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その後はリードも再び退室してまた一人になるも、一度公爵様に会ってしまえば思ったよりも気持ちは落ち着いていた。話したかったこと話せずじまいだったけど、泣くほどに心配してくれた公爵様を思うと、あの謁見の日の失態を公爵様が怒っているとは思わなかったから。
あの時のこと公爵様はどう思って質問に答えてくれていたのか、今はそれがなんとなく気になる。
そう言えば離婚の件もどうなったのか聞いてない。なんか聞いてないことが多すぎるのにその場その場の流れについていけなくて何一つ解決できないんだよね……。僕はもう少し落ち着きを持つべきかもしれない。
とりあえず次のことを考えようか。見舞いに来る予定なのは公爵様とお兄様だけだったから……
「後はお兄様だけか」
「呼んだかい?」
「え?……ええっ?」
なんとなくぽつりと呟けば急に横から聞こえる声。ベットの横を向けばベットに顎を乗せて僕を見るお兄様がいた。え?いつの間に?
「一応ノックしたんだよ?返事ないから心配で入ったんだけど大丈夫そうだね」
「そ、そうなんだ……」
こんなに近くにいて気づかなかった僕って……危機管理なさすぎない……?元々兄は影が薄いとはいえ。
「んー何か失礼なこと考えてるようだね」
「いや、そんなことは……」
相変わらずぽやぽやした様子なのにこういうことには鋭いからこの兄は凄い。
「まあ怒ってないよ。思ったより元気そうで安心したからね。面会は予定より遅めにと言われたから一分ほどズラして来たよ」
「一分……」
それはもう大して変わらない。よくリードから連絡があっただろうに許可をもらってこの時間にここまで来れたなと思う。でも兄は話上手なところがあるから、上手いこと言って予定通りの時間に来たことは予想できる。
「実際時間をズラしたかったのは私ではないだろう?」
「う……まあ」
兄には全部バレバレのようだ。説明がいらないのは助かるけど、三年間会わなかったのにそれでも察する辺り、多分予め家族としてリードから謁見についての内容を聞いているんだろうな。
どこまで聞いてるかわからないけど、兄の方が現在の僕らの事情については詳しいだろうか?
「第二王子殿下から聞いたのは公爵閣下がヘタレだったせいで、この三年間シャロンに辛い思いをさせたどうしようもない夫ということで、離婚させたフリで今後の……あ」
「離婚させた……フリ?」
兄が思わず口が滑ったとばかりに口を両手でわざとらしく塞ぐ。でももう聞いてしまったわけで……え、もしかして離婚は決定事項みたいに言ってたけどあれは嘘ってこと?でも何のために?リードの考えがよくわからない。だけど、兄の続きそうな言葉からもリードに何か考えがあってのことだと思う。
「聞かなかったことにしない?」
「さすがに無理だよ……」
聞こえちゃったかとばかりに特に気にした様子もないくせに無理な提案を言う兄。この様子を見るにわざと口を滑らしたのがバレバレだ。リードは言わないようにしていただろうに、その意に反してバラす兄は中々の強者だと思う。
「はは、だよね。ま、これは公爵閣下の今後の行動によっては本当になる可能性もあるから内緒だよ?でもシャロンが意識のない間の様子を見てたら大丈夫な気がするけどね。愛されてるのがよくわかるくらいに、公爵閣下にはシャロンしか見えてなかったよ」
「か、からかわないで」
からかわれてるのがわかるもののその言葉に嘘を感じられないから、顔がついつい赤くなる単純な自分が嫌すぎる。もう少し気持ちが顔に出ないようにできたらいいんだけど、こんな僕だからよくからかわれるのだ。
「シャロンも一途だね。でも、酷い目にあったのに、公爵閣下を責めず庇うことばかりするのはその強い好意のせいなのかな?」
僕の様子を見て何か思うところがあるのか、兄が急に真剣な表情になってそう質問する。その様子に僕も頬の赤みが引いた。
「わからない……けど、公爵様の初夜の言葉以外で傷つけられた記憶はないから、他の人のことで責めるのは違うかなって。僕が言わなかったせいもあるし」
「初夜の言葉、ね。それは初耳だけど、シャロンが言えなかったのは、この三年間公爵閣下が夫としての努力を怠ったのが原因だよね?」
少し余計なことを言ったかもとは思うものの、真剣な表情の時の兄に対しては昔から嘘がつけない。
「夫としての努力って……?」
「妻に信頼される努力だよ。何より嫁いできた側は、誰もが知らない人だから人嫌い以前に、ある程度の配慮は王命だろうと結婚した責任としてすべきだった。これは公爵閣下が自分を優先して結婚を軽んじたことが大きな原因でもある。初めの時点で間違った対応をしたせいでシャロンは三年間誰にも相談できず苦しんだわけだ。相談したところで人嫌いだからと家の中でも公爵閣下に少しでも会うのが難しい時点でおかしいんだよ」
「そ、それは公爵様も忙しくて……」
「三年間ずっと?それはもう聞く耳を持たないも一緒だろう?私はね、ようやくあの家から解放してあげられると思ってたんだ。親がそちらの邪魔をしないように立ち回っていたのもシャロンのためだった。なのに嫁いだ先はより酷い場所だったと知って、私はそれを行った人物はもちろん、夫の義務を果たさない公爵閣下に何よりも怒りを抱いたよ」
「夫の義務……?」
「妻となった人が過ごしやすい環境を作ることだよ。その第一段階は家主の夫が動くことで後に妻に任せる形になるのが自然だ。そもそも公爵閣下も住み心地の悪い家だったならそれ以前の文句だけどね」
兄は結婚についてすごく深く考えられる人みたいだ。その話を聞いていると確かにそうしてもらえていたらと思う点ばかりだったから。
僕は兄の言う通り一度は公爵様に文句を言ってもいいのかもしれない。……言えるかはともかく。
あの時のこと公爵様はどう思って質問に答えてくれていたのか、今はそれがなんとなく気になる。
そう言えば離婚の件もどうなったのか聞いてない。なんか聞いてないことが多すぎるのにその場その場の流れについていけなくて何一つ解決できないんだよね……。僕はもう少し落ち着きを持つべきかもしれない。
とりあえず次のことを考えようか。見舞いに来る予定なのは公爵様とお兄様だけだったから……
「後はお兄様だけか」
「呼んだかい?」
「え?……ええっ?」
なんとなくぽつりと呟けば急に横から聞こえる声。ベットの横を向けばベットに顎を乗せて僕を見るお兄様がいた。え?いつの間に?
