ふたつ名の令嬢と龍の託宣【全年齢版】

古堂 素央

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第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣

第19話 嘘つきな騎士 - 前編 -

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【前回のあらすじ】
 フーゲンベルク家でルチアと親睦を深めるリーゼロッテ。すっかり打ち解けた様子によろこびつつも、ルチアが明るくなった理由はカイに恋をしているからだと気づきます。
 公務でやってきたカイとルチアを会わせようと画策するも、事はうまく運ばなくて。日増しに元気がなくなるルチアに、リーゼロッテは胸を痛めます。
 一方、さっぱり訪れないカイに不満を募らせ、リーゼロッテに対して不敬な態度を取ってしまうルチア。それをたしなめたベッティに怒りの矛先ほこさきが向けられて。カイの真意を測りかねているベッティは、それでもカイのために従順な侍女を演じます。
 リーゼロッテ主催のお茶会で貴族の結婚事情を聞かされたルチアは、期待と失望を同時に味わって。カイへの想いが膨らんでいく中、夜会の当日を迎えるのでした。







 用意された客間は、令嬢時代にあてがわれた部屋とは豪華さがけた違いだった。何度も泊った王城で、夫婦部屋に通されたことに気恥ずかしさを覚えてしまう。

(公爵家の人間ともなると、扱いもVIP待遇だわ)

 新年を祝う夜会への招待とともに、前乗りで王城に滞在するお誘いを受けた。このまま数日連泊して、アンネマリーと双子の王子にも会わせてもらえることになっている。

「明日の舞踏会もたのしみですけれど、王子殿下にお会いできるかと思うと、わたくし今からうれしくって」
「そうか」

 言いながら、ゴージャスな天蓋付きの寝台へと運ばれる。ヘッドボードに寄り掛かったジークヴァルトの膝の上、横抱きの状態でリーゼロッテは身を預けた。
 まだ早い時間だが、あとは眠るだけの状態だ。ふたりきりでゆったり過ごすのは、神事の旅以来のことだった。

(それにしても、気兼ねなく甘えられるってなんだかいいわね)

 普段、寝室でちょっとでもすり寄ろうものなら、あれよあれよという間に身ぐるみ剥がされ、会話する暇もなく夫婦の営みに縺れ込んでしまう。まぐあい禁止令が出ている最中は、ジークヴァルトは遅くまで執務をこなしている。戻ってくるのは深夜に近いため、そんな日は先に寝てしまうことがほとんどだ。
 心置きなく甘えられる時間を堪能しようと、ここぞとばかりに広い胸に頬ずりをする。この客間は青龍の加護が厚い部屋なので、異形を騒がせてしまう心配もなかった。プチ旅行気分も相まって、いつもよりちょっぴり積極的なリーゼロッテだ。

「今夜はやけにうれしそうだな」
「だってこんなふうにヴァルト様といられるのって、滅多にございませんでしょう?」
「滅多に? 夜はいつもふたりでいるだろう?」
「そうではなくて、人目を気にせずゆっくりお話しができる時間ということですわ」
「話などいつでも好きなだけすればいい」

 こめかみをついばんでくるジークヴァルトを見上げ、リーゼロッテは唇を尖らせた。

「わたくしに話をする余裕など、ヴァルト様は毎晩与えてくださらないではないですか」
「ずっと口を塞いでるわけでもない。話したければ話せばいい」
「そんなこと無理に決まってますわ」
「なぜだ?」
「なぜって、それはヴァルト様が……」

 それ以上は言えなくて、赤くなって口ごもる。途端にジークヴァルトが悪い顔をした。この魔王の笑みが降臨すると、最近はろくなことが待っていない。

「ひゃっ」

 後ろから首筋に口づけられ、リーゼロッテの体が跳ね踊った。
 回された手が不埒に動き始める。それを阻止するために、リーゼロッテは慌ててその腕をつかみ取った。

「あ、明日は夜会なのですから、夜の営みは禁止ですわ!」
「問題ない。本当に会話が無理かどうかを確かめるだけだ」
「ぅひあっ」

 くすぐるように何度も肌に口づけを落とされる。
 逃れようと身をよじっても、ジークヴァルトの腕はびくともしない。

「どうした? 好きなだけ話せ。オレはちゃんと聞いている」
「そ、そんな、こんなことされながら、話なんてできっこな……」

 執拗なキスの嵐に、リーゼロッテの呼吸が荒くなる。
 わき腹辺りもソフトタッチで触れられて、しまいには漏れ出る声を抑えられなくなった。

「や、も、それやめ……っ」
「なら、こうだ」
「ぁひゃっ、そうじゃなくって」
「こうか?」
「だっ、だからそういうことじゃっ」

 指を変え、動きを変えて、もどかしい刺激が繰り返される。

「ぁあんっどれもこれもだめだったらぁ……!」

 必死の思いで抗議する。ジークヴァルトの手首を掴み、涙目で大きく頬を膨らませた。

「もう! 明日は夜会だと申しておりますでしょう? これ以上ふざけるのはやめてくださいませ!」
「ふざけてなどいるものか。お前に触れるときいつだってオレは本気だ」
「なっ」

 動揺した瞬間、ジークヴァルトの手が服の中にもぐりこむ。
 この流れは夜の営み一直線だ。

「ほほほ本気なら尚更いけませんわ。明日に差し障りますっ」
「触れるだけだ、問題ない」
「ふ、触れるだけってそんなっ」

 止めにかかる口とは裏腹に、体は正直に反応してしまう。
 それでも必死になってリーゼロッテは身をよじらせた。

「ですからもう悪戯いたずらはっ」
「悪戯ではない。オレはいたって真剣だ」
「真剣ならばいいというものではありませんっ。明日は夜会だと何度も申しておりますでしょう!」
「移動がない分だけ朝はゆっくりできる」
「それはそうですけれど……!」

 何を言ってもジークヴァルトは止まらない。
 むしろ魔王の笑みが深まっていくのはどうしてだろうか。

「こうしていてもちゃんと会話ができている。お前の望む通りだろう?」
「わ、わたくしが言っているのはもっと普通な感じでのおしゃべりでっ」

 悪戯はしつこく繰り返されて、見悶えながらも上ずる声で抗議を続けた。
 そんなリーゼロッテを眺めつつ、ジークヴァルトはなんだか益々楽しそうだ。

「ヴァルトさまっ、も、いい加減に」

 終わりの見えないじれったい愛撫に、リーゼロッテは陥落しそうになった。どうしても負けたくなくて、ジークヴァルトの首にしがみつく。
 耳元に唇を寄せ、仕返しのように緑の力を手加減なしで吹き込んだ。
 神事のピアスに力をめると、耳がどうしようもなく熱を持つ。それを狙っただけなのに、途端にジークヴァルトは獲物を狙うハンターのような顔をした。

(眠れる獅子を寝覚めさせてしまった……!)

 自ら犯した失態に気がつくも、後悔はいつでも先に立たないものだ。
 リーゼロッテに触れる手が、手加減のないものに様変わりする。

「子供ではないのですから、もうひと晩くらい我慢してくださいませっ」
「ふっ、馬鹿なやつだな。子供じゃないから我慢できないんだろう?」

 耳元で囁かれ、熱い吐息を落とされる。
 直接胸元の龍のあざに触れられて、駆け抜けた熱にリーゼロッテはとうとう白旗を上げてしまった。

「ヴぁるとさま、おねがいわたくし、もう……」

 すがるように仰ぎ見る。
 懇願する唇を一度小さく啄むと、ジークヴァルトは意地悪く冷静に問いかけてきた。

「おしゃべりはもういいのか?」
「だって、おはなしなんて、もうしてられな……」
「ふっ、そうか」

 口づけが一気に大胆なものになった。
 そのあとはジークヴァルトの独壇場だ。

「安心しろ、明日は夜会だ。きちんと手加減はしてやる」

 今夜一番の魔王の笑みを見たのを皮切りに、その後の記憶はあやふやになった。気づいたら、遅めの朝を迎えていたリーゼロッテだった。

     ◇
 新年を祝う夜会は大晦日の夕暮れ時に始まって、翌日の昼まで開催される王家主催の大規模な舞踏会だ。極寒の真冬に開かれる唯一の夜会でもあるため、心待ちにしている貴族も多い。
 いまだむくれ気味のリーゼロッテをエスコートして、ジークヴァルトは夜会の会場に足を踏み入れた。

「なんだ? まだ怒っているのか?」
「だって、ヴァルト様のせいで今朝は恥ずかしい思いをしましたわ」

 世話をしに来た女官たちに乱れた寝所を見られたことに、リーゼロッテは羞恥を覚えているようだ。王城仕えの者が軽々しく口を滑らせるはずもないのだが、リーゼロッテいわくそういう問題ではないらしい。
 小さく唇を尖らせる姿も可愛くて仕方がない。夜会など放り出して、ふたりきりの部屋に今すぐ逆戻りしたいくらいだ。

「女官に見られたくらいで恥ずかしがることはない」
「ヴァルト様は恥ずかしくなくっても、わたくしは恥ずかしいのです」
「夫婦なんだ。おかしいことではないだろう?」
「けれど王城の客間であのような……。それに夜会前はいつも駄目だと申しておりますのに」
「移動がある時はそうしている。今回はひとつも問題ない」

 その上夕べは体力を使わせないよう、ジークヴァルトは普段以上に気を遣った。無理のない体勢を心がけ、見えるような位置の肌にはあとを残すこともしていない。
 ゆっくりと丁寧に、つたっぷり時間をかけて、じわじわと追い詰めるように……もとい、リーゼロッテが最大限心地良くなれるよう、持てる技巧を尽くしたつもりだ。

「もう、問題がありすぎですわ」

 ぷくと頬を膨らませ、不満そうに見上げてくる。眩暈めまいがするほどの可愛らしさに、なけなしの自制心が吹き飛びそうになった。
 公爵家の呪いが発動する一歩手前で、貴族たちのざわめきが途絶えた。開始を知らせるファンファーレが鳴り響き、アンネマリー王妃を連れたハインリヒがダンスフロアに現れる。
 ゆったりとしたワルツに合わせ、ふたりのファーストダンスが始まった。簡単なステップに終始しているのは、王妃が産後もないことが理由だろう。無事に跡取りも誕生し、ハインリヒはさらに頼もしい王となった。そんなひそひそ話が、周囲の貴族たちから聞こえだす。

「素敵……」

 ふいにリーゼロッテが感嘆のため息を漏らした。潤みかけた緑の瞳は王と王妃のダンスを追っている。ジークヴァルトにじっと見られていることに気づいたのか、その頬がほんのり赤みを帯びた。

「わたくしではなくおふたりのダンスをご覧くださいませ」
「オレは昨年も見た。もう十分だ」

 そっけなく言うとあきれ顔を返される。どんな表情も見逃したくない。さらにじぃっと見つめると、恥ずかし気に顔を逸らされた。

「そんなふうにおっしゃるのなら、わたくしの顔こそもう見飽きておいででしょうに」

 見飽きるどころか、まだまだ足りなさ過ぎるくらいだ。夫婦となった今でさえ、彼女への想いは胸の奥深くでくすぶり続けている。この気持ちを言葉にするのは難易度が高すぎて、結果ジークヴァルトはいつもリーゼロッテの顔を無言で見続けるしかできないでいた。
 居心地悪そうに頬を染めていたリーゼロッテが、ふと真顔になった。少し遠い目をしてダンスフロアに視線を戻す。

