夢世界(オルト=フィーリア)の救世(くぜ)巫女

志野木 英里

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夢見る少女の始まりの物語

第6話

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 砂利のざらざらとした感触が手のひらと頬から伝わる。まぶたをゆっくりとあける。私は本当にアメリアになっただということを改めて自覚する。不思議な現象に感心していたのもつかの間貫かれたであろう腹部から急激な熱と痛みを感じだ。

「痛っ!……こういう時の定番って痛みもなく傷が治るもんじゃないの?」

 傷が癒えているのはわかったが痛みまでは取り除かれなかったようだ。消えるまで唇を強く噛みしめる。これが殺される痛み。とてつもなく痛い。

「アメリアはこの痛みとともに私に縋った……この程度は耐えないと!」

 息も絶え絶えになり脂汗を流しながらもなんとか痛みが消えるまで耐えた。息を整えながらゆっくりと前を見る。さっきの聖獣との邂逅は一瞬の出来事であったようで黒いモヤが去ろうとしている寸前だった。

「これもお約束ってことなのかな……」

 よく見てみるとモヤが奪った首飾りが淡く光輝いている。掴んでいるモヤの手がその光によってわずかばかり薄くなっているように見える。小さな光であっても聖獣の力のようだ。

「あの光……アメリアがさっき言霊を紡いだから?」

 アメリアが残してくれた希望。この程度でモヤを倒すことはできないだろうが首飾りと杖を取り返すだけの隙を作ることができるだろう。

「我……こいねがう……願いたてまつる……」

 呟くように契約のための言霊を紡ぐ。気づかれないようにほふく前進で油断している黒いモヤにゆっくりと近づく。その最中首飾りの淡い光は徐々に輝きを増し、同時にモヤの掴む手も光によって薄くなっていく。

「先ほどより輝きが増している!?なぜだ!もう奴は――」

 突然の出来事に驚きふと倒れているはずのところを見る。だが……いない。確かに殺したはずの敵が。次の瞬間追突されたような衝撃でその場に倒れ光り輝く首飾りと杖を落とす。私はすぐさま落ちた首飾りと杖を手にし身につける。暖かい。ただの熱を帯びているようではなく人から与えられた思いのような暖かさ。そんなものが全身を包むように広がっていく。

「貴様!確実に殺したはず……なぜ生きている!」

 モヤが忌々しさと怒りを孕んだ双眸で睨み付けてくる。何とか立ち上がり消えた腕から先を見ては殺気を向けてくる。

「奇跡ってやつかな。」

 持ちうる勇気を総動員させて何とか余裕があるようにニヤリとしながら挑発をする。アメリアならこういうかもしれないという思いと恐怖が胸の中で渦巻いていく。いっぱいいっぱいでパニック状態になりそうだ。だけどどうにか深呼吸して気持ちを落ち着かせる。そして杖を支えにしてしゃがみ祈るように再び言霊を紡ぐ。イメージするように……今から契約するその対象を。

「させん!」

 モヤが駆け出す。再び殺すために。だが、さらに輝きは増していき近づくだけでもモヤの体は薄くなるばかりか霧散しかけていく。

「大いなる女神の使徒たる巫女の末裔たる我アメリアが希う!」

 輝きは増していき辺り一面が光で白く染まる。モヤの低く唸るような痛みからくる悶え苦しむ声が響く。

「今ここに新たに契りを結び給え!ユニコルニス!」

 光が収まるとアメリアのそばに白銀の体を持つ鋭き角を頭部に備えた馬がいななきとともに現れる。それこそがアメリアの中で璃乃亜りのあに語り掛けていた聖獣その物であった。
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