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3章悪役らしく気に入らない人を貶めるとしましょう

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「ふむ、いくら公爵の令嬢といえど伝えもなく急な訪問はいかがなものかと思いますが?」

証拠を持って訪れたデール公爵家。突然だったものの、本人がいてよかったというもの。いなければそれはそれでよかったのだけど。

明日は必ずいると調べがついてたことですし。

「今日はよい天気ですが、公爵様は随分と砂漠化が進んでいるようで………やはり時には雨といううるおいがなければ草原は夢の夢、いえ、砂漠化なら手遅れでしょうか………?」

公爵の嫌味を無視して天気の話をする。そう天気の話を。

「なっ!私の髪はまだある!」

たった数本あるだけなら潔くなくしてしまった方がよい気がするけれど、デール公爵的には髪は数本でも残しておきたいのね。

「私は天気のお話をしただけで公爵様の髪についてはこれっぽっちも話していませんわ」

なんて単語出した覚えはないもの。そうでしょう?

「は、ははっどうやら私の勘違いのようだ!それで急な訪問に謝罪もない非常識な令嬢様は何用で?」

わざとらしい笑いだこと。怒りで口がひきつっているわ。先程の話を掘り返しての嫌味返しだなんて幼稚!痛くもかゆくもない。

「謝罪すべきはデール公爵様ですわよ?」

「何?」

何故とばかりにこちらを睨むハゲ。全くそんな睨んでも不細工な顔がさらに醜くなるだけというのに。

「アーサ」

「はい」

後ろに控えていたアーサの名を呼べば出される資料。そしてにこりと笑って資料の一枚をとりハゲに見せる。

「こ、これは………っ貴様!」

「あらあら、貴様だなんて私にはココローノ・コエデルという名がありましてよ?髪だけでなく脳まで退化されまして?」

「ふん、笑っていられるのも今の内だ!貴様と侍女だけでのこのこと………何のつもりか知らんが、ただで帰れると思わぬことだな」

「まあまあ、怖いですわぁ。公爵様といえど同じ公爵家の娘に手を出されますの?」

「いいや、お前は誘拐されるのだよ。この資料にある人身売買を生業とする連中によってな」

本性を出すのが随分とお早いこと。髪について触れたからか怒りでおかしくなっているのかしら?

「この小娘らを捕まえろ!」

そう大声を出したとたん一斉に現れる使用人たち。こういうときのために用意された使用人。まさかこれが全て誘拐による違法人身売買の手のものだなんて真っ黒にも程があるわ。

こうして余裕でいられるのは犯罪のプロでも所詮は戦いは素人だろうから。

「ココローノ様に手を出すとは身の程知らずが多いようで」

暗殺特化といえど、アーサは正面戦闘ができないわけじゃない。寧ろ余程勘や気配に鋭い戦闘型の人間でないとまずアーサに勝つなんて人数を揃えようと無駄に等しい。

「うがぁっ」

「な、なんだ!?」

「ど、どこに!」

「た、たすけ………!」

気がつけばどこに行ったかわからぬままに次々と倒れる公爵が呼んだ使用人たち。全く容赦がないこと。あれはもう死んでいるわね。

「アーサ!証人もほしいわ!」

しかし、全員殺されては困る。そう思いっきり叫べば後ひとりの相手の背後からアーサーがすっと現れて相手の首にナイフを突き立てている。

「ひ、ひぃっ」

殺されかけていたことにその人物は真っ青で、同じくハゲた公爵もあの怒りながらも余裕そうな表情は消え失せていた。

さて、公爵様?絶望するにはまだ早くてよ?私をもっと楽しませてくださらないと、ね?
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