口付けたるは実らざる恋


『アムネシア症候群』
 医者はそう、聞きなれぬ言葉を紡いだ。
 人々の間ではそう呼ばれているらしい。
 彼を救うには脳の手術が必要だ、と。しかし、代わりに今までの全ての記憶が失われる可能性がある、と。

 初めての恋人に喜んでいた朝陽橙花は、その相手、望月聖也の病の発覚に戦慄する。
 手術を受け、記憶を失うのを選ぶのか。手術を拒み、記憶と共に生きるのか。

 二つに一つな選択肢。
 当の本人は、いつも通りただボーッとした顔で僕の背中を撫でるのだった。

 ──ずっとずっと、後悔している。
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