13 / 109
1章(真面目版)悪役令嬢の秘密
6
しおりを挟む
余命残り3ヶ月。学園卒業までに残り1ヶ月。
もう私は支えなくては歩けないまでに至った。だけどまだ杖なしに立つだけならできる。まだ大丈夫まだ大丈夫と貴重な週2回ある学園休みに屋敷の自室でベットに入りながら、自分に暗示をしていたところで珍しく父が訪ねてきた。
「レヴェリー、随分顔色が悪いな………。それに、痩せたか」
「死にかけですから」
今まで来なかった家族のひとり、父が訪ねてきた時点で簡単に察することができる。侯爵令嬢のあるまじき学園での行為がついにバレたのだと。
顔色が悪いのは当たり前だとばかりに笑いすらせず返せば父が気のせいか悲しそうに眉を下げた気がした。
「レヴェリー、学園で嫌なことでもあったか?」
「え?」
自分より低い身分の者をいじめた件について問い詰められるかと思っていただけに私を案じるその言葉に私は驚きを隠せなかった。
「その………レヴェリーがティア・パレン子爵令嬢をいじめていると噂がね。それが本当だとしてもそれはきっと私たちがレヴェリーと向き合わなかったせいだと思っている。今更かもしれない。だが、私たちはレヴェリーの味方となりたい」
「は………ははっ」
「レヴェリー?」
本当に今更過ぎてしばらく笑っていなかった私に笑いが込み上げる。決して幸せの笑顔にはほど遠い笑いが。
「私に会いたくない、私は生きてさえいればいい、侯爵にふさわしくあれ、婚約者に気に入られろと言ってきたお父様がどういう心変わりですか?」
身内に対してこんな反抗的になったのは初めてだ。死に際だからこそ私は今まで溜め込んできたものを出せているのかもしれない。
だけど決して涙だけは見せるものかと笑う口をぎゅっと閉じて父を睨む。やはり父が悲しげに眉を下げているように見えて仕方ない。これは幻覚、もしくは演技だろう。
心変わりが本当だとしても死にかけた今を見て今更同情でもしたのかもしれない。だけど、幼い頃から培ってきた心の傷を修復するにはもう時間なんてものはない。
何よりも今更修復なんてする気はないのだ。それは大事なものを増やしてしまうだけだから。結局心の傷を増やしてしまいかねない。
「違う、違うんだ。レヴェリー」
「聞きたくありません。もう十分望み通りに私は動いてきたつもりです。だから貴方たちに復讐してやろうと思います」
「レヴェリー………?」
「いじめているのは本当のことです。全てはロイエ様から婚約破棄されるためです。残念ですね。きっと今の私ではロイエ様も結婚はしたくないでしょう。婚約破棄………いえ、互いに了承の上ならば解消ですね。それも時間の問題。残念ですね、公爵家に縁を作れなくて」
途中血だまりが喉にあがりそうになったのを抑えてすらすらと言葉を並べ立てる。弱味など見せてたまるかと睨む目を緩めることなく。
「なん、だと………お前はロイエ・ナダム公爵子息が好きだったのでは?」
父の言葉にどきりとする。まさか私の気持ちがバレていたなんて知らなかったから。この人の前で私が表情を崩すようなことをしてこなかっただけに。
だけど、動揺を見せるわけにはいかない。
「何のことでしょう?大嫌いですわ、政略結婚で決められた婚約者なんて」
嘘まみれたその言葉に胸が痛んだのは無視して私は父に冷たい目を向けるのだった。
もう私は支えなくては歩けないまでに至った。だけどまだ杖なしに立つだけならできる。まだ大丈夫まだ大丈夫と貴重な週2回ある学園休みに屋敷の自室でベットに入りながら、自分に暗示をしていたところで珍しく父が訪ねてきた。
「レヴェリー、随分顔色が悪いな………。それに、痩せたか」
「死にかけですから」
今まで来なかった家族のひとり、父が訪ねてきた時点で簡単に察することができる。侯爵令嬢のあるまじき学園での行為がついにバレたのだと。
顔色が悪いのは当たり前だとばかりに笑いすらせず返せば父が気のせいか悲しそうに眉を下げた気がした。
「レヴェリー、学園で嫌なことでもあったか?」
「え?」
自分より低い身分の者をいじめた件について問い詰められるかと思っていただけに私を案じるその言葉に私は驚きを隠せなかった。
「その………レヴェリーがティア・パレン子爵令嬢をいじめていると噂がね。それが本当だとしてもそれはきっと私たちがレヴェリーと向き合わなかったせいだと思っている。今更かもしれない。だが、私たちはレヴェリーの味方となりたい」
「は………ははっ」
「レヴェリー?」
本当に今更過ぎてしばらく笑っていなかった私に笑いが込み上げる。決して幸せの笑顔にはほど遠い笑いが。
「私に会いたくない、私は生きてさえいればいい、侯爵にふさわしくあれ、婚約者に気に入られろと言ってきたお父様がどういう心変わりですか?」
身内に対してこんな反抗的になったのは初めてだ。死に際だからこそ私は今まで溜め込んできたものを出せているのかもしれない。
だけど決して涙だけは見せるものかと笑う口をぎゅっと閉じて父を睨む。やはり父が悲しげに眉を下げているように見えて仕方ない。これは幻覚、もしくは演技だろう。
心変わりが本当だとしても死にかけた今を見て今更同情でもしたのかもしれない。だけど、幼い頃から培ってきた心の傷を修復するにはもう時間なんてものはない。
何よりも今更修復なんてする気はないのだ。それは大事なものを増やしてしまうだけだから。結局心の傷を増やしてしまいかねない。
「違う、違うんだ。レヴェリー」
「聞きたくありません。もう十分望み通りに私は動いてきたつもりです。だから貴方たちに復讐してやろうと思います」
「レヴェリー………?」
「いじめているのは本当のことです。全てはロイエ様から婚約破棄されるためです。残念ですね。きっと今の私ではロイエ様も結婚はしたくないでしょう。婚約破棄………いえ、互いに了承の上ならば解消ですね。それも時間の問題。残念ですね、公爵家に縁を作れなくて」
途中血だまりが喉にあがりそうになったのを抑えてすらすらと言葉を並べ立てる。弱味など見せてたまるかと睨む目を緩めることなく。
「なん、だと………お前はロイエ・ナダム公爵子息が好きだったのでは?」
父の言葉にどきりとする。まさか私の気持ちがバレていたなんて知らなかったから。この人の前で私が表情を崩すようなことをしてこなかっただけに。
だけど、動揺を見せるわけにはいかない。
「何のことでしょう?大嫌いですわ、政略結婚で決められた婚約者なんて」
嘘まみれたその言葉に胸が痛んだのは無視して私は父に冷たい目を向けるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!
くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。
ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。
マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ!
悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。
少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!!
ほんの少しシリアスもある!かもです。
気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。
月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる