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第12話 動揺
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「聖剣の乙女様をお連れしました」
女官の声がけとともに重厚な扉が開かれた。
仕方なしにおずおず中に入ると、待っていた面々が一斉にアメリを見やってくる。
「あの、みなさん、お待たせしました……」
竜騎士の鎧を身に着けたフランツが、誰よりも早くぴゅうと口笛をふいた。
アメリの視線が無意識にロランを探す。
目が合った瞬間、ロランの顔が険しくなった。そんな気がして、アメリの胸がちくりと痛んだ。
期待していたわけではなかったが、恥ずかしさよりも罪悪感のような、重たい気持ちが芽生えてくる。
入り口で身の置き場がないようにしているアメリに、笑顔のサラが近寄ってきた。
「アメリさん、今日は少し雰囲気が違いますね。とても綺麗です」
「はぁ、それはどうも」
少しどころかもはや別人レベルだろう。詐欺メイクと言ってもいいと、アメリ自身は思っていた。
対してサラは化粧など一切していない。身に着けている服も、飾り気のない神官の長衣だった。
「サラさんはお化粧とかしなくていいんですか?」
「わたしは神職者ですから。華美な装いは不要です」
それでもサラは元々美しい顔立ちだ。
並んで立つとアメリのケバケバしさが、悪目立ちするように感じられた。
「アメリ、なかなかいいんじゃない?」
値踏みするように武闘家のマーサがアメリの周りをぐるりと歩いた。
普段は化粧っ気のない彼女も、今日は美しい刺繍が施された武道服を着こなしている。
それでもアメリに比べれば控えめだ。これから王前に立つに相応しい装いだった。
「うんうん、こういう派手めの化粧、アメリに似合うって前から思ってたのよ」
「でも濃すぎると言うかなんというか……」
「何言ってんの。そのくらいじゃないと負けちゃうって」
「負ける? って、何にですか?」
「アメリのおっぱいに決まってんでしょ。そんだけの乳の持ってんだもん。化粧も今くらいド派手にしとかないと、顔が霞むってもんよ」
ぶふっとフランツが吹きだして、真っ赤になったアメリはとっさに胸元を腕で隠した。
「マーサさん! なんてこと言うんですか!」
「何よ、サラ。本当のことだし別にいいでしょ? ね、ヴィルジール」
「なんで僕に振るのさ。ここはロランの意見を聞かないと」
ヴィルジールが大袈裟に黒マントごと手を広げると、一同の視線がロランに集まった。
大きなため息をつき、苛立ったようにロランは立ち上がった。
「くだらない。下品な話に俺を巻き込まないでくれ」
「えー、アメリの前だからってカッコつけちゃって」
「そうだぞ、ロラン。勇者として聖剣乙女に賞賛の言葉くらいかけたらどうだ」
「そんな指図を受けるいわれはない」
吐き捨てるように言うと、ロランはアメリを見もしないでひとり部屋を出て行ってしまった。
自分の存在自体が下品と言われたように思えて、アメリはぷるぷるの唇を噛みしめる。
「アメリさん……ロランの態度は気にしない方がいいわ」
「そうさ、ロランはアメリの変わりように動揺しちゃってるだけだしね」
「ああ、アレだな。よくいるんだよ。好きなオンナに冷たくする男がな」
「ウケる! ロラン、意味分かんないんだけどっ」
「いいんです……みなさん、気を使わせてすみませんでした」
勇者にどう思われようとアメリには関係ない。
そう思うのに、アメリの心はどうしようもなく沈んでしまった。
「まったく、ロランのヤツ、アメリにこんな顔させやがって。素直になれないチェリーボーイかよ」
「そうよねぇ。さっきだってはぐれたアメリを血相変えて探しに行ってたクセに」
「それはわたしがいないとみんなが困るからって……」
「えー、ロランってば、そんなことアメリに言ったの?」
頷くと、ヴィルジールはやれやれと肩をすくめた。
「女心が分からないのはモテすぎる弊害ってヤツかな?」
「勇者ってだけでほっといても女どもが寄って来るからなぁ」
「あんたたちだって似たようなもんじゃないの」
そう言うマーサも人気が高い。
「俺は節操なく手を出したりしない。浮気はしない主義だしな」
「安心して。僕もサラひと筋だから」
「寝言は寝てから言ってください」
満面の笑顔で手を取ってきたヴィルジールを、サラが無表情で冷たく払いのけた。
自分から話題が逸れて、アメリは内心息をつく。
これから王様に挨拶しに行くのだ。ロランのことなど気にしている場合ではなかった。
