【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

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第16話 討伐再開

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 魔王討伐の旅が再開されて、アメリもこの生活に随分となじんできていた。
 魔物による被害の情報を集めつつ、街や村に立ち寄りながら魔王城を目指していく。
 依頼された魔物退治を行うことも多いため、なかなかまっすぐ進まない旅の工程だ。今日も何とか魔物の群れを薙ぎ払って、ようやく宿屋に辿り着いた。

「今夜は案外まともな宿ね。あたし硬いベッドはもうこりごりよ」
「ここのところ安宿が続いたからな。まぁ、それでも野宿よりはマシってもんだ」

 マーサとフランツは宿の交渉係だ。ふたりは旅の経験が豊富で、こういったことに慣れているらしい。
 日によって部屋数も変わってくる。
 勇者一行として宿で優遇されることも多いが、大概アメリはサラと同じ部屋になることがほとんどだった。
 部屋割りが決まってそれぞれが部屋へと散らばっていく。アメリはやはりサラと一緒の部屋だ。

「聖剣の乙女」

 部屋の手前でロランに呼び止められる。

「何か?」
「今日も特に怪我はないか?」
「ええ。何かあったらサラさんに見てもらうのでご心配なく」
「ああ、そうしてくれ」

 それだけ言うと、ロランは部屋に引っ込んだ。
 このやり取りは毎日のことだった。

「よかったわ。ロラン、最近はきちんとアメリさんのことを大事にしているみたいですね」
「別にそういうわけでは……わたしは勇者の剣を持ってるってだけですし」

 ロランが話しかけてくるのは、朝の出発時と宿屋に着いたときの一日二回で、アメリの体調を伺うときだけだ。
 剣の運搬係が怪我をしては、足手まといになり兼ねない。単純にそれを心配しているだけだろう。
 証拠に、その時以外はアメリに対して、常によそよそしいロランだった。


 翌朝、近くの森へ魔物退治へにいくことになった。
 村人の話ではかなりの数の魔物がいるとのことだ。

「今回は狼型の魔物らしい。俺が先頭を剣で行く」
「取りこぼしたヤツは俺に任せてくれ」
「残りはあたしの鉄拳でとどめを刺すわ」
「わたしとヴィルジールは後方で援護射撃しつつ、アメリさんのことをお守りしますね」

 地形を見ながら、効率のいい役割分担で作戦を練っていく。
 アメリの仕事はロランに勇者の剣を渡すことと、怪我をしないようサラたちの後ろに隠れていることだけだ。

「僕の炎獄魔法を使えばきっと一瞬だよ? うっかり森ごと焼いちゃうかもだけど」
「絶対にやめてください!」

 サラの声が響いたのと同時に、獣の唸り声が茂みの奥から聞こえてきた。

「お出ましだな」
「聖剣の乙女、来い!」

 手を差し伸べてくるロランに、一目散に駆け寄った。
 このときばかりはロランの動きも乱暴だ。二の腕を掴まれて、噛みつくように口づけられる。
 一刻を争う事態なので、アメリも文句など言っていられない。
 いつものように聖剣を手渡すと、アメリは脱兎のごとく後方へと舞い戻った。

「アメリさん! 早くこちらへ」

 サラに防護壁を張ってもらって、アメリは目と耳を塞いで戦闘が終わるのをひたすら待った。
 ロランたちの怒号が響き、魔物狼が次から次へと地に伏していく。

 一番大きな群れの主が、最後のあがきとばかりにロランに飛びかかった。
 鋭い牙が腕をかすめ、それでもロランは無事に主にとどめを刺した。

「ロラン、大丈夫か!?」
「ああ、フランツ、問題ない」

 言いながらロランは血のりの付いた剣を拭った。
 ほどなくして光に包まれた聖剣が、粒子となってアメリの胸に吸い込まれていく。

「終わったな……」

 息をつき、一行は村へと舞い戻った。


「聖剣の乙女、今日も怪我はしなかったか?」
「はい、わたしは大丈夫です。それよりも勇者、最後に牙が……」
「いや、かすっただけだ。たいした怪我はしていない」

 腕を隠すようにひっこめると、ロランはそそくさと部屋に戻ってしまった。

「アメリさん、本当に怪我はないですか?」
「はい。それよりも勇者が……」
「ロランは自己管理ができる人です。必要があればアメリさんにきちんと言ってきますよ」
「そう、ですよね……」

 しかし先ほどのロランはどこか腕を庇っているように見えてならなかった。
 ロランは極力怪我をしないようにすると言ってくれたが、その手前少々の傷は我慢するつもりでいるのではないのだろうか。

 一度ベッドに入ったアメリだったが、あの日のロランの傷が目に浮かんだ。
 ずっと治らない傷を長年抱えていたと聞き、なんだか心配で眠れなくなってしまった。

「やっぱりもう一度聞きに行こう」

 問題がなければそれでいい。
 サラを起こさないよう、アメリはそっと部屋を出た。

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