「でも、そうですわね……去年わたくしは東宮にいてこの夜会には出られませんでしたし、一年前のことを思うと、今こうしていられるのが本当に奇跡のように感じられますわ」

 昨年この夜会には、ジークヴァルトはひとりきりで出席した。長居をする理由が見いだせず、開始早々会場を後にしたことを思い出す。
 甘えるようにリーゼロッテはこてんと頭を寄せてきた。強引に腰を引き寄せそうになって、ジークヴァルトは寸でで自制した。これをやらかすとリーゼロッテに可愛らしく怒られてしまう。
 代わりにやさしく抱き寄せる。夜会巻きのおくれ毛を、乱さない程度に指に絡めた。
 リーゼロッテが神殿に囚われていた間のことは、正直あまりよく覚えていない。自分がどう過ごしていたのかも記憶になくて、怒りと喪失をさまよう絶望の日々に、正気を保てていたのかも怪しいところだ。
 そうこうしているうちにダンスが終わり、王と王妃は壇上に移動した。貴族たちが見守る中、ハインリヒの重々しい声が悠然と響き渡る。

「聞け、みなの者。過ぎる年に感謝し、きたるべき新年を祝う夜会の始まりだ。今宵ばかりはうれいを忘れ、存分に楽しむといい」

 歓声が上がり、貴族たちは各々動き出した。リーゼロッテの手を引いて、ダンスフロアへと向かう。二曲続けてふたりで踊り、フロアを出る途中でティール公爵に掴まった。約束だからと、仕方なくリーゼロッテと一曲だけ踊らせて、これ以上他の奴らが近づかないようジークヴァルトは徹底的に周囲を睨みつけた。
 貴族たちの合間に異形の者の黒い影が見え隠れしている。人間の数が多ければ多いほど、異形もたちの悪い者が集まりやすい。そのため用が済んだら早めに帰るのはいつものことだ。
 とは言え公爵の立場ともなると挨拶に来る者たちも多いため、立ち止まっては会場の出口へ向かっていく。本当ならリーゼロッテを抱き上げて、さっさと部屋に戻りたいジークヴァルトだった。

「リーゼロッテ、久しぶりね」
「アデライーデ様……!」

 大公バルバナスに連れられた姉のアデライーデに出くわした。話が長くなりそうな予感がして、ジークヴァルトの眉間にしわが寄る。

「なんて素敵なドレス! お姉様にとってもお似合いですわ」
「今日はバルバナス様の女けよ。本当は騎士服を着てリーゼロッテと踊りたかったのだけれど」

 着飾ったドレスの肩をアデライーデは軽くすくませた。右目に眼帯がなければ、どこから見ても立派な公爵令嬢だ。

「ジークヴァルトは相変わらず過保護にしてるみたいね。もう少し自由にしてあげないとリーゼロッテに嫌われるわよ?」

 姉に苦言を呈されて、ジークヴァルトはすいと顔を逸らした。すでにもう何とか自重をしていると言うのに、これ以上どうしろと言うのだろうか。

「お姉様はダンスフロアにはもう行かれましたか?」
「これからよ。バルバナス様に一曲付き合ったら、今日は他の誰かとも踊ろうかしら? リーゼロッテにも先を越されてしまったし、いい歳して令嬢のドレスを着るのもなんだから、わたしもそろそろ伴侶を見つけようかと思って」
「ああ? そんな話聞いてねぇぞ? それに今夜のパートナーはこのオレだ。ほかの男と踊るなんざ許さねぇ」
「何よ、ちょっとくらいいいでしょ? バルバナス様もわたしを盾にして逃げ回ってばかりいないで、王族として貴族相手に少しは働いたらどうなの?」
「あんだと?」

 ぎゃんぎゃんと言い合うふたりを前に、リーゼロッテが困惑ぎみにジークヴァルトを見上げてきた。アデライーデの嫁ぎ先が見つからないのは、バルバナスが妨害してくるからだ。常々母親のディートリンデがそうこぼしているが、リーゼロッテには事情が把握できていないのだろう。

