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姿なき呪い
私は悪くない 後編(ロベルトside)
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「待ってくれ。マリアは、まだミス・グリーンと私の関係は知らないんだろう?」
「ああ。身近な人物に裏切られていたと知ったら、ショックを受けるだろうからな」
側にいた年上の女性が父親と男女の関係だったなんて、思春期の娘には酷な話です。
知らせずに始末をつけられるなら、それにこしたことはありません。
「チャンスをくれ」
「おや、愛しのミス・グリーンは守ってやらなくていいのか?」
「それは……」
ここで勢いに任せて動いてしまえば、相手の思うつぼです。
ロベルトはぐっと唇をかみしめました。
*
妻の部屋を出たロベルトは、その足で愛する人の元へ向かいました。
「無力な私を許してくれ」
「旦那様の立場を知っていながら、愛する気持ちを止められなかった私も同罪です」
ミス・グリーンは、自分を守れなかった男を責めることなく寄り添いました。
「罪深いのは私だ。ほとぼりが冷めるまで待たせることになるが、必ず君を救うと約束する」
こんなに健気な女性を切り捨てて知らんふりすることなど、ロベルトにはできません。
だからといって二人一緒に追い出されては、苦しい生活を送ることになるでしょう。
今は我慢の時です。
「ならば奥様の信頼を取り戻さなければなりませんね」
「ああ。あの女に傅くのは癪だが、君のためだと思えば耐えられる」
「奥様の容態はいかがですか?」
急に話題が変わったことにロベルトは戸惑いました。
「そんな大したものじゃないよ。単なる風邪さ。もう若くないのに、昔のように徹夜したり予定を詰め込んで働いていたから、いつもより症状が重いだけだ」
「――飲まれている薬はわかりますか?」
どんな薬を処方されたかは、診察の明細書にかかれているので簡単に調べられます。
「君は薬師だったな。やはりそういうことに関心があるのか?」
「私たちの未来のために、できることがないかと思いまして……」
いつもと同じ声、いつもと同じ笑み。
治療の手助けをしてポイントを稼ぐものだと思い込んだロベルトは、ミス・グリーンの言葉に素直に従いました。
*
ロベルトは嫌な記憶を振り払うと、自分に言い聞かせるように呟きました。
「私は悪くない……」
容態が悪化して、妻が亡くなるまではあっという間でした。
後からじわじわと、もしかしてという思いがロベルトを侵食しました。
怖ろしくてミス・グリーンに確認することもできず、ただ彼女がロベルトに対しては献身的に尽くしてくれているのでそれでよしとしました。
仕組みはわかりませんが、もしミス・グリーンの指示が妻の寿命を縮める行為だとしても、そこまで彼女を追い詰めたのは妻です。
相手を排除しようとして返り討ちにあっただけ。自業自得です。
何よりロベルトの行動が原因であれば、自分が実行犯になってしまいます。
ミス・グリーンは「日陰の身で構わない。単なる秘書としてで良いから側にいたい」と、惜しみない愛を捧げてくれています。
ロベルトのことをこんなにも深く愛してくれる女性がいたでしょうか。
彼女を手放してはいけない。守らなくてはいけない。
すべては二人の未来のために――
*
しかし妻の死後、ロベルトの身には異変が起きました。
日中は謎の体調不良、夜は無念の死を迎えた妻に責められる夢。
妻が魔力持ちだったとは聞いていませんが、もしかしたら死の瞬間何らかの能力が発動したのかもしれません。
「お前はもう死んだんだ。とっとと消えてくれ――!」
頭を抱えるロベルトの姿を、扉の隙間から冷ややかに見る人物がいました。
「肝の小さい男だこと」
呟くように吐き捨てたのは、ロベルトの最愛――ミス・グリーンでした。
「ああ。身近な人物に裏切られていたと知ったら、ショックを受けるだろうからな」
側にいた年上の女性が父親と男女の関係だったなんて、思春期の娘には酷な話です。
知らせずに始末をつけられるなら、それにこしたことはありません。
「チャンスをくれ」
「おや、愛しのミス・グリーンは守ってやらなくていいのか?」
「それは……」
ここで勢いに任せて動いてしまえば、相手の思うつぼです。
ロベルトはぐっと唇をかみしめました。
*
妻の部屋を出たロベルトは、その足で愛する人の元へ向かいました。
「無力な私を許してくれ」
「旦那様の立場を知っていながら、愛する気持ちを止められなかった私も同罪です」
ミス・グリーンは、自分を守れなかった男を責めることなく寄り添いました。
「罪深いのは私だ。ほとぼりが冷めるまで待たせることになるが、必ず君を救うと約束する」
こんなに健気な女性を切り捨てて知らんふりすることなど、ロベルトにはできません。
だからといって二人一緒に追い出されては、苦しい生活を送ることになるでしょう。
今は我慢の時です。
「ならば奥様の信頼を取り戻さなければなりませんね」
「ああ。あの女に傅くのは癪だが、君のためだと思えば耐えられる」
「奥様の容態はいかがですか?」
急に話題が変わったことにロベルトは戸惑いました。
「そんな大したものじゃないよ。単なる風邪さ。もう若くないのに、昔のように徹夜したり予定を詰め込んで働いていたから、いつもより症状が重いだけだ」
「――飲まれている薬はわかりますか?」
どんな薬を処方されたかは、診察の明細書にかかれているので簡単に調べられます。
「君は薬師だったな。やはりそういうことに関心があるのか?」
「私たちの未来のために、できることがないかと思いまして……」
いつもと同じ声、いつもと同じ笑み。
治療の手助けをしてポイントを稼ぐものだと思い込んだロベルトは、ミス・グリーンの言葉に素直に従いました。
*
ロベルトは嫌な記憶を振り払うと、自分に言い聞かせるように呟きました。
「私は悪くない……」
容態が悪化して、妻が亡くなるまではあっという間でした。
後からじわじわと、もしかしてという思いがロベルトを侵食しました。
怖ろしくてミス・グリーンに確認することもできず、ただ彼女がロベルトに対しては献身的に尽くしてくれているのでそれでよしとしました。
仕組みはわかりませんが、もしミス・グリーンの指示が妻の寿命を縮める行為だとしても、そこまで彼女を追い詰めたのは妻です。
相手を排除しようとして返り討ちにあっただけ。自業自得です。
何よりロベルトの行動が原因であれば、自分が実行犯になってしまいます。
ミス・グリーンは「日陰の身で構わない。単なる秘書としてで良いから側にいたい」と、惜しみない愛を捧げてくれています。
ロベルトのことをこんなにも深く愛してくれる女性がいたでしょうか。
彼女を手放してはいけない。守らなくてはいけない。
すべては二人の未来のために――
*
しかし妻の死後、ロベルトの身には異変が起きました。
日中は謎の体調不良、夜は無念の死を迎えた妻に責められる夢。
妻が魔力持ちだったとは聞いていませんが、もしかしたら死の瞬間何らかの能力が発動したのかもしれません。
「お前はもう死んだんだ。とっとと消えてくれ――!」
頭を抱えるロベルトの姿を、扉の隙間から冷ややかに見る人物がいました。
「肝の小さい男だこと」
呟くように吐き捨てたのは、ロベルトの最愛――ミス・グリーンでした。
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