋を伸ばした遼ちゃん。
 
 ――阿川 光太朗

 芸能界に疎い私でも、彼の存在は知っている。
 遼ちゃんと同じ事務所の先輩俳優。確か三十代前半じゃなかったっけ。いくつものテレビドラマで主役を務め、最近は舞台でも活躍してる。『抱かれたい男ランキング』に毎回選ばれてるイケメン俳優。(遼ちゃんはまだトップ10まではいってない)
 その彼が、なぜここに?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

処理中です...