「いつものことだ、心配するな」
「はい、ヴァルト様」

 そっと頬を撫でると、リーゼロッテはくすぐったそうにはにかんだ。胸の奥をぎゅっと掴まれて、膝裏を掬い上げ今すぐ寝所へと駆け込みたい衝動に見舞われる。

「何がいつものことなのよ? それにしてもジークヴァルト、今日はリーゼロッテを抱き上げるのは我慢しているようね?」

 アデライーデの突っ込みに、ジークヴァルトの理性が引き戻される。今の言葉が一瞬でも遅れていたら、迷わずそれを実行していたに違いない。

一昨年おととしのこの夜会で、ヴァルトがずっとリーゼロッテを抱き上げていたでしょう?」
「お、お姉様、そのお話は……」

 リーゼロッテの頬が薔薇色に色づいた。羞恥に潤む瞳をほかの誰にも見せたくなくて、再び理性が試される。思わぬ試練続きに、ジークヴァルトの口が大きくへの字に曲げられた。

「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ。あれ以来、令嬢たちの間で流行っているみたいだし」
「流行っている? 何がですか?」
「リーゼロッテみたいに夜会でパートナーに抱き上げてもらうことよ。でもそのせいで腰を痛める男が続出してるって話だけど」
「あ、あの抱っこ行脚あんぎゃが!?」
「ほら、今夜も本家の抱き上げが見られないかと、周囲がやけにそわそわしているでしょう?」

 ぽかんと口を開け、リーゼロッテはこちらをチラ見している貴族たちを見回した。それからさらに頬を染め、恨みがましそうな視線をジークヴァルトへと向けてくる。

「要望にこたえるか?」
「お応えなどいたしませんっ」

 腕を伸ばすと、半歩体をずらされた。

「遠慮はするな。お前は軽い」
「ヴァルト様のお腰を心配しているわけではありませんわ!」
「ったく、お前ら死ぬまで勝手にやってろ」

 呆れたように吐き捨てたバルバナスの横で、アデライーデはさらにいたずらな笑みを浮かべた。

「ついでに言うとリーゼロッテがデビューの夜会で、ダンス中にヴァルトがこう、リーゼロッテをふわっと高く持ち上げたでしょう?」
「あれはクラーラ様がお転びになったから……」

 あのときは踊りの真っ最中だったが、衝突をけるためにジークヴァルトはとっさにリーゼロッテを高々と抱えあげた。

「でね、あれをして欲しいとせがむ令嬢も多かったらしくて。だけど舞踏会中に怪我人続出で、さすがにそれは王命で禁止令が出されたのよ」
「お、王命で禁止令が……」
「お前ら、滅多に顔を出さねぇくせに、話題だけは事欠かねぇな」
「それだけふたりは注目の的ってことね。ヴァルトもやっかみをうけたりしないよう、ちゃんとリーゼロッテを守るのよ?」
「言われなくても分かっている」

 いっそ部屋に閉じ込めて外へは一歩も出したくないと、常々思っているジークヴァルトだった。
 アデライーデたちと別れ、その後も出くわした貴族と言葉を交わした。少し進んでは声を掛けられ、遅々として出口に近づけない。

「あ、カイ様……」

 リーゼロッテが見やった先、騎士服を着たカイの姿があった。会場のすみたたずみ、隙のない視線で貴族たちの流れを追っている。

「カイは職務中だ。挨拶などは必要ない」
「はい、ヴァルト様」

 素直に頷いたリーゼロッテが、思い出し笑いをするかのようにふふと笑みをこぼした。

「どうした?」
「いえ、今年はカイ様がカロリーネ様姿でなくてよかったと思いまして。あ、これは秘密のお話でしたわね」

 リーゼロッテはあわてて口元に手をやった。

「申し訳ございません。わたくしの独り事ですので、お気になさらないでくださいませ」
「……そうか」

 自分以外の男の名が出る独り言など、気にするなという方が無理がある。むしろゆるし難く思えてしまう自分は、アデライーデが言うように狭量な男なのだろうか。

「どうかなさいましたか?」
「いや、問題ない」

 平静を装うジークヴァルトの頭の中では、これから戻る王城の客間で、リーゼロッテを独り占めする算段が完璧に整えられていたのだった。

      ◇
 義父のブルーメ子爵に連れられて、たくさんの貴族に声をかけて回った。ひと所にとどまって、おしゃべりに興じている者も多くいる。そんな彼らがうらやましくて仕方がない。
 怪我の療養後ということもあり、今回は踊るのは免除になった。そのことだけが僥倖ぎょうこうだ。

(カイとだったらよろこんで踊るのに)

 騎士の姿を見かけるたびに、カイを求めて懸命に目を凝らした。ハインリヒ王の従弟である彼は、騎士としても階級が高いのかもしれない。どれだけ探しても、広間を警護する騎士の中にはいないようだった。

「ブルーメ子爵、ご無沙汰しております」
「おお、ヨハン・カーク殿。それにヤスミン・キュプカー嬢、今日はおふたりで挨拶周りですかな?」
「はい、夏には彼女を妻に迎える予定でして」
「それはめでたい。カーク子爵家も安泰のご様子、何よりですな。さ、ルチアも挨拶を」
「カーク様、ヤスミン様、おふたりのご婚約、改めてお慶び申し上げます」

 ルチアの言葉にヤスミンがしあわせいっぱいに微笑み返す。

「ありがとう、ルチア様。お式には招待させていただきますわ」
「よろこんで出席します」
「ふふ、わたくしヨハンと一緒になれること、今から本当に待ち遠しくて」

 絡めた腕をぎゅっとして、ヤスミンはヨハンにもたれかかった。真っ赤になりながら、ヨハンの手が落ち着きなくわちゃわちゃ動き出す。

「これはこれは。初々しくてわしの目には眩しすぎますな」
「いやっお見苦しくて申し訳ないっ。ヤヤヤヤスミン、もうちょっと適切な距離をだなっ」
「婚約者なんですもの。このくらい普通の距離ですわ」
「そ、そうか!?」
「何ともうらやましい限り。ヨハン殿は将来ヤスミン嬢に頭が上がらなくなりそうですな」

 ひとしきり笑い合ったあと、ヤスミンたちはルチアの元を離れていった。仲睦まじげに語らう後ろ姿を、ルチアの視線が追っていく。
 周囲の貴族を見回すと、自分のように父親にエスコートされている令嬢は少なく思えた。遠目にエルヴィンと連れ添うクラーラがいて、婚約したばかりのふたりも親密そうに寄り添っている。

(みんな、しあわせそうでいいな……)

 イザベラも今日の夜会で婚約披露をすると言っていた。今掴まるこの腕が、大好きなカイのものだったなら。そんなことを思って、ルチアはため息交じりにブルーメ子爵の横顔を見上げた。

「ルチアにも良縁を探さねばな。そこのところはわしに任せるといい、うん」
「……はい、お義父様」

 そうとしか返事ができなくて、ルチアはしゅんとうつむいた。

(どうして話しちゃいけないんだろう)

 ふたりのことは誰にも知られてはいけないと、何度もカイに言い含められた。愛し合う仲なのだから、正直に話せば子爵はちゃんと受け入れてくれると思うのに。それでも二度と会わせてもらえなくなるという、カイの言葉が怖かった。
 以前エマニュエルにされた話も、ずっとルチアの中で引っかかっている。例え駆け落ちしたとしても、連れ戻されて意に沿わない結婚が早まるだけだ。万が一自分たちもそうなったらと思うと、誰にも言い出せないでいるルチアだった。

「あれ……?」

 行き交う貴族の波の向こうに、父親に連れられたイザベラを見つけた。普段以上に不機嫌そうな表情をしていて、近くにいる貴族たちはみな、そんなイザベラから不自然に距離を取っている。

(どうしたんだろう。今日は婚約のお披露目だって言ってたのに)

 それならば、婚約者にエスコートされていそうなものだ。イザベラの近くを見回すも、それらしき紳士はいなかった。
 目の前にいたご夫人方の会話が、ふと切れ切れに聞こえてきた。ひそひそと耳打ちしあい、その声音は幾許いくばくかのあざけりを含んでいる。

