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模索した結果、そんなこと必要なかったとばかりにあれから陛下に事情を話頼めば謝罪と共にあっさりと殿下とは婚約解消され、幼い殿下にはレインとの婚約がなくなったことが伝えられた。また、殿下のお世話も好きにして構わないと言われたので私はその日、殿下を立派にすることを心に誓う。婚約を結局自ら解消したとはいえ殿下を想ってきた気持ちに嘘はないし、幼い殿下で自分を慰めたかったのかもしれない。

「レインは……ぼくをきらいになっちゃったのかな」

しょんぼりと落ち込む殿下に未来の姿はまだ見られない。そんな殿下に抱く必要もない罪悪感に駆られながらも、全ては未来の殿下のせいだしと思うがそれは正しく目の前の殿下に変わりないので……逆に罪悪感が増す……。

これは辛いものがある。

「殿下、私レインですが、殿下を嫌いではないですよ?」

まあ本人ですけどね!さすがにそれは言わない。殿下も信じられないだろうし、周囲も言わないよう口止めしている。さすがに今の殿下にわざわざ伝えるような人はいないと……思う。うん。

この頃の殿下は本当に一途で努力家で立派だったと思うし。

「ほんと?」

私の言葉にぱあっと笑顔を見せる殿下のなんと可愛いこと。この純粋さを持ったままなんとか育てられないものだろうか。でもそれはそれであのマリアンヌみたいなにたぶらかされそうで危険かな……。子育てって本当に難しい。

「はい、本当ですよ?」

「ふふ、ぼくレインだいすきっ!」

「あらあら」

なんと愛らしい……。でもこれはどちらかというと母親への愛だろうと抱きつく殿下を受け止めつつ抱き締め返す。まあ、さすがに私も今の年齢から見て幼い殿下も好きだけど、恋愛対象にはないかもしれない。

どちらかというと母性が強い。いや、まあ独身ですけど。

「レイン、ずっといっしょにいてね!」

「……はい」

それが叶うなら母親代わりでもいいかもしれない。そんなことを思いながら間を空けた返事をする。それは殿下次第の約束だから。

そしてふと思う。殿下が変わり始めたのは王妃様が亡くなってからだった気がすると。

最初こそ変わらなかったけれどだんだんと荒れて………。今の殿下は王妃様がもう亡くなっている事実を知っているのだろうか?ふと考えたそれに私は伝えるべきかとその日、頭を悩ませ翌日熱を出した。



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