59 / 109
1章悪役令嬢の秘密
5~ヒロイン視点~
しおりを挟む
「すまない、やめるよう言っても知らないフリばかりして話にならなくて………」
「いえ……大丈夫です。こうして話を聞いてくれるだけで私は救われますから」
「だけど………」
ハート様に自作自演を頼まれた日からコーカイ様は私を心配してハート様を叱りに行くことが多々ある。その度罪悪感でいっぱいになりそうだけど、それがハート様の望みでコーカイ様の幸せになるならと協力者から抜け出せない。
ハート様がコーカイ様を想う気持ちはきっと私以上にあるからこそ本当にこれでいいのかと悩む毎日。
だって死が近いなんて私なら好きな人に支えてほしいし、傍にいてほしい。きっと不安で仕方ないと思うから。
なのにハート様は顔色の悪さを隠して死に際であるなんてことをコーカイ様に悟らせない。きっとお辛いだろうに。
あれから毎日ふと瞬間どこにもいないハート様を探せば必ずと言っていいほどにぐったりとして血を吐き出す姿がない日は少ない。
日に日に悪くなっているのが医師でもない私にだってわかる。あまりに酷い日は人のいない土ある地面を探して血を土で隠す日々。スコップなんて持ち歩かない私もハート様の手も当然土だらけとなる。洗っても爪に残る場合は手袋で手を隠したりして申し訳なさそうに私を見るハート様は今にも消えそうだった。
私だけが知っている。私だけがコーカイ様に伝えることができる。なのにハート様の意思に逆らえない。だってそのせいでハート様が生きる理由をなくしてしまわれたら?
自ら命を絶ってしまいそうで怖いのだ。私に命を救う手立てがあれば、私にその寿命を増やす知識があれば………なんて思ってしまうほどにコーカイ様とは違った意味でハート様に惹かれて仕方ない。
もし奇跡的にハート様のご病気が完治したのなら私は全てを話して自分の気持ちを抑えてハート様とコーカイ様の二人を応援するだろう。ハート様は信じていないが、コーカイ様は確かにまだハート様を想う気持ちがあるのは間違いない。
それはきっと私にはどうしようもない二人の過ごしてきた時間があるから。ただ、コーカイ様はハート様の変わりようや浮気を疑ってしまうために私に逃げてしまっているのだ。
その隙間に私への好意が生まれ始めている。
私は最低だ。なんだかんだ言いながらやはり好きな人には想われたいのかもしれない。ハート様ほどコーカイ様を想える自信もなくなんて勝手なんだろう。
「コーカイ様、私は貴方が好きです。その気持ちがあれば強くいられます」
「ヒロイン………僕も君が好きだよ」
コーカイ様のその気持ちに嘘はない。けど、コーカイ様気づいておられますか?貴方は私に好意を向ける度罪悪感と苦しさを告げるその表情が一瞬出ることに。
浮気による裏切りを理解してるからこそ出る表情。ハート様を想っていないならきっとそんな表情が無意識に出るはずもない。
ハート様が健康であったならばきっとこの二人は私が入る隙もないくらいに幸せな…………
「ヒロイン?泣いているの?どうしたんだい?」
「貴方に想われていることが幸せに思えてなんでか涙が止まらないのです」
私はずるくて最低な女。泣くまいと必死にハート様が身体の痛みに耐えているというのに私はどうしようもない罪悪感で涙している。
ハート様が本当に最低な人間であればよかったのに。あの日何故私はあんな人気のない場所に行ってしまったのか。
なんてことを思う自分が汚くて醜い化け物のように思えた。ハート様が健康ならと今の時点でありえもしないからこそそうできると思える自分は、本当にハート様が言うようにコーカイ様を幸せにできるのだろうか。
その日、また私はコーカイ様に嘘をついた。
「いえ……大丈夫です。こうして話を聞いてくれるだけで私は救われますから」
「だけど………」
ハート様に自作自演を頼まれた日からコーカイ様は私を心配してハート様を叱りに行くことが多々ある。その度罪悪感でいっぱいになりそうだけど、それがハート様の望みでコーカイ様の幸せになるならと協力者から抜け出せない。
ハート様がコーカイ様を想う気持ちはきっと私以上にあるからこそ本当にこれでいいのかと悩む毎日。
だって死が近いなんて私なら好きな人に支えてほしいし、傍にいてほしい。きっと不安で仕方ないと思うから。
なのにハート様は顔色の悪さを隠して死に際であるなんてことをコーカイ様に悟らせない。きっとお辛いだろうに。
あれから毎日ふと瞬間どこにもいないハート様を探せば必ずと言っていいほどにぐったりとして血を吐き出す姿がない日は少ない。
日に日に悪くなっているのが医師でもない私にだってわかる。あまりに酷い日は人のいない土ある地面を探して血を土で隠す日々。スコップなんて持ち歩かない私もハート様の手も当然土だらけとなる。洗っても爪に残る場合は手袋で手を隠したりして申し訳なさそうに私を見るハート様は今にも消えそうだった。
私だけが知っている。私だけがコーカイ様に伝えることができる。なのにハート様の意思に逆らえない。だってそのせいでハート様が生きる理由をなくしてしまわれたら?
自ら命を絶ってしまいそうで怖いのだ。私に命を救う手立てがあれば、私にその寿命を増やす知識があれば………なんて思ってしまうほどにコーカイ様とは違った意味でハート様に惹かれて仕方ない。
もし奇跡的にハート様のご病気が完治したのなら私は全てを話して自分の気持ちを抑えてハート様とコーカイ様の二人を応援するだろう。ハート様は信じていないが、コーカイ様は確かにまだハート様を想う気持ちがあるのは間違いない。
それはきっと私にはどうしようもない二人の過ごしてきた時間があるから。ただ、コーカイ様はハート様の変わりようや浮気を疑ってしまうために私に逃げてしまっているのだ。
その隙間に私への好意が生まれ始めている。
私は最低だ。なんだかんだ言いながらやはり好きな人には想われたいのかもしれない。ハート様ほどコーカイ様を想える自信もなくなんて勝手なんだろう。
「コーカイ様、私は貴方が好きです。その気持ちがあれば強くいられます」
「ヒロイン………僕も君が好きだよ」
コーカイ様のその気持ちに嘘はない。けど、コーカイ様気づいておられますか?貴方は私に好意を向ける度罪悪感と苦しさを告げるその表情が一瞬出ることに。
浮気による裏切りを理解してるからこそ出る表情。ハート様を想っていないならきっとそんな表情が無意識に出るはずもない。
ハート様が健康であったならばきっとこの二人は私が入る隙もないくらいに幸せな…………
「ヒロイン?泣いているの?どうしたんだい?」
「貴方に想われていることが幸せに思えてなんでか涙が止まらないのです」
私はずるくて最低な女。泣くまいと必死にハート様が身体の痛みに耐えているというのに私はどうしようもない罪悪感で涙している。
ハート様が本当に最低な人間であればよかったのに。あの日何故私はあんな人気のない場所に行ってしまったのか。
なんてことを思う自分が汚くて醜い化け物のように思えた。ハート様が健康ならと今の時点でありえもしないからこそそうできると思える自分は、本当にハート様が言うようにコーカイ様を幸せにできるのだろうか。
その日、また私はコーカイ様に嘘をついた。
0
あなたにおすすめの小説
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる