9 / 50
呪われた畑
9
しおりを挟む
「……うむ。一件落着しそうなところに水を差すようで気がひけるんじゃが、畑を戻すことも忘れちゃおらんだろうな」
「それに関しては、原因が判明したので、魔法を使わなくても解決できると思います」
「な、なんでじゃ。魔法でパパッとやってしまった方が楽じゃろ」
「師匠。今までの話を聞いてましたか? 農業というのは経験が重要なんです。今回の件だって、パウロさんが完熟堆肥の実物を見たことがあれば避けられた話です。パパッと解決したら、パウロさんの為にならないんですよ。堆肥焼けとか、この先も色々と問題が出てくるでしょう。彼が今すべきなのは、農業について相談できる相手を作ること、資料では無く本物の土と向き合うことです」
「そ、そうだな! 今生えている雑草は抜けばいいんだろ。そこまで広い畑でもないし、俺も協力するよ。それに姉妹の取引先は、長年堆肥を使っている農家なんだろう。取引に同行した際に相談すればアドバイスしてもらえるんじゃないか?」
ラファエロが提唱していた方法を思い出したジョンは、全力でミカエルに同意しました。
遅まきながらパウロも「バレなきゃいいんじゃ」と、違法行為を提案されていたことを思い出して「お隣さんと一緒に頑張ります!」と宣言しました。
「ええー。繊細なコントロールを身につけるいい練習になると思ったんじゃがのぅ」
「師匠。まず魔法ありきでことを成そうとするのは、どうかと思います」
「いや、おぬし魔法使いの弟子じゃからな。まず魔法ありきじゃなきゃいかんじゃろ」
「魔法は確かに便利ですし、できることの幅も広い。でも最適解ではありません。最期にものを言うのは知識と経験です」
「え。なんでわし、弟子に説教されてんの? おかしくない?」
「なんでもかんでも魔法で解決なんて、安直な考えは止めましょう」
「わしの半生全否定!」
「え? 師匠、まだ命の蝋燭が半分も残ってるつもりだったんですか? 人族の寿命が何年か知ってます?」
「弟子がひどい。わしなんかした?」
辛口すぎる応酬に、見かねたパウロが「ここまで来ていただいたことですし、報酬はどうしましょうか」と口を挟みました。
ミカエルは問題の原因を突き止めましたが、当初の依頼とは違う形で決着してしまいました。
「そうだな。姉妹の前に、二人の髪を切るというのはどうだろう。ミカエルの仕上がりを見せれば、お前がどんな腕前か証明できるだろうし」
ジョンが提案しました。
「そうですね。参考までに、お二人は普段どこで髪を切っているんですか?」
二人とも元が良いのでそれっぽく見えますが、プロ目線だとちょっとな、という仕上がりです。
「自分で切っとるわい」
「師匠に切ってもらってます」
即答する二人にパウロは納得しました。どうりで長さや、シルエットにガタつきがあるはずです。
「毛先の状態が珍しいですね。何用の鋏で切っているんですか?」
パウロはミカエルの絹糸のような銀髪をひとすくいして、毛先を観察しました。
専門の鋏でないのは確定だとしても、鋏というより鋭利な刃物と説明された方ががしっくりくる切り口です。
「風魔法でパパッとじゃ」
「は?」
「ちゃんと丁寧にやっとるぞ。ブロッキングというんじゃろ。拘束(バインド)した髪の毛の束をいくつか作って、スパッと風の刃(ブレード)で切れば一瞬じゃ」
ラファエロの説明に、ジョンとパウロは絶句しました。
とある国の英雄が、息子の頭の上に載せた林檎を弓矢で射貫くように命じられたという逸話がありますが、目の前の男は、それと同等かそれ以上に怖ろしいことを定期的にやっていると悪びれも無く言っているのです。
「嘘でしょ。サーカスのナイフ投げより、危険なことしてるじゃないですか」
「おいミカエル、正直に言ってくれ。お前平気なのか?」
「目を閉じて、素数を数えていれば終わるので大丈夫です」
「それを平気とは言わない! ラファエロ様、せめて鋏を使いましょう」
「鋏よりも魔法の方が慣れとるんじゃ」
「なんでもかんでも魔法で済ませるのはダメです!」
ミカエルに続いて、ジョンにも否定されたラファエロなのでした。
「それに関しては、原因が判明したので、魔法を使わなくても解決できると思います」
「な、なんでじゃ。魔法でパパッとやってしまった方が楽じゃろ」
「師匠。今までの話を聞いてましたか? 農業というのは経験が重要なんです。今回の件だって、パウロさんが完熟堆肥の実物を見たことがあれば避けられた話です。パパッと解決したら、パウロさんの為にならないんですよ。堆肥焼けとか、この先も色々と問題が出てくるでしょう。彼が今すべきなのは、農業について相談できる相手を作ること、資料では無く本物の土と向き合うことです」
「そ、そうだな! 今生えている雑草は抜けばいいんだろ。そこまで広い畑でもないし、俺も協力するよ。それに姉妹の取引先は、長年堆肥を使っている農家なんだろう。取引に同行した際に相談すればアドバイスしてもらえるんじゃないか?」
ラファエロが提唱していた方法を思い出したジョンは、全力でミカエルに同意しました。
遅まきながらパウロも「バレなきゃいいんじゃ」と、違法行為を提案されていたことを思い出して「お隣さんと一緒に頑張ります!」と宣言しました。
「ええー。繊細なコントロールを身につけるいい練習になると思ったんじゃがのぅ」
「師匠。まず魔法ありきでことを成そうとするのは、どうかと思います」
「いや、おぬし魔法使いの弟子じゃからな。まず魔法ありきじゃなきゃいかんじゃろ」
「魔法は確かに便利ですし、できることの幅も広い。でも最適解ではありません。最期にものを言うのは知識と経験です」
「え。なんでわし、弟子に説教されてんの? おかしくない?」
「なんでもかんでも魔法で解決なんて、安直な考えは止めましょう」
「わしの半生全否定!」
「え? 師匠、まだ命の蝋燭が半分も残ってるつもりだったんですか? 人族の寿命が何年か知ってます?」
「弟子がひどい。わしなんかした?」
辛口すぎる応酬に、見かねたパウロが「ここまで来ていただいたことですし、報酬はどうしましょうか」と口を挟みました。
ミカエルは問題の原因を突き止めましたが、当初の依頼とは違う形で決着してしまいました。
「そうだな。姉妹の前に、二人の髪を切るというのはどうだろう。ミカエルの仕上がりを見せれば、お前がどんな腕前か証明できるだろうし」
ジョンが提案しました。
「そうですね。参考までに、お二人は普段どこで髪を切っているんですか?」
二人とも元が良いのでそれっぽく見えますが、プロ目線だとちょっとな、という仕上がりです。
「自分で切っとるわい」
「師匠に切ってもらってます」
即答する二人にパウロは納得しました。どうりで長さや、シルエットにガタつきがあるはずです。
「毛先の状態が珍しいですね。何用の鋏で切っているんですか?」
パウロはミカエルの絹糸のような銀髪をひとすくいして、毛先を観察しました。
専門の鋏でないのは確定だとしても、鋏というより鋭利な刃物と説明された方ががしっくりくる切り口です。
「風魔法でパパッとじゃ」
「は?」
「ちゃんと丁寧にやっとるぞ。ブロッキングというんじゃろ。拘束(バインド)した髪の毛の束をいくつか作って、スパッと風の刃(ブレード)で切れば一瞬じゃ」
ラファエロの説明に、ジョンとパウロは絶句しました。
とある国の英雄が、息子の頭の上に載せた林檎を弓矢で射貫くように命じられたという逸話がありますが、目の前の男は、それと同等かそれ以上に怖ろしいことを定期的にやっていると悪びれも無く言っているのです。
「嘘でしょ。サーカスのナイフ投げより、危険なことしてるじゃないですか」
「おいミカエル、正直に言ってくれ。お前平気なのか?」
「目を閉じて、素数を数えていれば終わるので大丈夫です」
「それを平気とは言わない! ラファエロ様、せめて鋏を使いましょう」
「鋏よりも魔法の方が慣れとるんじゃ」
「なんでもかんでも魔法で済ませるのはダメです!」
ミカエルに続いて、ジョンにも否定されたラファエロなのでした。
18
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる