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4〜公爵視点〜
こんなにも人のために怒りを抱いたことがこれまでの人生にあっただろうか。初めて惹かれた相手が男であろうと王命でなった自分の妻という幸運に浮かれていたのかもしれない。
これはそもそも自分で結んだ契約を忘れるほどに惹かれておきながら、その相手がどれほど苦しんできたのか知りもしようとしなかった私自身の失態だ。
「ツォン、今すぐメイド長と妻につけていたはずの使用人共を全員連れてこい」
「かしこまりました」
事実を知った私は私の補佐でもある執事長のツォンに怒りのままに命じた。
そして改めて思い返す。ずっと私といるときは笑顔を絶やさなかったからそれなりに満足のいく生活をさせてやれているのだと思っていた。妻が笑っている限りこの心地よい時間がずっと続くのだと信じて疑わなかった。
人と自ら関わろうとしてこなかったことで、少ない時間で満足していた自分すらにも罰を与えたいほどに苛立つ。
男だからとかではなく、嫌ってきた人間に惹かれている事実を認めようとしなかったことで、三年間もあったというのに心地のいい空間を作ってくれていた妻との関係はほんの少ししか変わっていなかったのだ。
会う度に笑って純粋に好意を伝えてくれる……たったそれだけで惹かれる自分の単純さを認めたくなかっただなんてことは今では言い訳にしかならない。
離婚を突きつけられて初めて手放したくないほどに惹かれていたことに気づいた自分が憎たらしい。何より無駄に悩んでいたせいで妻の現状に気づけなかったことが。
『元々公爵様との時間もほしかったんですけど、公爵様がいないと食事も用意してもらえなかったんであの契約にしたんです』
変な契約だと思っていた。あの時に何故関わる時間が食事の時だけなのか、質問の一つでもして気づいていれば離婚の引き留めにすぐ応じてもらえただろうか。
『まあ嫌がらせされるのは予想してたんで気にしてないんですけど、最近は暴力もあるのでさすがに我慢し続けるのは辛いなあと』
嫌がらせだけでも許せない自分がいるのに、暴行とまで聞いて私は怒りでおかしくなりそうだった。証拠とばかりに青痣まで見せられて、私が離婚について問い詰めなければ話すつもりのなかっただろう妻の態度はより一層私を惨めにしたことを妻は気づいていないだろう。
自業自得とはいえ、こんな形でようやく妻に惹かれていたことを認められた時点で手遅れとも言えるこの三年間。なんとかするからと、みっともなく離婚を引き延ばしてもらうことがなんと見苦しいことか。
困惑しながらも了承してくれた妻の優しさには感謝しかない。
「公爵様……使用人たちを扉の前に連れて来てはいるのですが、全員から話を聞く前にメイド長からお話があると」
「……なんでもいい。とにかくこの三年間妻に何があったのかまずは事実確認ができればいい」
「もう遅いとは思いますが、この三年間奥様がされてきたこと全てをお話します」
そう言って疲れた表情をしたメイド長は覚悟をもった目つきで話始めた。その内容は、私と妻の結婚式や初夜が最初の原因であったこと、急に食事の時間が一緒にされることが増えたことでエスカレートしていった嫌がらせなど、原因までもを話され、私は使用人を責める前に自分が誠心誠意謝罪すべきことを改めて悟った。
自分が最初から妻を大事にしていればここまでのことにはならなかったのだから。気づく気づかない以前の問題だった。
正直私が原因なのに私に好意を伝え続けてくれた妻は天使か女神ではないだろうかと本気で思う。一度気持ちを認めてしまえばその想いは止まることを知らない。
会う度に好意を伝えたくなる妻の気持ちを今頃知るなんて本当に反省すべきことばかりで自分が嫌になる。
だからこそ決意する。
絶対に私の全てをかけて妻を逃さないと。そして傷つけた分必ず幸せにしてやると。
「今後このような失態は絶対にしないし、させない」
