おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第13章 娘と私と人気俳優のパパ

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 帰国当日。空を見上げると、思いのほかいい天気で、笑みが零れる。
 寺沢さんは、大きな黒いバンで、家まで迎えにきてくれた。

「おはようございます」

 運転席からわざわざ降りて、後ろの扉を開けてくれた。

「おはようございます。すみません、こんなところまで来ていただいて」
「いえいえ、赤ん坊と電車に乗るほうが、大変でしょう」

 そう言いながら、ママコートの中に埋もれてる碧の顔を覗き込む。

「かわいいですねぇ」

 遼ちゃんには絶対向けないだろう、優しい笑顔に、私の方も頬が緩む。
 車に乗り込みながら、前から気になっていたことを聞いてみた。

「そういえば、失礼ですけど、寺沢さんってご結婚は」
「私ですか? 私はバツイチです。どうも仕事優先になってしまって、逃げられました」
「あ、そうだったんですか。すみません、変な事聞いて」
「いいえ。離婚した今の方が、仲がいいんですよ。どうも『結婚』というスタイルが合わなかっただけで。うちにも娘がいましてね。もう高校生なんですよ」
「えっ!? そんな大きなお子さん、いらしたんですかっ!?」

 すごく若々しいから、いたとしても、まだ小さいお子さんなのかと思っていた。

「これでも、もうすぐ40ですよ。嫌でも子供も大きくなりますよ」

 寺沢さんは苦笑いしながら、車をスタートさせた。


 空港までの道は、寺沢さんのお嬢さんの話で盛り上がった。
 父親が芸能界の仕事をしているせいか、逆に、興味がないらしく、真面目一辺倒で面白くない、などと、親らしくないことを言う寺沢さん。それでも、お嬢さんの話は嬉しいのか、始終笑顔で話していたのは、意外だった。
 その間、碧はずっと大人しくて、時々、ちゃんと生きてるかな? と心配になるくらい、ずっと眠っていた。

「碧ちゃんは、いい子ですねぇ。絶対、美輪さんに似たんでしょうね」

 バックミラー越しに見える寺沢さんは、うんうんと頷きながら言った。その姿は、本当にいいお父さんに見えた。
 遼ちゃんも、いいパパになってくれるといいな。


 空港の駐車場に入る。
 時間帯のせいなのか、周囲に人影はない。

「じゃあ、遼くんを迎えに行ってきますから、しばらくここで待っててください」

 私は、碧と二人きりで、車に残された。
 遼ちゃんの飛行機の到着時刻は、すでに過ぎているけど、すぐには出てこれないだろうなぁ、と思いながら、スマホをチェックする。

「あっ」

 寺沢さんとのおしゃべりに夢中になってて気づかなかった。
 遼ちゃんからのL〇NEのメッセージが届いてた。

『着いた』

 その一言に、胸がトクンと跳ねた。
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