「ねぇ、お聞きになった? ブラル伯爵家のイザベラ様のこと。この場で婚約発表をするはずだったのに、下位の令嬢にしてやられたって話よ?」
「してやられたって一体何を?」
「それがここだけの話、婚約者を寝取られたんですって! で、婚約相手はあっさりそちらに鞍替えしたらしいわ」
「まあ、なんてこと!」

 不穏な内容に驚いて、ルチアは思わず耳をそばだてた。ご夫人たちは隠す気もないようで、内緒話のていだけ保ち、興奮気味に会話を続けている。

「それにしたってブラル伯爵様は何をなさっていたの? 宰相の地位を任されるほどのお方なら、下位の令嬢相手に事実を握り潰すことくらい簡単だったでしょうに」
「それが令嬢の方が一枚上手だったようですわよ? 何でも密会中のところを噂好きの貴族にわざと目撃させて、ご自分は襲われたと泣きながらその場で証言なさったとか」
「言い逃れできない状況を作って、イザベラ様の婚約者に責任を取らせたってわけね」
「なんて用意周到なのかしら!」
「イザベラ様との婚約がおおやけに発表されたら、自分は捨てられると思ったのでしょうね。ほら、ハインリヒ王が厄介払いで、親子ほど年の離れた男に嫁がせた令嬢がいたじゃない。きっとあんなふうになるのが嫌だったのよ」

 その話が周囲の貴族にも飛び火して、あちこちで似たような会話が繰り広げられ始めた。

「イザベラ様もお気の毒に。正式に発表する前だったのがせめてもの救いね」
「表向きはイザベラ様が婚約者を気に入らなくて、伯爵家側から断りを入れたってことになっているらしいわ」
「このままではブラル家も面目丸潰れだものね」
「そんな状況でイザベラ様は気丈にも夜会にお出になられて……」
「本当に。わたくしなら恥ずかしすぎて、とてもではないけれど顔を出せそうにありませんわ」

 同情しているふうに見せかけて、笑いものにしているようにしかルチアには思えなかった。多くの貴族が遠巻きにイザベラを眺め、その口々に嘲笑を含ませている。
 そのイザベラはというと、臆することもなく堂々と顔を上げて立っていた。機嫌良くは見えないが、自信満々の様子は普段の彼女と何も変わりなく見える。
 イザベラはなぜいつもあれほど強気でいられるのだろうか。羨ましいというよりも、純粋にそんな疑問が湧き起こった。あの他人の目を気にしないはがねの心をってすれば、カイとのことも大っぴらにできそうに感じられた。

(でもそうか……。わたしも上手にやれば、カイとの仲を周りに認めさせることができるのかも)

 秘密がばれて引き離される前に、計画をしっかり練って表沙汰にしてしまえば、義父が認めざるを得ない状況を作り出せるかもしれない。このことをカイに相談してみよう。そう思った途端、会いたくて居ても立ってもいられなくなった。

「ルチア、あちらにフーゲンベルク公爵夫妻がいらっしゃる。挨拶をしないわけには参らんな」

 意識を戻され、義父とともにリーゼロッテたちのいる方へ進んでいった。
 それにしても恐ろしく目立つ夫婦だ。公爵から感じる威圧感は、単に背が高いと言う理由だけではないだろう。その横にいるリーゼロッテはリーゼロッテで、小柄な割に華やかさが半端ない。
 今夜の彼女の装いは、既婚者らしく落ち着いた色合いのものだった。それでもリーゼロッテは周囲の貴族の視線をくぎ付けにしている。本当に美しい人間は、何を着ても似合ってしまうということなのだろう。
 お決まりの挨拶で話しかけると、ブルーメ子爵は公爵に長々と礼を述べ始めた。くどくどと続けられる話に、思わずあくびが出そうになる。心を無にして会話が終わるのを待っていると、リーゼロッテが小声でルチアに話しかけてきた。

「ルチア様の今日のべに、とっても素敵なお色ね」
「ありがとうございます。今夜も全部ベッティに見立ててもらいました」
「さすがはベッティね。わたくしもそういった濃いめの紅をさしてみたいのだけれど……」