「一応ノックしたんだよ?返事ないから心配で入ったんだけど大丈夫そうだね」
「そ、そうなんだ……」
こんなに近くにいて気づかなかった僕って……危機管理なさすぎない……?元々兄は影が薄いとはいえ。
「んー何か失礼なこと考えてるようだね」
「いや、そんなことは……」
相変わらずぽやぽやした様子なのにこういうことには鋭いからこの兄は凄い。
「まあ怒ってないよ。思ったより元気そうで安心したからね。面会は予定より遅めにと言われたから一分ほどズラして来たよ」
「一分……」
それはもう大して変わらない。よくリードから連絡があっただろうに許可をもらってこの時間にここまで来れたなと思う。でも兄は話上手なところがあるから、上手いこと言って予定通りの時間に来たことは予想できる。
「実際時間をズラしたかったのは私ではないだろう?」
「う……まあ」
兄には全部バレバレのようだ。説明がいらないのは助かるけど、三年間会わなかったのにそれでも察する辺り、多分予め家族としてリードから謁見についての内容を聞いているんだろうな。
どこまで聞いてるかわからないけど、兄の方が現在の僕らの事情については詳しいだろうか?
「第二王子殿下から聞いたのは公爵閣下がヘタレだったせいで、この三年間シャロンに辛い思いをさせたどうしようもない夫ということで、離婚させたフリで今後の……あ」
「離婚させた……フリ?」
兄が思わず口が滑ったとばかりに口を両手でわざとらしく塞ぐ。でももう聞いてしまったわけで……え、もしかして離婚は決定事項みたいに言ってたけどあれは嘘ってこと?でも何のために?リードの考えがよくわからない。だけど、兄の続きそうな言葉からもリードに何か考えがあってのことだと思う。
「聞かなかったことにしない?」
「さすがに無理だよ……」
聞こえちゃったかとばかりに特に気にした様子もないくせに無理な提案を言う兄。この様子を見るにわざと口を滑らしたのがバレバレだ。リードは言わないようにしていただろうに、その意に反してバラす兄は中々の強者だと思う。
「はは、だよね。ま、これは公爵閣下の今後の行動によっては本当になる可能性もあるから内緒だよ?でもシャロンが意識のない間の様子を見てたら大丈夫な気がするけどね。愛されてるのがよくわかるくらいに、公爵閣下にはシャロンしか見えてなかったよ」
「か、からかわないで」
からかわれてるのがわかるもののその言葉に嘘を感じられないから、顔がついつい赤くなる単純な自分が嫌すぎる。もう少し気持ちが顔に出ないようにできたらいいんだけど、こんな僕だからよくからかわれるのだ。
「シャロンも一途だね。でも、酷い目にあったのに、公爵閣下を責めず庇うことばかりするのはその強い好意のせいなのかな?」
僕の様子を見て何か思うところがあるのか、兄が急に真剣な表情になってそう質問する。その様子に僕も頬の赤みが引いた。
「わからない……けど、公爵様の初夜の言葉以外で傷つけられた記憶はないから、他の人のことで責めるのは違うかなって。僕が言わなかったせいもあるし」
「初夜の言葉、ね。それは初耳だけど、シャロンが言えなかったのは、この三年間公爵閣下が夫としての努力を怠ったのが原因だよね?」
少し余計なことを言ったかもとは思うものの、真剣な表情の時の兄に対しては昔から嘘がつけない。
「夫としての努力って……?」
「妻に信頼される努力だよ。何より嫁いできた側は、誰もが知らない人だから人嫌い以前に、ある程度の配慮は王命だろうと結婚した責任としてすべきだった。これは公爵閣下が自分を優先して結婚を軽んじたことが大きな原因でもある。初めの時点で間違った対応をしたせいでシャロンは三年間誰にも相談できず苦しんだわけだ。相談したところで人嫌いだからと家の中でも公爵閣下に少しでも会うのが難しい時点でおかしいんだよ」
「そ、それは公爵様も忙しくて……」
「三年間ずっと?それはもう聞く耳を持たないも一緒だろう?私はね、ようやくあの家から解放してあげられると思ってたんだ。親がそちらの邪魔をしないように立ち回っていたのもシャロンのためだった。なのに嫁いだ先はより酷い場所だったと知って、私はそれを行った人物はもちろん、夫の義務を果たさない公爵閣下に何よりも怒りを抱いたよ」
「夫の義務……?」
「妻となった人が過ごしやすい環境を作ることだよ。その第一段階は家主の夫が動くことで後に妻に任せる形になるのが自然だ。そもそも公爵閣下も住み心地の悪い家だったならそれ以前の文句だけどね」
兄は結婚についてすごく深く考えられる人みたいだ。その話を聞いていると確かにそうしてもらえていたらと思う点ばかりだったから。
僕は兄の言う通り一度は公爵様に文句を言ってもいいのかもしれない。……言えるかはともかく。
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