これまで妻の気持ちが変わらなかったことを神に感謝しつつ、私の心にそう誓ったのだった。
これはそもそも自分で結んだ契約を忘れるほどに惹かれておきながら、その相手がどれほど苦しんできたのか知りもしようとしなかった私自身の失態だ。
「ツォン、今すぐメイド長と妻につけていたはずの使用人共を全員連れてこい」
「かしこまりました」
事実を知った私は私の補佐でもある執事長のツォンに怒りのままに命じた。
そして改めて思い返す。ずっと私といるときは笑顔を絶やさなかったからそれなりに満足のいく生活をさせてやれているのだと思っていた。妻が笑っている限りこの心地よい時間がずっと続くのだと信じて疑わなかった。
人と自ら関わろうとしてこなかったことで、少ない時間で満足していた自分すらにも罰を与えたいほどに苛立つ。
男だからとかではなく、嫌ってきた人間に惹かれている事実を認めようとしなかったことで、三年間もあったというのに心地のいい空間を作ってくれていた妻との関係はほんの少ししか変わっていなかったのだ。
会う度に笑って純粋に好意を伝えてくれる……たったそれだけで惹かれる自分の単純さを認めたくなかっただなんてことは今では言い訳にしかならない。
離婚を突きつけられて初めて手放したくないほどに惹かれていたことに気づいた自分が憎たらしい。何より無駄に悩んでいたせいで妻の現状に気づけなかったことが。
『元々公爵様との時間もほしかったんですけど、公爵様がいないと食事も用意してもらえなかったんであの契約にしたんです』
変な契約だと思っていた。あの時に何故関わる時間が食事の時だけなのか、質問の一つでもして気づいていれば離婚の引き留めにすぐ応じてもらえただろうか。
『まあ嫌がらせされるのは予想してたんで気にしてないんですけど、最近は暴力もあるのでさすがに我慢し続けるのは辛いなあと』
嫌がらせだけでも許せない自分がいるのに、暴行とまで聞いて私は怒りでおかしくなりそうだった。証拠とばかりに青痣まで見せられて、私が離婚について問い詰めなければ話すつもりのなかっただろう妻の態度はより一層私を惨めにしたことを妻は気づいていないだろう。
自業自得とはいえ、こんな形でようやく妻に惹かれていたことを認められた時点で手遅れとも言えるこの三年間。なんとかするからと、みっともなく離婚を引き延ばしてもらうことがなんと見苦しいことか。
困惑しながらも了承してくれた妻の優しさには感謝しかない。
「公爵様……使用人たちを扉の前に連れて来てはいるのですが、全員から話を聞く前にメイド長からお話があると」
「……なんでもいい。とにかくこの三年間妻に何があったのかまずは事実確認ができればいい」
「もう遅いとは思いますが、この三年間奥様がされてきたこと全てをお話します」
そう言って疲れた表情をしたメイド長は覚悟をもった目つきで話始めた。その内容は、私と妻の結婚式や初夜が最初の原因であったこと、急に食事の時間が一緒にされることが増えたことでエスカレートしていった嫌がらせなど、原因までもを話され、私は使用人を責める前に自分が誠心誠意謝罪すべきことを改めて悟った。
自分が最初から妻を大事にしていればここまでのことにはならなかったのだから。気づく気づかない以前の問題だった。
正直私が原因なのに私に好意を伝え続けてくれた妻は天使か女神ではないだろうかと本気で思う。一度気持ちを認めてしまえばその想いは止まることを知らない。
会う度に好意を伝えたくなる妻の気持ちを今頃知るなんて本当に反省すべきことばかりで自分が嫌になる。
だからこそ決意する。
絶対に私の全てをかけて妻を逃さないと。そして傷つけた分必ず幸せにしてやると。
「今後このような失態は絶対にしないし、させない」
これまで妻の気持ちが変わらなかったことを神に感謝しつつ、私の心にそう誓ったのだった。
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