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第19話2人がかりでVIP対応

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ご飯を食べ終えてとりあえず宿屋に戻ることにした。



「はぁ疲れた」


大きなため息をつきながらナギが部屋の中にあるベッドの上に横になる。


「なんやかんやで色々ありましたからね」


『僕もなんだかんだいろいろあって疲れた』


そう言いながら横になって休憩することにした。


すると僕は睡魔に襲われて眠ってしまった。



しばらくしてゆっくりと目を開けると目の前にはナギの顔があった。


「ナギ!」


思わず驚きの声を上げる。


ナギは自分の指を口元らへんに当てて静かにというジェスチャーをする。


頭が冴えてきたところで 今どういう状況になっているのか辺りを見回して確認する。


なぜか僕の頭がなぎの膝に乗っかっている。


『なんでこんな状況になってるの!』


『時間があるからクロリスのスキルポイントを貯めようとしたんだけどモモさんの前でやってたらまたなんかちょっかいかけてきそうだったから』


『クロリスが寝ている間にこっちに連れて来たの』


『モモさんがやってくるんだとしたらちょっかいをかけてくるというよりかは 、からかって僕達の反応を見て楽しむっていうほうが可能性としてはありそうだけど』


『それでその育児は終わったの?』



『いやまだ悩んでて』


『あの…耳掃除とかならすぐに出来るんじゃない』


一番最初にこの宿屋に泊まった時もやったが今この状況で育児をするんだとしたらそのぐらいしかできることはないだろう。


とはいっても人数が増えたので最初に泊まっていた部屋とは違い、部屋が二つある場所へと移ったが。


「それもそうねこの場所でこのぐらいしかできることはなさそうだし」


ナギは綿棒を取り出して僕の耳の中に慎重に入れていく。


耳かきを始めようとしたその直後。


「お2人ともここにいたんですか」


「寝て起きたら向こうの部屋にいないからびっくりしましたよ」



なぜか分からないがモモさんが笑顔で僕の顔を見つめてくる。


「気持ちいいですか勇者様」


『うん…』


「あのーそんなにまじまじと見られてるとやりにくいんだけど」


「気にしないでください私は勇者様が耳掃除してもらっているのを見て癒されているだけですから」


「私が気になるんだよ!」


「まじまじと見るのがダメなら私にも勇者様の耳かきやらせてください」


「ダメよ危ないから」


「ゆっくりやれば大丈夫ですよ」


「分かりました耳かきをしない代わりに勇者様の顔を見させてください」


『一体どういう理屈だ、というかそもそも僕の顔にそんな需要があるのか?』



「需要があるのかどうかはわかりませんが私が勇者様の顔を見れるというメリットならあります」


『そうだったモモさんも僕の心を読むことができるんだった!』


『モモさんが全然そんな素振りを見せないから忘れてた!』


「まあそこで見ているだけだったら何の問題もないから別にいいけど」


それからしばらくして。


《100ポイントを取得しました》


モモさんが僕の顔をさっきからじっと見つめてきている。


「ちょっとそんなにじっと見ないで集中できないじゃない!」


「いいえ気にしないでください私がじっと見ているのは勇者様の顔ですから」


何の恥ずかしげもなく笑顔でそう言ってくる。


だからその言葉で確信に変わった。


モモさんは僕達をからかって楽しんでいるんだということに。


『待って待って変な事を考えるな!』


自分に強くそう言い聞かせるがそう思えば思うほど逆に色々な考えが頭の中に過ぎってしまう。


「変な事って例えばどんなことですか?」


僕の口元に耳を近づけて少しわざとらしい口調でそう言ってくる。


『嘘つけ絶対分かった上でそう聞いているんだ!』


「私は全く何のことだかわかりませんけど?」


同じように少しわざとらしい口調でそう言ってくる。


僕はただその言葉に応えずに無言を貫き通すしかなかった。


「ナギさん私とひとつじゃんけんで勝負をしてくれませんか?」


いきなりそんなことを言ってきた。


「なんで私があなたとじゃんけんしなきゃいけないの?」


「もちろん普通のじゃんけんではありません私が勝ったら勇者様の耳掃除をする」


「もしナギさんが私に勝ったら私が一つ何でも言うこと聞きます」


「面白そうじゃないやりましょう」


顔に不敵な笑みを浮かべてそう言葉を返す。


「じゃんけんぽん!」

「じゃんけんぽん!」


結果はモモさんがグーでナギがチョキという結果になった。


「じゃあ私の勝ちですね」



「それでは勇者様私が耳掃除をしますね」


『ちょっと待って今の勝負僕のメリットらしいメリットが全然なかったような気がするんだけど』


「まあいいじゃないですかそんな細かいことは!」


流されてしまった。


「ゆっくりやりますから安心してください」


『ていうかこれどういう状況なんだいつのまにか膝枕状態になっちゃってるし!』


僕が動揺していることなど一切気にせず 綿棒をゆっくり耳の中に入れていく。


「痛くないですか勇者様?」


何故か僕の耳元で囁くようにそう言ってくる。


「ああ…」


思わずその言葉に緊張してしまう。


『この状況どうしたらいいんだ!』


『またモモさんに遊ばれているような気がする』


『ナギどうにかして助けて!』



『知らない自分でどうにかしたら』


なぜか不満そうな口調でそう言われてしまった。


僕は諦めてモモさんに耳掃除をしてもらうことにした。


おそらく世界中どこ探しても耳掃除をしてもらうだけでここまで 恥ずかしさを感じたことがあるのは僕ぐらいのものだろう。


『はいいろんな意味で大変だった』


『大変て何が大変だったんですか?』


モモさんの声が聞こえて慌てて後ろに顔を向ける。


『いや特に深い意味は』


慌ててそう訂正する。


『全く心の中が読まれるとなると下手に色々なことが考えられないから大変だ』



『何かバレたらまずいことでもあるんですか?』


顔に不敵な笑みを浮かべながら聞いてくる。


『いや特にないけど』


「そうですか」


3人でお風呂に入ったのだがそこでもモモさんが僕達をからかうというのが続いた。


『今日はモモさんにからかわれて疲れた』


『モモさんがこのパーティーに入ってきてからずっとこんな感じな気もするけど』


『今日は特に疲れた』


僕はすぐに眠りについた。




しばらくして目を開け窓の外に視線を向けてみるとまだ夜だった。


それから寝付くことができず気分転換に外に出ることにした。


音を立てないように気をつけながら外に出る。


『気持ちいいなぁこの風』


「勇者様まだ寝ていなかったんですか」


『すいませんモモさん起こしちゃいましたか?』


「いいえ気にしないでください 私はただ寝付けなかっただけなので」


そう言いながらモモさんが僕の横で足を止める。


『僕も同じです』


「今日も楽しかったです」


『でもああいうのはちょっとやめてください』


「ああいうのってどういうのですか?」


わかっているはずなのだがとぼけたふりをしてそう聞いてくる。


『僕達をからかうことをですよ』


「からかうって例えばどんな?」


そう言いながら顔を近づけてきて覗き込んでくる。


恥ずかしさに耐えられず思わず目をそらしてしまう。


『そういうのですよ…』 


「はははすいません勇者様をからかうのが楽しくて」


面白かった。

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