【R-18】知らなかった情熱

runiko

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1.膝裏にはしる熱

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 他人から見た私は、まあまあ幸せに見えるだろう。大学時代に出会った彼と、就職してから3年で結婚。

子宝にも恵まれた。

 甘えん坊で手のかかる息子のヨウスケは昨年の春に無事入学を迎えた。

子育ての慌ただしさから平穏を取り戻したルリは、電車で2駅先のビジネスホテルで平日の日中に働くことにした。

 育児と家事に追われていた数年を経て、やっと取り戻した”仕事”。

元々事務で勤めていた経験を活かし、
予約確認やチェックイン準備に併せて、

フロントでの接客を主とした
程よく忙しいこのホテルはルリにとって
心地よい刺激を生む良き職場だった。

昨日はシフトを少し空けてもらい、美容院でカラーとカットを済ませた。

買ったばかりの新色の薄い桜色のネイルを塗って、

ルリはこのホテルで働き始めてから2度目の春を迎えていたーー。





息子と夫を送り出し、勤務開始は9時から。

ホテルの裏口を通り、従業員専用エリアに入る。

勤続2年目のパートともなれば、
慣れた足取りで更衣室に向かった。

白い薄手の張りがあるシャツに、黒いジャケットを羽織る。

それに、やや膝上のタイトな同色のスカートを合わせる。

身体のラインは少々拾うが、品が良く、知的に見えるこの制服は着心地も良い。

鎖骨よりやや下の黒髪に、ヘアオイルをつけて束ね、簡易的なシニヨンヘアを作る。

息子が帰ってくるまでの短い勤務時間にはこれくらいの結い方が跡もつきにくいし、合っている。

更衣室の出入り口横にある全身鏡でチェックしてから、今日も1日が始まる。

フロントに入ろうとした時、「ルリさん」と呼び止められた。

そこにはベテラン女性社員の大杉さんと、見覚えのない2人の青年が居た。

「ルリさんは昨日シフト入ってなかったから、紹介するね。昨日から入ってくれることになったアルバイトさん達。」




1人は180cmを越えているであろう背の高い青年。

胸板が厚く、何かスポーツをしているのだと容易に想像できる。

ツーブロックにピアスの穴…少しヤンチャそうな見た目と、大きな身長からか若干の圧力を感じる。

「池屋です、よろしくお願いします!」

白い歯を見せてにこりと笑った。

さわやかで意外にも人懐こい笑顔が可愛らしい。

(見た目は少し怖いけど、礼儀正しくて良い子そう。身体も鍛えてて、モテそうだなぁ…)

もう1人は眼鏡がよく似合う端正な顔立ちの青年。

少し長めの前髪と節目がちの表情がクールな印象だ。

「雪路です。お願いします。」

小さくお辞儀をして、眼鏡を直す。長く綺麗な指が目に入った。

(男の子だけど綺麗なお顔…!少し色っぽい感じで、知的な雰囲気だなぁ)


「2人は大学のお友達同士らしくて、タウン○ーク見て一緒に応募してくれたんだよ。まだ入ったばかりだから、慣れるまでしばらく日勤が多くなると思う。ルリさんよろしくね。」

夜勤シフトを終えた大杉さんと入れ替わるように別れ、池屋くんと雪路くん、3人でフロント業務を開始する。

新人2人を見ながらの仕事に不安はあったが、彼らは昨日で一連の流れを把握したのか、そこまでバタつくことはなかった。

チェックアウト時間のピークを過ぎれば、フロント前を通るお客様は殆ど居なくなった。


「池屋くん、雪路くん、まだ2日目なのに落ち着いてるね!覚えるの早くて助かるよ。」

「昨日めっちゃメモ取ったんす!」と、池屋くんは嬉しそうに笑った。

「鈴木さんにフォローしてもらえましたし」謙遜する雪路くんも照れたように微笑んだ。

(2人とも素直で可愛い!仕事も速いし。
全然タイプが違うけど、イケメン2人に挟まれてお仕事できて、私もなんか気分いいな…)

「あ、私ね、ここではルリさんで通ってるの。鈴木さんってもう1人男性のスタッフさん居るから!だから2人もルリさんって呼んでね」

2人はこくん、と揃って頷いた。



「てかルリさんって結婚してるんですね。指輪してるし。」

「うん、小学2年生の子どももいるよ。」

「「えっ」」

2人は驚いたようで、揃って声を上げた。

「まじすか!子ども!?ルリさん可愛いから全然そんなふうに見えないっすよ」

雪路くんも頷く。

(なんかちょっと嬉しいかも…?)






少し経つと、午後にチェックイン予定のお客様のキャリーケースが業者を通してフロントへ届けられた。

新幹線移動の際などに大きな荷物は前もって宿泊先に送ってしまい、
移動自体は身軽にしたいお客様は意外と多い。

業者の出入りが終わり、
再びフロントが落ち着きを取り戻した時、


池屋がふと、

「あれ?ルリさんストッキング電線してません?」

「えっ?どこ?」

ルリは足首のあたりを見るが、それらしき箇所は見当たらない。

「ここですよ、」

雪路がしゃがみ込み、ルリの足首に触れた。

「ひゃっ」

昼間のロビーに似つかない素っ頓狂な声が出てしまい、ルリは思わず口元を押さえた。



「声、エロ…」

池屋がぼそりとつぶやく。



「ご、ごめん。びっくりして。

さっきスーツケースを運んだ時引っ掛けちゃったかな…」

でてしまった声を誤魔化すように慌てて言葉を並べたルリ。


「あはは、伝線の場所わかりました?」

雪路は足首に触れたまま、ルリに問いかける。

心なしか、視線に熱を感じる。

「えっと…」

「ここっすよ」

今度は池屋が大きな体を折り曲げてしゃがみこみ、破れた箇所に人差し指を触れさせる。

「ひゃぁっ」

「またエロい声でてますけど…」


そう言いながら、池屋の指は

足首からそっと、ふくらはぎを通って、膝裏へ。

ゆっくりとすべるように指がのぼってゆく。

脚に息がかかりそうなほどの距離で、

まるで舐められるような視線を感じる。

ルリの足に伸びる伝線は、スカートの中に続いていた。



足首に触れたままだった雪路の指も、線を辿り始める。

優しくふくらはぎを撫で、膝裏へ。

「ちょ、ちょっと…っ」

2人の青年に脚をなぞられている…

これまで経験したことのない熱っぽい視線と、2本の指先を自分の下半身に感じて、なぜか息が上がってしまう。

雪路の指が膝裏を越え、太ももにするりと触れた。

思わず「あっ…」とか弱い声が出て、
ビクンと腰を揺らしてしまう。

池屋が耐えかねて、骨ばった指先をスカートの中に入れた時、




静寂を崩すように、電話のベルが鳴り響いた。

ルリは慌てて受話器を取る。宿泊利用予定がある旅行会社からの問い合わせだ。

正直頭は回っていなかったが、
それでも対応を続ける。

受話器を片手にそっと横に目をやると、
先ほどの情事は無かったかのように
池屋と雪路は自分の業務をこなしていた。



(さっきのは…一体…)


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