魔法使いの弟子、のはず ~その依頼、魔法を使わず解決します~

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呪われた畑

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「――……うちの畑がおかしいんです」

「ふむ。具体的にはどうおかしいんじゃ?」

「農家として作物を育て始めたのは去年からです。初年度は上手くいったのに、今年は雑草が異様に多く、それでいて作物の成長が悪く、原因不明の悪臭もするように……もしや呪われているのでしょうか」

 最初こそぎこちなかったものの、状況を説明するうちにパウロの口は滑らかになっていきました。



 十二年前、都会に憧れる若者だったパウロは、農場を継がずに美容師になりました。
 地元を離れて町で充実した日々を送っていましたが、旅先で両親が亡くなってしまい、故郷に戻って遺された土地を守ることにしたのです。

「子どもの頃は親の手伝いをする程度だったので、知識もなにもなかったけど、地元に戻る決意をしてからは勉強し直して、真面目に取り組んでいました。それなのに、こんなことになるなんて……」

 去年も今年も、天候に大きな違いはありません。
 初年度に失敗して、二年目に改善ならまだしも、逆とはおかしな話です。
 好青年代表のようなジョンの友人なだけあり、膝の上で拳を握るパウロも洒落てはいるものの実直そうな男です。

「農業とはかなり畑違いじゃが、美容師の仕事に未練はなかったのか?」
「師匠。今、上手いこと言おうとしました?」
「たまたまじゃい。話の腰を折るでない」

「その、ラファエロ様が疑問に思われるのも当然です。昔は『一日五人くらいの客さんとお喋りしながらする仕事なんて最高じゃないか!』とか『イメージ通りの髪型にして喜ばれたり、イメージチェンジのお手伝いができるなんていい仕事だなあ!』なんて思ってました……」

「うむ。見事なまでに過去形じゃな」

「一日中立ちっぱなし。客がひっきりなしに来店するから食事は不規則で、隙間時間にサンドイッチを早食い。作業の合間に物陰で水分補給する毎日、トイレのタイミングすら自由にならない。この先もずっとこうやって生きていくのかと思ったら、ふと空しくなりまして……」

「わかるぅ! わしにはわかるぞ、その気持ち! 世の中には飲み物を片手にのんびり仕事している人もいると思うと、やっとられんよな!」

「そうなんです! たしかに実家の農業は定休日なんてものはなかった。その代わりに休憩時間は好きな時に、好きなだけとれたし、働く時間だって自由だった!」

 意気投合する二人に、ジョンとミカエルは置いてけぼりをくらいました。

 人口が百人に満たない村で、読書を嗜む人物は限られています。
 ジョンの店は基本的に閑古鳥が鳴いているので、彼は本の修復や掃除をして、それこそ飲み物を片手にのんびり働いているのです。

 ミカエルの他に、村にはもう一名読書熱心な人物がいます。
 彼らがたった二人で年間の貸し出し目標を達成してしまうので、ジョンはノルマに追われるどころか、本を読みながら店番するだけで良いのです。
 祖父が亡くなった際、押しつけられるように継いだ店でしたが、ジョンは今の生活に満足していました。
 裕福な暮らしはできませんが、静かな場所で丁寧に暮らすのが性に合っていたのです。

 ミカエルの方は言わずもがな。
 就職経験のないお子様なので、社会人の苦悩など雲の上の話です。
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