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2.首筋にかかる吐息
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バスルームから響く楽しげな声。
早めに帰宅した夫が、息子とお風呂に入ってくれているのだ。
ルリはふと、今日の池屋と雪路を思い出す。
彼らに触れられた、足首から太ももにかけての伝線の跡。まるでまだ触れられているかのように、熱が残っている。
あんなふうに誰かに触れられたのはいつぶりだろう。
夫との情事はもちろんある…
しかし長い付き合いの中で生まれた家族としての信頼は、いつのまにかそういった行為にも現れていて、どこか簡素化されてしまったように思う。
(まるで若い頃に戻ったみたい…)
セックスを覚えたばかりの若い頃。
相手に触れたくて、触れられたくて…そればかり考えている自分に気づき、必死で振り払う。そんな時代がルリにもあった。
池屋と雪路は、ルリの甘い声に合わせるように、反応を楽しみながら足に手を這わせていたように思う。
池屋のがっしりとした身体と
ごつごつと男らしい指先。
雪路の色っぽい視線と細く長い指先。
それが自分の膝裏をゆっくりと撫で、
太ももに、スカートの中に伸ばされかけた。
思い出すだけで、頬が熱くなる。
誰かに触られることなど、
もうこの先夫以外無いと思っていた…。
二十歳そこそこの
綺麗な顔をした青年たちが
“私を触りたい”
そう思ってくれたのだとしたら…。
妻として、母親としての役割が染み付いてしまったルリの脳内に
女として求められる悦びが再び芽生えかけていた。
もしも、
”あれ以上のこと” をされてしまったら…
私は一体どうするんだろう。
バスルームの扉が開き、
息子がパンツ姿でバタバタと走ってきた。
「お母さーん!僕のパジャマどこー?」
「えっ、ごめん!出し忘れてたかも」
慌てて息子のクローゼットに向かう。
「ママは慌てん坊だなぁ~」
「あはは」
夫と息子の声を後ろ姿で聞きながら、
日中の記憶を振り払う。
(きっとちょっとからかわれたんだ)
私には夫がいて、子どもがいる。
家庭を持つ主婦に、若い青年が手を出すなんて…からかわれたに決まっている。
明日のシフトも池谷と雪路と3人だが、
何事もなかったかのように過ごそう。
それが”大人”の対応だ。
息子にパジャマを渡しながら、
ルリはいつものように微笑んだ。
翌日--
通常より少し早く出勤したルリの元へ池屋と雪路が現れた。
「「おはようございます」」
「おはよう、今日もよろしくね!2人揃って出勤なんて、本当に仲良しだね」
「実は雪路がめちゃくちゃ朝弱くて!一限の日とか、毎回俺が起こしに行ってるんす」
「おい、言うな」
「近所だからってこき使いすぎですよね~」
ニコニコと人懐こく笑う池屋くん。
「お前が講義中昼寝してた時のノート、もう写させてやんねぇからな」
ジト目で嫌味を言う雪路くん。
(うん、大丈夫だ…)
気まずい態度をとられたらどうしようかと思っていたが、
昨日の出来事はまるで無かったかのように振る舞う2人に、ルリはほっと胸を撫で下ろした。
「さあ、今日もお仕事頑張ろうね!」
お昼を過ぎた頃、フロントの電話が鳴った。
「はい、かしこまりました。16日のご予約を17日に変更させていただきますね。お電話ありがとうございました。」
電話を切ると、
「ご宿泊の日程変更ですか?」
雪路くんが声をかけてきた。
「うん、そう。ネットでご予約された時に、日程の入力を間違えてしまったらしくて。」
「俺、日程変更の手続きはまだやったことないんですけど…」
「まだシフト3回目だったよね、大丈夫。フロントのPCで処理するの。やって見せるから池屋くんも一緒に見ててくれる?」
ルリはPCの正面に立つと、右に池屋、左に雪路が並び、3人でディスプレイを覗き込む。
「まず、ネット予約の履歴を確認して…」
カーソルを動かしながら、操作の説明をしていく。
「…いいにおい」
雪路がぼそっとつぶやいた。
「本当だ、ルリさん香水とかつけてます?」
池屋が首筋にぐっと顔を近づけてきた。
(ち、近…っ!)
思わず息を呑んでしまったのを、誤魔化すように言葉を続けた。
「こっ…香水はつけてないよ!」
雪路も鼻先を首筋に寄せる。
「でもすごいいい匂い…」
「あ、髪を束ねる時にヘアオイルつけてるから、それ…かも」
2人の吐息が首筋をかすめ、ルリは思わず息を呑んだ。
「髪の毛からだったんすね、あ、でもなんか首もめっちゃいい匂いなんですけど」
「うん、ヘアオイルの香りじゃなくて、ルリさんがいい匂いなのかも」
気づけば2人はフロントのデスクに手を置き、ぐっと乗り出すようにルリの首筋に顔を近づけていた。
「ふ、ふたりとも近すぎ…っ」
ルリはたまらず声を上げる。
「首、弱いんですか?」
わざと首筋に息が当たるように、雪路が問いかける。
温度を感じ、思わず鳥肌が立ってしまう。
「え、耳真っ赤…かわい…」
池屋の口元がにやりと緩み、
鼻先をつんと首に触れさせた。
「ひあ…っ」
「ルリさん…またエロい声出ちゃってますよ」
「ルリさん、可愛い。」
池屋と雪路はルリの反応を楽しむように
吐息混じりに鼻先を首筋に沿わせた。
次第に2人は唇を
ルリの首筋ギリギリに近づけ始める。
触れるか、触れないか…
まるで左右両方から攻められているよう。
もどかしすぎる距離に
ルリは息が上がってしまっていた。
(だ、だめ…また変な声出ちゃう…っ)
早めに帰宅した夫が、息子とお風呂に入ってくれているのだ。
ルリはふと、今日の池屋と雪路を思い出す。
彼らに触れられた、足首から太ももにかけての伝線の跡。まるでまだ触れられているかのように、熱が残っている。
あんなふうに誰かに触れられたのはいつぶりだろう。
夫との情事はもちろんある…
しかし長い付き合いの中で生まれた家族としての信頼は、いつのまにかそういった行為にも現れていて、どこか簡素化されてしまったように思う。
(まるで若い頃に戻ったみたい…)
セックスを覚えたばかりの若い頃。
相手に触れたくて、触れられたくて…そればかり考えている自分に気づき、必死で振り払う。そんな時代がルリにもあった。
池屋と雪路は、ルリの甘い声に合わせるように、反応を楽しみながら足に手を這わせていたように思う。
池屋のがっしりとした身体と
ごつごつと男らしい指先。
雪路の色っぽい視線と細く長い指先。
それが自分の膝裏をゆっくりと撫で、
太ももに、スカートの中に伸ばされかけた。
思い出すだけで、頬が熱くなる。
誰かに触られることなど、
もうこの先夫以外無いと思っていた…。
二十歳そこそこの
綺麗な顔をした青年たちが
“私を触りたい”
そう思ってくれたのだとしたら…。
妻として、母親としての役割が染み付いてしまったルリの脳内に
女として求められる悦びが再び芽生えかけていた。
もしも、
”あれ以上のこと” をされてしまったら…
私は一体どうするんだろう。
バスルームの扉が開き、
息子がパンツ姿でバタバタと走ってきた。
「お母さーん!僕のパジャマどこー?」
「えっ、ごめん!出し忘れてたかも」
慌てて息子のクローゼットに向かう。
「ママは慌てん坊だなぁ~」
「あはは」
夫と息子の声を後ろ姿で聞きながら、
日中の記憶を振り払う。
(きっとちょっとからかわれたんだ)
私には夫がいて、子どもがいる。
家庭を持つ主婦に、若い青年が手を出すなんて…からかわれたに決まっている。
明日のシフトも池谷と雪路と3人だが、
何事もなかったかのように過ごそう。
それが”大人”の対応だ。
息子にパジャマを渡しながら、
ルリはいつものように微笑んだ。
翌日--
通常より少し早く出勤したルリの元へ池屋と雪路が現れた。
「「おはようございます」」
「おはよう、今日もよろしくね!2人揃って出勤なんて、本当に仲良しだね」
「実は雪路がめちゃくちゃ朝弱くて!一限の日とか、毎回俺が起こしに行ってるんす」
「おい、言うな」
「近所だからってこき使いすぎですよね~」
ニコニコと人懐こく笑う池屋くん。
「お前が講義中昼寝してた時のノート、もう写させてやんねぇからな」
ジト目で嫌味を言う雪路くん。
(うん、大丈夫だ…)
気まずい態度をとられたらどうしようかと思っていたが、
昨日の出来事はまるで無かったかのように振る舞う2人に、ルリはほっと胸を撫で下ろした。
「さあ、今日もお仕事頑張ろうね!」
お昼を過ぎた頃、フロントの電話が鳴った。
「はい、かしこまりました。16日のご予約を17日に変更させていただきますね。お電話ありがとうございました。」
電話を切ると、
「ご宿泊の日程変更ですか?」
雪路くんが声をかけてきた。
「うん、そう。ネットでご予約された時に、日程の入力を間違えてしまったらしくて。」
「俺、日程変更の手続きはまだやったことないんですけど…」
「まだシフト3回目だったよね、大丈夫。フロントのPCで処理するの。やって見せるから池屋くんも一緒に見ててくれる?」
ルリはPCの正面に立つと、右に池屋、左に雪路が並び、3人でディスプレイを覗き込む。
「まず、ネット予約の履歴を確認して…」
カーソルを動かしながら、操作の説明をしていく。
「…いいにおい」
雪路がぼそっとつぶやいた。
「本当だ、ルリさん香水とかつけてます?」
池屋が首筋にぐっと顔を近づけてきた。
(ち、近…っ!)
思わず息を呑んでしまったのを、誤魔化すように言葉を続けた。
「こっ…香水はつけてないよ!」
雪路も鼻先を首筋に寄せる。
「でもすごいいい匂い…」
「あ、髪を束ねる時にヘアオイルつけてるから、それ…かも」
2人の吐息が首筋をかすめ、ルリは思わず息を呑んだ。
「髪の毛からだったんすね、あ、でもなんか首もめっちゃいい匂いなんですけど」
「うん、ヘアオイルの香りじゃなくて、ルリさんがいい匂いなのかも」
気づけば2人はフロントのデスクに手を置き、ぐっと乗り出すようにルリの首筋に顔を近づけていた。
「ふ、ふたりとも近すぎ…っ」
ルリはたまらず声を上げる。
「首、弱いんですか?」
わざと首筋に息が当たるように、雪路が問いかける。
温度を感じ、思わず鳥肌が立ってしまう。
「え、耳真っ赤…かわい…」
池屋の口元がにやりと緩み、
鼻先をつんと首に触れさせた。
「ひあ…っ」
「ルリさん…またエロい声出ちゃってますよ」
「ルリさん、可愛い。」
池屋と雪路はルリの反応を楽しむように
吐息混じりに鼻先を首筋に沿わせた。
次第に2人は唇を
ルリの首筋ギリギリに近づけ始める。
触れるか、触れないか…
まるで左右両方から攻められているよう。
もどかしすぎる距離に
ルリは息が上がってしまっていた。
(だ、だめ…また変な声出ちゃう…っ)
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