「そろそろ時間ですね。わたしたちも行きましょう」
サラのひと声で、ロランの後を追って謁見の広間へと向かった。
女官の声がけとともに重厚な扉が開かれた。
仕方なしにおずおず中に入ると、待っていた面々が一斉にアメリを見やってくる。
「あの、みなさん、お待たせしました……」
竜騎士の鎧を身に着けたフランツが、誰よりも早くぴゅうと口笛をふいた。
アメリの視線が無意識にロランを探す。
目が合った瞬間、ロランの顔が険しくなった。そんな気がして、アメリの胸がちくりと痛んだ。
期待していたわけではなかったが、恥ずかしさよりも罪悪感のような、重たい気持ちが芽生えてくる。
入り口で身の置き場がないようにしているアメリに、笑顔のサラが近寄ってきた。
「アメリさん、今日は少し雰囲気が違いますね。とても綺麗です」
「はぁ、それはどうも」
少しどころかもはや別人レベルだろう。詐欺メイクと言ってもいいと、アメリ自身は思っていた。
対してサラは化粧など一切していない。身に着けている服も、飾り気のない神官の長衣だった。
「サラさんはお化粧とかしなくていいんですか?」
「わたしは神職者ですから。華美な装いは不要です」
それでもサラは元々美しい顔立ちだ。
並んで立つとアメリのケバケバしさが、悪目立ちするように感じられた。
「アメリ、なかなかいいんじゃない?」
値踏みするように武闘家のマーサがアメリの周りをぐるりと歩いた。
普段は化粧っ気のない彼女も、今日は美しい刺繍が施された武道服を着こなしている。
それでもアメリに比べれば控えめだ。これから王前に立つに相応しい装いだった。
「うんうん、こういう派手めの化粧、アメリに似合うって前から思ってたのよ」
「でも濃すぎると言うかなんというか……」
「何言ってんの。そのくらいじゃないと負けちゃうって」
「負ける? って、何にですか?」
「アメリのおっぱいに決まってんでしょ。そんだけの乳の持ってんだもん。化粧も今くらいド派手にしとかないと、顔が霞むってもんよ」
ぶふっとフランツが吹きだして、真っ赤になったアメリはとっさに胸元を腕で隠した。
「マーサさん! なんてこと言うんですか!」
「何よ、サラ。本当のことだし別にいいでしょ? ね、ヴィルジール」
「なんで僕に振るのさ。ここはロランの意見を聞かないと」
ヴィルジールが大袈裟に黒マントごと手を広げると、一同の視線がロランに集まった。
大きなため息をつき、苛立ったようにロランは立ち上がった。
「くだらない。下品な話に俺を巻き込まないでくれ」
「えー、アメリの前だからってカッコつけちゃって」
「そうだぞ、ロラン。勇者として聖剣乙女に賞賛の言葉くらいかけたらどうだ」
「そんな指図を受けるいわれはない」
吐き捨てるように言うと、ロランはアメリを見もしないでひとり部屋を出て行ってしまった。
自分の存在自体が下品と言われたように思えて、アメリはぷるぷるの唇を噛みしめる。
「アメリさん……ロランの態度は気にしない方がいいわ」
「そうさ、ロランはアメリの変わりように動揺しちゃってるだけだしね」
「ああ、アレだな。よくいるんだよ。好きなオンナに冷たくする男がな」
「ウケる! ロラン、意味分かんないんだけどっ」
「いいんです……みなさん、気を使わせてすみませんでした」
勇者にどう思われようとアメリには関係ない。
そう思うのに、アメリの心はどうしようもなく沈んでしまった。
「まったく、ロランのヤツ、アメリにこんな顔させやがって。素直になれないチェリーボーイかよ」
「そうよねぇ。さっきだってはぐれたアメリを血相変えて探しに行ってたクセに」
「それはわたしがいないとみんなが困るからって……」
「えー、ロランってば、そんなことアメリに言ったの?」
頷くと、ヴィルジールはやれやれと肩をすくめた。
「女心が分からないのはモテすぎる弊害ってヤツかな?」
「勇者ってだけでほっといても女どもが寄って来るからなぁ」
「あんたたちだって似たようなもんじゃないの」
そう言うマーサも人気が高い。
「俺は節操なく手を出したりしない。浮気はしない主義だしな」
「安心して。僕もサラひと筋だから」
「寝言は寝てから言ってください」
満面の笑顔で手を取ってきたヴィルジールを、サラが無表情で冷たく払いのけた。
自分から話題が逸れて、アメリは内心息をつく。
これから王様に挨拶しに行くのだ。ロランのことなど気にしている場合ではなかった。
「そろそろ時間ですね。わたしたちも行きましょう」
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