19 / 64
第一章
18.
しおりを挟む「…とりあえずはマリール。そのある意味危険な石は仕舞ってくれ。」
「むしろ捨てちゃっていいんじゃないの? ばっちいし。」
「そうね。マリーちゃん捨てちゃいなさい。そんなばっちいもの。」
「割れてるしなー。ばっちいし。」
「…でもさ、龍人族って龍に変化出来るんだろ? ならそれも龍血石と胆礬になるんじゃないの?」
「「「「!?」」」」
トートの言葉に、「捨てなさい。ばっちいから。」と言っていたバルド達は、揃ってその可能性に気付かされる。
龍人族は龍が人と子を成して生まれたと言われる、いわばハーフだ。だが龍の能力は始祖から脈々と受け継がれ、多種族と交わっても生まれるのは龍人のみである。
ではその能力を受け継いでいるのならば、龍人の血と涙も。
「ちょっとやだ、トートったら。そんなこと気付いちゃったら、龍人が乱獲されちゃうじゃないの。」
「いや、無理だろう。龍人族は俺の祖国でも太刀打ち出来ないぞ。」
「鬼神族も?」
「ザンザ帝国の連中が暇になると腕試しに戦闘を仕掛けに行ってるが、負けか引き分けだ。勝った事は一度も無い。」
「ザンザ帝国民血の気多すぎるよ…。」
「弱いのには仕掛けないのだから良いじゃないか。」
「「「ええー…。」」」
「うーん? 取り合えずまた仕舞っておきますね。」
「マリーちゃん…繋がってるって言う別の場所に仕舞ってちょうだい。お願い。」
「はーい。」
捨てて良いものなのか微妙になって来たので、マリールは割れた魔石を丁寧に包んで再び巾着に入れ、ポケットに仕舞う。だがすぐにアエラウェに悲しそうな瞳で言われてしまったので、「除菌してあるのに~」と言いながら、大人しく背負い鞄に仕舞った。
そんなわけでマリールが再び魔石を手に入れるには、どこぞの龍人が尿路結石になるのを待つしかない事が分かってしまったのだった。
「そんなわけで、すみませんがまた火加減お願いします、旦那様!」
「あ、ああ…。」
「手も洗いましょ。ね?」
「はい!」
食欲も衰退するほどの話に脱線してしまったが、酒の肴を作るべく、マリールは再びバーカウンター内に引っ込む。
先程と同じように芋を揚げ、肉を再び切ってもらうのも面倒なので腸詰肉を焼くことにした。
酒をちびちび飲みながらバルドが火を操ってくれるので、味見と称してマリールが焼けた腸詰肉を「あーん」と良いながら食べさせる。
牡丹餅の時とは違い、躊躇いなく自分の手から食べてくれるバルドに、マリールは嬉しそうに笑った。なんだか本当に新婚さんみたいだ。
「旦那様のご実家、挨拶に是非行きたいです!!」
「ああ、マリールが出国する時には俺も一緒に行こう。」
「きゃー! 新婚旅行ですね…!!」
マリールとバルドがいちゃいちゃしながら酒の肴をテーブルへ運ぶ。
それをホビット達は行儀悪く頬杖をつきながら、砂狐のような白けた顔で見守った。
「…これから暫く、このいちゃいちゃを見るのかぁ。親子にしか見えないけど。」
「俺、実家戻って嫁探そうかな…。」
「いいなぁ。お嫁さん。」
「ホビット族の女の子ってどうなの?」
「「「めちゃくちゃ気が強い」」」
「あらぁ。」
話題はホビット族の女が如何に気が強いかで盛り上がり、では他の種族は…と男達が盛り上がっていると、筋肉のせいで太過ぎる程盛り上がったバルドの太腿に、ぽふりと軽い何かが落ちた。
旅の疲れと目まぐるしい今日一日の出来事は、魂は老齢でも8歳という身体には相当な負担だったのだろう。
バルドはすっかり眠ってしまったマリールを椅子から抱き上げ膝に乗せ、自分の胸にマリールの頭を凭れさせて、落ちないように腕で抱え込む。
「…親熊が小熊抱き込んでるみたいっすね。」
「なんかすんげーほのぼのする…。」
「俺も子供欲しいなぁ…。」
「そうねぇ…。マリーちゃん目覚めてバルドが居なかったら暴れそうだから、今夜は摂り合えずバルドの部屋でいいわよね?」
「ああ。悪いがアエラウェ、マリーに浄化かけてやってくれ。」
「はいはい。ついでにバルドにもかけてあげるから、早く寝かせてあげてちょうだい。あ、解ってると思うけど、手は出しちゃだめよ?」
「出すか!」
アエラウェが光魔法を使うと、マリールとバルドの身体が淡く光る。
マリールの旅で汚れていた服も身体も、ついでにバルドも汚れ一つ無くなり、きれいさっぱり輝いた。
マリールの人形のような白い肌は、浄化魔法によってさらに透き通るような白さを取り戻していて、そのやわらかそうな肌に、アエラウェは堪らずぷにぷにとマリールの頬を突つき出す。
「んまぁー! 綺麗にしたマリーちゃんのほっぺた、もっちもちのぷっくぷくね!」
「…んぅー」
「やめろ。起きるだろうが。」
「あん。バルドの代わりに私が抱っこして寝たら駄目かしら…?」
「起きた時に俺が居たほうが良いと、アエラウェが言ったのだろうが…。」
アエラウェの未練がましい手を軽く払い落とし、バルドはマリールを起こさないように、ゆっくりと立ち上がり2階へと向かう。
寝ているマリールを起こさないように静かに移動する様は、厳つい鬼岩顔からは想像できない程の慎重さだ。
「先に寝るから戸締りは頼んだぞ。」
「はーい。良い夢をね。」
「「「おつっすー。」」」
階段を登るバルドの背が見えなくなるまで見守って、残されたアエラウェとホビット達は盛大に息を吐き出した。
彼等にもマリールを巡る今日の出来事は、爆笑したり驚いたりと、相当目まぐるしいものだったようだ。
「…俺等も早めに寝ますかねぇ。」
「アエラウェさーん、空き部屋泊めてー。」
「いいわよ。ベッドメイキングは自分でやって頂戴ね。料金は正規額きちんと取るけど。」
「…その分差し引いてくれたりは…いえ、なんでもないっす。」
冒険者ギルドの2階には、バルドとアエラウェの個室と執務室以外にも、金がない駆け出しの冒険者が泊まれるように部屋がいくつかある。個室も大部屋も一週間銅貨2枚だ。
その中の大部屋の鍵をホビット達に投げて渡しながら、アエラウェは忘れずに言った。女房役とも言える副ギルド長は、大変しっかりしているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる