13 / 20
玉音放送
しおりを挟む
2週間後。
リリィとドナルドとオーティスが、真珠湾基地の広い部屋に立っている。他にも大勢の兵士が立っている。一番前にラジオが置いてあり、昭和天皇の声が流れている。リリィが言う。
「何言ってるのか、わかんなーい」
ドナルドが同意する。
「うん、わかんないな。古語みたいだ」
オーティスが言う。
「わかんないけど、「重大放送」っつって天皇が直接話してるんだから、戦争が終わったんだろ?」
外で「ドーン」という音がした。みんな窓に駆け寄って外を見ると、昼なのに花火が上がっている。リリィが言う。
「あー、やっぱり戦争終わったんだね。あれ、祝砲でしょ? 街に行ってみようよ」
3人でホノルルの街に出てみると、楽しそうな群衆がいた。自動車は渋滞し、バスは超満員だが、みんな楽しそうで、叫び、歌い、踊っている。ドナルドが言う。
「あー、やっと終わったんだねー」
リリィが同意する。
「うん。長かったねぇ」
オーティスが言う。
「いやいや、ボクらはまだ終わってないよ。これから占領の仕事があるだろ?」
リリィが言う。
「あ、そっか。これで東京行けるね。あんたも、きっと京都行ける」
オーティスが両手をあげて日本語で言う。
「バンザーイ」
リリィとドナルドも両手をあげて日本語で言う。
「バンザーイ」
一週間後。
リリィとドナルドとオーティスが輸送機の中に窮屈そうに座っている。リリィが窓の外に何かを見つける。ドナルドとオーティスに手で知らせる。窓の外には雪を抱いた富士山が見える。
リリィとドナルドとオーティスが海軍のジープに乗ってデコボコ道を走っている。なんだか、みんなグッタリしている。運転席のオーティスが言う。
「輸送機は早かったけど、乗り心地悪かったなー」
うしろの席のドナルドが同意する。
「うん。ひどかった」
助手席のリリィが言う。
「乗り心地はそこそこだけど時間のかかる船と、どっちがいいのか、難しいとこねー」
3人がちょっとグッタリした様子でジープでデコボコ道を進む。リリィが言う。
「でも、ほら、もうすぐ憧れの東京よ」
オーティスが尋ねる。
「ここどこ?」
リリーが携帯地図をとり出す。
「うーんと、ヤマトね。カナガワケンの」
オーティスが言う。
「カナガワケンか。東京までどの位だろ?2時間以上かかるの?」
リリィが考える。
「うーん、1時間半くらい?」
オーティスがため息をつく。
「ふー。1時間半も、このデコボコ道かぁ」
3人の乗ったジープが、舗装されていない道路を走っている。道の両側に、爆撃を受けたあとの、壊滅した家屋が並んでいる。オーティスは、ジープを止める。3人でジープを降りて、魔法瓶からコーヒーを注いで、立ち飲みを始める。ドナルドが言う。
「なんか、東京に近づくほど、何にもなくなってくな」
オーティスが同意する。
「ほんとだ。空襲が激しかったんだなぁ」
道の向かいから、子供が二人ジッと見ている。リリィが気付いてほほえみかける。子供たちもほほえみ返す。メリーがジープの中のカバンをまさぐって、チョコレートをとり出す。それを子供たちに差し出すと、子供たちがすごいスピードで近づいてきてチョコレートをつかみ、またすごいスピードで立っていた場所に戻り、チョコレートを割って、2人それぞれに珍しそうにチョコレートを眺めてから口に入れる。
「うめー」
「うめー」
ひとしきりチョコレートに感激したあと、やっと気付いたようにリリィに向かって一礼した。リリィはほほえんでいる。
「かわいいわねー。お腹空いてるのかな?」
少し離れたところから、オーティスの声がする。
「おかーさーん、ここはどこですか?」
リリィがオーティスを見て、顔をしかめる。
「ずいぶん気安いわね。「おかーさん」なんて。急に外人の、それも兵士に話しかけられたら、お母さん、困るじゃない」
見ると、オーティスはお母さんと楽しそうに話している。お母さんが声をあげて笑う。リリィがビックリする。
「あれ? 楽しそう」
ドナルドが言う。
「ボクたちにはよくわからないけど、ここはオーティスの故郷なんだよ。やっと故郷に平和が訪れたのを、オーティスは誰かと喜びたいんじゃないかな?」
リリィがジトっとドナルドを見ている。ドナルドがそれに気付く。
「な、なに?」
リリィが笑う。
「ドナルドって鋭いわね。その通りだね」
オーティスは、お母さんと楽しそうに話をしている。
