(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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1章(真面目版)悪役令嬢の秘密

8~ナダム公爵当主視点~

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「私の息子では力不足だったか………」

ホープ侯爵から告げられた婚約解消の件。グリーフ・ホープ侯爵は学園時代からの仲。だからこそ生まれながらにして命に限りができてしまった友人の娘の願いを叶えられるならと息子との婚約を了承した。

優しき息子なら真実を知らずとも彼の娘のよいパートナーとなるだろうと。きっと悲しませてしまうかもしれないし、責任を重く受け止めてしまうかもしれないが。

だが、きっと親の欲目というものが出てしまっていたのだろう。息子では力不足だったようだ。

それとも娘の方が限りある命に押し潰されてしまったのだろうか。最近は息子から婚約者の話を聞かなくなったとは思っていたし、婚約者の悪い噂を耳にするようになって嫌な予感はしていた。

だが、まさか婚約を解消したいほどに息子が嫌われていたとは。

『レヴェリー………レヴェリー嬢は僕にもったいないくらい愛らしくて守ってあげたい存在です』

いつだったか婚約してまもなくした頃にロイエが言った言葉。どうやら息子ではレヴェリー嬢を守るには弱すぎたのかもしれない。

やはりレヴェリー嬢の余命を教えるべきだっただろうか。だが、レヴェリー嬢について楽しそうに話すロイエを見ていると話すに話せなかった。これは私の人間としての弱さだろうか。

何はともあれ向こうがそうしてほしいなら私は叶えてやるべきだろう。

私は連絡がきた翌日に学園を休ませてロイエを呼び出した。何やら緊急事態かと険しい顔をするものだからどうしたものかと思ったがただ私は告げればいいだけだ。

「ロイエ、秘密裏にレヴェリー嬢との婚約を解消しなさい」

「え?」

ロイエの驚いて目を見開く姿に、まさか私から言われるとは思わなかったのだろう。元々は私がこれは絶対だとばかりに押し付けたような婚約だったのだから。

うまいようにいっていたから安心していたのだが………私の気のせいであったのだろう。どこか息子から驚きと共に安堵したようなそんな表情が見受けられた。

「ロイエ、私の我が儘ですまない」

「父上?」

決して息子を道具のように思ってはいたわけではない。ただ、少ない友人の娘レヴェリー嬢の幸せに加担してやりたかった。

たまたまレヴェリー嬢が息子に惹かれたかもしれないと聞いて協力してやりたいと息子の気持ちを無視し、レヴェリー嬢に確認すらせず強引にした結果が今なのだろうか。よりレヴェリー嬢を不幸にさせてしまったかもしれない。

ホープ侯爵は父親失格だと私の前で嘆いていた。私もまた父親失格かもしれない。望みが叶うならば短い期間でもレヴェリー嬢の義父となりたかった。

あの儚くとも笑顔の可愛らしい友人の娘の義父ちちおやに。
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