17 / 39
1章 覚悟のとき
16話 お誘い?
しおりを挟む
「ふぅ」
聖也くんが、ギターを置いて息を吐き後方へ倒れ込む。しかし、その表情はとても満足感に満ちたものだった。
テーブルの上に置かれた楽譜を拾い、覗き込む。相変わらず青く染まっているけれど、彼はこれでいいのだろうか。それに。
「聖也くん。やっぱりこれ、1人で作った方が完成早いんじゃないですか?」
「1人じゃ意味ないの。俺作れないから」
彼はそう言ってまたのっそりと起き上がると、部屋の隅で丸くなっていた小春の元に寄りしゃがみ込んだ。
そんなの、と思う。僕よりよっぽど歴があって、ちゃんと学んで来ている人だ。少なくとも僕よりは何倍も素晴らしいものができるはずだと思う。なのに。
「お前、風呂入る?」
突然、彼が振り向いた。何故いきなり、とそう思う。しかし。今日もどうせ泊まるつもりだから、僕は頷いて彼の元に寄る。
「いいんですか」
「うん。お湯溜めてくるね」
そう言って彼はお風呂へと向かうのだった。
しばらく小春と戯れる聖也くんを眺めて、たまに小春にちょっかいを出して。そうしているとすぐに時間は経って、聖也くんがくるりと振り向きパソコンの隣にある置き時計へと目を向けた。
「そろそろお湯溜まったね。行こう」
そしてあろうことか、そう小春に手を振ってお風呂の方へと歩み始めた。思わず硬直して、そんな彼の背中を視線で追う。
そんな僕の様子に気が付いた聖也くんは、すぐに足を止めて振り向き、小首を傾げて僕を見た。
「なにしてんの」
「え、いや」と、言葉が詰まる。
そこで、彼は何かに気が付いたように僕の元へ戻ってきて、肩へ手を置いた。
「嫌ならいいんだ。先入っておいで」
彼はそんなことを真顔で言ってのけて、僕の隣を通り過ぎ再びリビングへ向かった。
嫌なら、なんて。そんなの言ってない。僕は慌てて彼の腕を強く掴む。
彼は、今度は少し目を丸くして振り向いた。
「痛いって」
「嫌じゃないです。一緒に入りましょう」
聖也くんは、相変わらず表情を変えなかった。喜ぶわけでもなければ、照れるわけでもない。
ただ、その真っ黒な瞳で僕を見つめてこくんと大きく頷くのだった。
なんだか、誘ったこっちの方が恥ずかしくなってくる。
彼と顔を合わせるのが照れくさくて、僕は彼の腕を掴んだままに、それを引きながらお風呂へと先導する。彼はただそんな僕の後ろを、黙ってついてきた。
脱衣所へたどり着くまでは、ほんの一瞬であった。
脱衣所は、お風呂からの熱気で幾分か暑く額にじわっと汗が浮かぶ。僕は掴んだ彼の腕を離して、奥へと進む。
しかし。だからと言って、すぐに服を脱ぐわけにもいかなかった。
だって。聖也くんは、一緒の布団で寝ることすら許してくれなかったのだ。なのになぜ、お風呂は許されるんだろうと頭の中が疑問符で埋め尽くされる。しかし。
隣の彼は、早々に服へ手をかけたのだった。
慌てて聖也くんの腕を再び強く掴み上げ、それを阻止する。
「ねぇ、聖也くん。僕、興奮しない自信ないです」
彼は、そんな僕の言葉を聞き期待するでも失望するでもなく、ただツッコミを入れるかのようにペシと僕の二の腕を叩いて手を振りほどいた。
「変態かよ」
そして次の瞬間。真っ白なお腹と、ピンク色の小さな突起が露わになった。それは僕に熱を持たせるのには十分で。
僕は慌てて目を逸らして服を畳もせずに脱ぎ捨てると、一目散に湯船に飛び込むのだった。
聖也くんが、ギターを置いて息を吐き後方へ倒れ込む。しかし、その表情はとても満足感に満ちたものだった。
テーブルの上に置かれた楽譜を拾い、覗き込む。相変わらず青く染まっているけれど、彼はこれでいいのだろうか。それに。
「聖也くん。やっぱりこれ、1人で作った方が完成早いんじゃないですか?」
「1人じゃ意味ないの。俺作れないから」
彼はそう言ってまたのっそりと起き上がると、部屋の隅で丸くなっていた小春の元に寄りしゃがみ込んだ。
そんなの、と思う。僕よりよっぽど歴があって、ちゃんと学んで来ている人だ。少なくとも僕よりは何倍も素晴らしいものができるはずだと思う。なのに。
「お前、風呂入る?」
突然、彼が振り向いた。何故いきなり、とそう思う。しかし。今日もどうせ泊まるつもりだから、僕は頷いて彼の元に寄る。
「いいんですか」
「うん。お湯溜めてくるね」
そう言って彼はお風呂へと向かうのだった。
しばらく小春と戯れる聖也くんを眺めて、たまに小春にちょっかいを出して。そうしているとすぐに時間は経って、聖也くんがくるりと振り向きパソコンの隣にある置き時計へと目を向けた。
「そろそろお湯溜まったね。行こう」
そしてあろうことか、そう小春に手を振ってお風呂の方へと歩み始めた。思わず硬直して、そんな彼の背中を視線で追う。
そんな僕の様子に気が付いた聖也くんは、すぐに足を止めて振り向き、小首を傾げて僕を見た。
「なにしてんの」
「え、いや」と、言葉が詰まる。
そこで、彼は何かに気が付いたように僕の元へ戻ってきて、肩へ手を置いた。
「嫌ならいいんだ。先入っておいで」
彼はそんなことを真顔で言ってのけて、僕の隣を通り過ぎ再びリビングへ向かった。
嫌なら、なんて。そんなの言ってない。僕は慌てて彼の腕を強く掴む。
彼は、今度は少し目を丸くして振り向いた。
「痛いって」
「嫌じゃないです。一緒に入りましょう」
聖也くんは、相変わらず表情を変えなかった。喜ぶわけでもなければ、照れるわけでもない。
ただ、その真っ黒な瞳で僕を見つめてこくんと大きく頷くのだった。
なんだか、誘ったこっちの方が恥ずかしくなってくる。
彼と顔を合わせるのが照れくさくて、僕は彼の腕を掴んだままに、それを引きながらお風呂へと先導する。彼はただそんな僕の後ろを、黙ってついてきた。
脱衣所へたどり着くまでは、ほんの一瞬であった。
脱衣所は、お風呂からの熱気で幾分か暑く額にじわっと汗が浮かぶ。僕は掴んだ彼の腕を離して、奥へと進む。
しかし。だからと言って、すぐに服を脱ぐわけにもいかなかった。
だって。聖也くんは、一緒の布団で寝ることすら許してくれなかったのだ。なのになぜ、お風呂は許されるんだろうと頭の中が疑問符で埋め尽くされる。しかし。
隣の彼は、早々に服へ手をかけたのだった。
慌てて聖也くんの腕を再び強く掴み上げ、それを阻止する。
「ねぇ、聖也くん。僕、興奮しない自信ないです」
彼は、そんな僕の言葉を聞き期待するでも失望するでもなく、ただツッコミを入れるかのようにペシと僕の二の腕を叩いて手を振りほどいた。
「変態かよ」
そして次の瞬間。真っ白なお腹と、ピンク色の小さな突起が露わになった。それは僕に熱を持たせるのには十分で。
僕は慌てて目を逸らして服を畳もせずに脱ぎ捨てると、一目散に湯船に飛び込むのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる