悪役令嬢は100回目の自由な人生で死を望む

荷居人(にいと)

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1章自殺令嬢は死ねない

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「何故ですか?何故、シーニ嬢は私を………僕を遠ざけるんですか?」

本心から自分を否定しないでとばかりに問いかける殿下。別に殿下を否定しているわけでない。いや、否定していることになるのだろうか?

ただ私は罪を重ねることが怖いだけ。

だから知らぬ間に罪を繰り返す前に私は死にたい。存在が罪、生きる価値すらない私はきっとどこかで罪を………。

「旦那様!」

「騒がしいよ。今は殿下と………」

「ネムー様が!坊っちゃんがっ」

ノックもなしにドアを開けて大声をあげる使用人。父が咎めようとした言葉すら遮って言おうとする辺りかなりの焦りと戸惑いだとわかる。

そして出てきたのはネムーの名前。ひやりと背筋が凍るような寒気を覚えた。

「ネムーに!ネムーに何があったの!?」

「か、階段から落ちて、熱が、意識が!」

落ち着きのない使用人が何を言っているのか全くわからない。ただ階段から落ちるという言葉に嫌な予感しかしない。

「落ち着きなさい」

「だ、旦那様」

「シーニもだよ」

「お父様…………」

「殿下もすみません」

「いや、大事なご子息のことです。もし、必要なら私も力を貸しましょう」

「ありがとうございます」

優しい父だからこそ内心心配で仕方ないだろうに、この落ち着きはさすがというべきだろうか。それとも使用人や私が落ち着かないせいで逆に冷静になったのかもしれない。

ああ、落ち着かなくては。焦っても話が進まないだけだわ。

「お父様、殿下すみません。もう大丈夫です」

「うん、そうみたいだね。さあ、君も落ち着いたかい?」

「申し訳ございません。公爵家の使用人としてあるまじき失態です」

「それだけネムーを大事にしてくれていることがわかる。だけどこれからはどんなことにも冷静でいることを心掛けなさい」

「はい」

下手に咎めることなく注意だけで終わらせる父。使用人にも優しく、でもそれだけでは終わらせない父は人として尊敬できる方だ。

私は繰り返す人生で使用人に我が儘ばかりを言って労ることもお礼すら言えなかった。いや、言わなかった。

「で、ネムーがどうしたんだい?」

そしてようやく話が戻る。

「ネムー様が階段から落ちられまして、ネムー様と一緒にいたものが慌てて近寄ると高熱で声をかけても意識が戻らないのです」

「高熱?」

ネムーと会ったのは少し前。あの時熱なんかあっただろうか?いや、高熱なら手が触れていた時気づけたはずだ。

あの後急に熱があがるなんてことあるのだろうか?

「何か気になることでもあるのかな?シーニ」

「いや、私、殿下が来る前にネムーに会ったんですが熱はなかったように思いました」

「熱が出始めたばかりだったのかもしれないね」

「そう、なのでしょうか」

出始めなら気づかなかったかもしれない。でも、それはそれで………。

「シーニ、決して自分を責めてはいけない」

「は、い」

私の心の内を読んだかのように父に言われる。私は自分のことばかりでネムーを気にかけてやれなかった。これがだめだというのに。

ネムーは私を心配して来てくれたというのに。私だけが救われてネムーは今、意識が戻らない高熱で………。責めるなと言われたばかりなのに責められずにはいられない。

「殿下申し訳ないのですが………」

「私も心配です。ご一緒させていただいても?」

「はい」

「今ネムー様は医務室に医師様と奥様と共にいらっしゃいます」

その使用人の言葉と共に私たちは使用人の後ろに並んでついていく。ネムーが心配で仕方がない。

階段から落ちた時頭は打っていなかった?

熱は苦しい?

何故意識が戻らないの?

あらゆる心配の言葉が頭に浮かぶ。殿下のことすら薄らぐほどに弟のネムーが心配だ。

繰り返す人生ではいなかった人物だからこそ余計に。私が望んだ存在ということで神様から除外されようとしているのではないかと思ってしまう。

私のせいでネムーが死にさ迷っているのではないのだろうか。ネムーは私が死んで両親の希望となるために望んだ存在。

そんな望みで頼んだのが私だからこそ命を弄ぶなと神様からの怒りかもしれない。弄んだつもりはないし、自分のためだったかもしれないけどネムーは大事な私の弟なのだ。

ネムーの命をなくすくらいなら私の命を差し出します。生きる価値もない罪な命かもしれないけど、今日ばかりはその命に価値を見出だしたい。

「奥様、旦那様とお嬢様をお呼びいたしました」

「ええ………入って」

ようやく着いた先、ドアの向こうから母の衰弱したような声。きっと母も心配で仕方ないのがわかる。

全員で中に入った瞬間に見えるのは苦しそうに息をするでもなく目を閉じているネムーの姿。高熱なんて嘘ではないかと思えるその光景。近づいて頬を撫でればその熱さに驚く。

「この、熱さはなに………っ?」

火傷でもしそうなほどの熱。これが人間の体温なのだろうか?ネムーはまだ生きている?そう思ってしまうほどに熱く、何故息が整っているのか不思議なくらいだ。

「原因が全くわからないのです。申し訳ございません」

父に向けて医師が頭を下げる。医師もわからない高熱の原因と今の状況。

ネムーは一体どうしてしまったの?助かってほしいと私は願うことしかできないの?みんな同じ気持ちなのか雰囲気は重く悲しいものとなる。



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