人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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目が覚めてからも一度愛を伝えてきた公爵様の変わりようが戻ることはなかった。

「私は何を迷っていたのか、過去の自分を殴りたいくらいだ。こんなに可愛い妻を愛でずにいられたなんて」

「あうあうあうあう」

この人誰ですか?というくらいに甘い雰囲気が僕の心を攻撃してくる。抱きしめられながら頭を撫でられ、愛を囁かれ……何が公爵様をそうさせたのか本当にわからない。可愛いとか平凡顔の僕には似合わない言葉だと言いたいのに、公爵様との触れ合いに慣れなさすぎて口に出た言葉が言葉にならない。

というかこんな触れ合い家族で唯一優しかった兄くらいしか経験がなく慣れるはずもない。その兄ですらこんな長時間抱きしめることもなかったし。正直気絶しないだけで精一杯である。

「ああ、そうだ。この痣の手当は私がするから他にさせないように」

「そそそそんな……さすがに申し訳が」

「シャロンを誰にも触れさせたくないんだ。今回は寝ている間に手当はしたが、手当の最中ぴくぴくと動く可愛い姿を私以外に見せると思うと医師ですら許せない」

公爵様の言う通り、寝ているというか気絶している間に公爵様自ら手当してくれていたようで、起きた時にはもう抱きしめられた状態で僕は公爵様の胸にもたれて寝ていたのだ。混乱した僕はまだお礼一つ言えてないのが今の現状。

でもそんな僕にとんでもない爆弾を落とされて、実は僕死んで天国にいる説が出てきた。だって噂に聞く人嫌いの公爵様はどこに行ってしまったのか。甘い言葉を吐く公爵様は僕の中の妄想だけと思っていたのに!

「あの、それなら自分で……」

「…………」

「ひゃぅ……っこ、こうしゃ……」

さすがにずっと公爵様に手当されるのは自分がもたないと思い自分で手当をすると提案しようとすれば何故か無言で公爵様に服の上から乳首を掴まれた。くりくりと弄られ思わず手で抵抗しようとするも公爵様の力に叶うはずもなくせめてと口を塞ぐ。

「どうやら私の妻は敏感らしい。なのに自分で手当ができるのか?」

「や……っそんな、とこ……怪我してな……ふんぅ」

でも塞ぐ手の力も抜けて意味をなさない。意地悪な公爵様にきゅんきゅんしちゃってる僕もいるけど、喘いじゃう自分が恥ずかしくて仕方ない。僕がこんな敏感だったなんて知りもしなかったから。好きな人に弄られているせいだとしても、あまりに敏感すぎて同じ男なのに幻滅されないかとたんに不安になる。

「シャロン?な、泣いているのか?すまない、可愛くてつい調子に乗った」

「ぁ……ごめ、なさ」

気がつけば泣いてしまっていたようだ。先に気づいた公爵様がぱっと乳首部分から手を離してくれたので謝りながらもとっさに公爵様から距離をとる。

「泣かせるつもりはなかったんだ。今までが今までだったのに性急すぎたな」

「……っ……僕、気持ち悪くなかったですか」

「何を……!寧ろ可愛すぎて襲いたかったくらいだ!あ、いや、これは怖がらせたいわけではなく……だが、嘘というわけでも……」

勢い余ったとばかりに言い切る公爵様に少しホッとした。公爵様に好意を持ってもらえただけでも嬉しいのに、性欲という点でやっぱり男だからとそれがなくなることは大いにあると思うから。男同士の恋愛はそれほどに難しいものだと理解しているからこそ僕は公爵様の急な変わりように慣れないし、慣れることが怖いとも思ってしまうのだと今公爵様から離れて冷静になることで気がついた。

このまま流されても今は幸せかもしれないけど、いつそれが崩れるかわからない。それが崩れたとき僕は使用人にされてきたことよりもそちらの方が耐えられない自信がある。何も思ってない人からと思っている人で同じことをされたとしてもその感情の揺れ幅は断然違うのだから。

「公爵様、僕は男です」

「? ああそれは知っているが……」

「公爵様に好意を持ってもらえたことは嬉しいですが、だからといって僕を抱くとかそういう行為は無理しないで大丈夫です。初夜のとき公爵様も言っていたでしょう?男だから生産性がないし、しても意味がないって……」

十分夢を見させてもらったからこれ以上望んではいけないと自分に言い聞かせる。初夜のとき公爵様が言ったことに嘘はない。だからそれを言えば公爵様もきっとこれ以上のことはしないだろうし、しないということは今の現状を維持できて僕としては十分。

「そ、れは……」

公爵様がはっとしたように後悔するような青ざめた様子だったけどきっとそれは僕の夢見すぎる妄想がそう見せているだけだ。だから僕は言葉を続ける。

「僕も公爵様が好きですけど、元々噂の人嫌いも承知の上でそこまでの期待はしてませんでしたし、暴力とかなくて、使用人がいなくなることで公爵様に迷惑がかからないなら、離婚しなくても今のままで十分ですよ」

そうそれで十分だ。離婚もないままに生活が改善されるならそれ以上にいいことはない。好きな人と一緒に過ごせる日々が幸せなのはこの三年間身に染みているから。

「あの時……私は知らず知らずのうちに君を傷つけていたのか」

「そんなことないですよ!慣れてましたから」

そう慣れている。だからそんな悲しそうな顔をしないでほしいと思う。これ以上に期待してしまいそうな自分が出てくるから。

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