リリィとドナルドとオーティスが、真珠湾基地の広い部屋に立っている。他にも大勢の兵士が立っている。一番前にラジオが置いてあり、昭和天皇の声が流れている。リリィが言う。
「何言ってるのか、わかんなーい」
ドナルドが同意する。
「うん、わかんないな。古語みたいだ」
オーティスが言う。
「わかんないけど、「重大放送」っつって天皇が直接話してるんだから、戦争が終わったんだろ?」
外で「ドーン」という音がした。みんな窓に駆け寄って外を見ると、昼なのに花火が上がっている。リリィが言う。
「あー、やっぱり戦争終わったんだね。あれ、祝砲でしょ? 街に行ってみようよ」
3人でホノルルの街に出てみると、楽しそうな群衆がいた。自動車は渋滞し、バスは超満員だが、みんな楽しそうで、叫び、歌い、踊っている。ドナルドが言う。
「あー、やっと終わったんだねー」
リリィが同意する。
「うん。長かったねぇ」
オーティスが言う。
「いやいや、ボクらはまだ終わってないよ。これから占領の仕事があるだろ?」
リリィが言う。
「あ、そっか。これで東京行けるね。あんたも、きっと京都行ける」
オーティスが両手をあげて日本語で言う。
「バンザーイ」
リリィとドナルドも両手をあげて日本語で言う。
「バンザーイ」
一週間後。
リリィとドナルドとオーティスが輸送機の中に窮屈そうに座っている。リリィが窓の外に何かを見つける。ドナルドとオーティスに手で知らせる。窓の外には雪を抱いた富士山が見える。
リリィとドナルドとオーティスが海軍のジープに乗ってデコボコ道を走っている。なんだか、みんなグッタリしている。運転席のオーティスが言う。
「輸送機は早かったけど、乗り心地悪かったなー」
うしろの席のドナルドが同意する。
「うん。ひどかった」
助手席のリリィが言う。
「乗り心地はそこそこだけど時間のかかる船と、どっちがいいのか、難しいとこねー」
3人がちょっとグッタリした様子でジープでデコボコ道を進む。リリィが言う。
「でも、ほら、もうすぐ憧れの東京よ」
オーティスが尋ねる。
「ここどこ?」
リリーが携帯地図をとり出す。
「うーんと、ヤマトね。カナガワケンの」
オーティスが言う。
「カナガワケンか。東京までどの位だろ?2時間以上かかるの?」
リリィが考える。
「うーん、1時間半くらい?」
オーティスがため息をつく。
「ふー。1時間半も、このデコボコ道かぁ」
3人の乗ったジープが、舗装されていない道路を走っている。道の両側に、爆撃を受けたあとの、壊滅した家屋が並んでいる。オーティスは、ジープを止める。3人でジープを降りて、魔法瓶からコーヒーを注いで、立ち飲みを始める。ドナルドが言う。
「なんか、東京に近づくほど、何にもなくなってくな」
オーティスが同意する。
「ほんとだ。空襲が激しかったんだなぁ」
道の向かいから、子供が二人ジッと見ている。リリィが気付いてほほえみかける。子供たちもほほえみ返す。メリーがジープの中のカバンをまさぐって、チョコレートをとり出す。それを子供たちに差し出すと、子供たちがすごいスピードで近づいてきてチョコレートをつかみ、またすごいスピードで立っていた場所に戻り、チョコレートを割って、2人それぞれに珍しそうにチョコレートを眺めてから口に入れる。
「うめー」
「うめー」
ひとしきりチョコレートに感激したあと、やっと気付いたようにリリィに向かって一礼した。リリィはほほえんでいる。
「かわいいわねー。お腹空いてるのかな?」
少し離れたところから、オーティスの声がする。
「おかーさーん、ここはどこですか?」
リリィがオーティスを見て、顔をしかめる。
「ずいぶん気安いわね。「おかーさん」なんて。急に外人の、それも兵士に話しかけられたら、お母さん、困るじゃない」
見ると、オーティスはお母さんと楽しそうに話している。お母さんが声をあげて笑う。リリィがビックリする。
「あれ? 楽しそう」
ドナルドが言う。
「ボクたちにはよくわからないけど、ここはオーティスの故郷なんだよ。やっと故郷に平和が訪れたのを、オーティスは誰かと喜びたいんじゃないかな?」
リリィがジトっとドナルドを見ている。ドナルドがそれに気付く。
「な、なに?」
リリィが笑う。
「ドナルドって鋭いわね。その通りだね」
オーティスは、お母さんと楽しそうに話をしている。
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる