人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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67〜公爵視点〜

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これ以上親の視線に耐えられなかった僕が出て行った先には当然のようにリテールがいて

「父様も母様も兄様が人を不幸にする存在ってわかっちゃったんだよ。兄様が誰も好きにならなければそんなに落ち込む必要ないんだよ?それに誰も不幸にはならない」

まるでそれが私の正しい道かのように言い放った。

「誰も好きにならなければ……」

人を好きになる……その好意自体が悪いもののような気がした。好きだった友人も先生もみんな離れていって、ついには好きだった親にすら冷たい視線で私を見て……。

「みんな……大嫌いだ」

好きな人たちが離れていくのが怖かった。

「うん、みんな何かあればすぐ兄様から離れてしまうんだからそうだよね」

「俺は人を好きになったりもうしない……」

でも、決して不幸になってほしいわけじゃない。

「兄様は一人でも強い人だから大丈夫だよ」

「俺は一人でなんでも……」

だから全てを一人で完璧に……せめて人の役に立てるように。

それが私に残されたただ一つの人と関われる方法だと子供ながらに精一杯の考えだったと思う。だから、あの日以降親にいくら公爵家を追い出されかけても公爵家の跡継ぎとして見捨てられない限りは勉学も運動も、剣も何もかも時間がある限り励んだ。

だが学年が上がり、周りの人も変わって過去のことが些細なことになると公爵家の肩書で人が寄るようになり、私はまた同じことになりかねないと、人嫌いとして全ての人間を遠ざけた。だが建前だったはずのそれは、媚びを売る人間が裏では私の陰口を言っている者がいたり、病気が悪化したリテールをなぜか地下に閉じ込めた両親への不信感も重なって、事実となっていっていた。

それもあって、いっそ一人でいるときの方が気が楽な上に、人といることの方が煩わしいというのが本気になっていた頃、第二王子殿下とシャロンの二人が笑い合う姿を見つけた。第二王子殿下もまた私と同じように人に囲まれやすくも、人を遠ざける傾向にあったのを何度か見かけていたため、高貴な貴族とはろくなのが集まらないのでそんなものなのかもしれない。そう思っていたが、私と違い話せる相手はいるのだとなんとなく他とどう違うのかとシャロンに視線を向けたのがシャロンに興味を持った最初だった。

「あんな貴族いただろうか……?」

だがシャロンを最初に見た時、高位な貴族は全て覚えていたが、下級貴族は数が多いのもあり、特に重要視してもいい政治的な意味合いで歴史ある貴族などくらいしか記憶していなかったため、目立つ部分のない男の子という印象程度に終わった。あえて言うならこうして王族に目がつく下級貴族がいる可能性があるなら、この機会に下級貴族の姓を一通り覚えるのも公爵家としては今後役にたつ場合もあるだろうと思ったくらいだ。

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