 何か秘密を打ち明けるかのように、リーゼロッテはさらに声をひそませた。

「ほら、わたくし口が小さい方でしょう? 濃い赤の紅をつけると、引き締まって益々唇が小さく見えてしまうのよ。だからその色がお似合いになるルチア様が本当にうらやましいわ」

 そう言って、リーゼロッテは恥ずかしそうに頬を染めた。上品な笑みを浮かべる唇は、瑞々みずみずしい桜色をしている。完璧に見えるリーゼロッテがそんなコンプレックスを抱いていることに、ルチアは正直驚いてしまった。
 姿かたちだけでなく裏表のない穏やかな性格も、淑女のかがみと言えるリーゼロッテだ。公爵にも溺愛されているし、ルチアにしてみれば彼女の存在そのものがうらやましく思えて仕方がない。

「そうそう」

 内緒話の続きをするように、リーゼロッテは自然に顔を寄せてきた。つられるようにルチアも耳を傾ける。

「先ほどあちらの王族用の扉がある付近でお見かけしましたわ。今ならまだいらっしゃるんじゃないかしら」
「え?」
「あ、ほらあそこ」

 誰とは言われなかったが、その方向をとっさに見やった。貴族たちの波の中、カイの姿を必死に探す。
 リーゼロッテの視線の先に、念願のカイの横顔が見えた。一瞬、瞳を輝かせるも、ルチアはすぐに顔を青ざめさせた。
 カイのすぐそばにひとりの女性が並び立っていた。しかも白の夜会で見かけたときとは、また別のご夫人だ。親密そうに寄り添うふたりは、まるで恋人同士のような近さに見える。

「嘘、どうして……」

 色を失くしたルチアを見て、リーゼロッテが不思議そうに小首をかしげた。しかし彼女もカイの状況を理解したのだろう。すぐに気づかわしげにルチアの顔を覗き込んできた。

「職務中ですもの。気分の悪くなった方をお連れしているのではないかしら?」
「そう、でしょうか……?」
「お酒を召して具合を悪くされる方って結構いらっしゃるのよ。だから」

 言われてみれば、悪酔いした夫人を休憩室に案内しているだけのようにも見える。そう思いかけたとき、もたれ掛かった夫人が顔を寄せ、カイの首筋に大胆に吸い付いた。
 人目をはばからない夫人の行為に、リーゼロッテも言葉を失ったようだ。熱烈な口づけを受けたカイは、ほがらかな笑顔のまま夫人をさらに近く抱き寄せた。

「る、ルチア様、あの、ここだけの話なのですけれど、カイ様はああやってよく潜入捜査を……」
「何の話をしている?」

 眉をひそめた公爵が、リーゼロッテを腕の中に閉じ込めた。まるでルチアに嫉妬するかのごとく、最愛の妻を隠すように抱え込む。

「もう、ヴァルト様、大事なお話をしておりましたのに」
「こちらが長話をしすぎましたな。いや、なんとも無粋な真似を」
「いいえ、ブルーメ子爵様のせいでは……」

 否定するリーゼロッテとは対照的に、公爵の仏頂面ぶっちょうづらに拍車がかかっている。恐縮したブルーメ子爵は、ルチアを連れてそそくさとふたりの元を離れた。
 カイの姿を目で追うも、連れ立った夫人と会場外へと行ってしまったようだ。

(カイ……なんでほかの女なんかと)

 いまだ信じられない思いだった。白の夜会で似たような場面を見かけたが、あれはカイとルチアが結ばれる以前の出来事だ。リーゼロッテが言いかけたように、先ほどは任務を果たしているだけだったのだろうか。
 いろんな思いが交錯して、青ざめたままルチアは子爵に付き従った。

「ルチアもだいぶ疲れているようであるな。おお、ベンノ、ちょうどいいところに」
「これはインゴ叔父上」

 ベンノは子爵の甥で、歳はルチアよりも十ほど上の男だ。少し酔った様子の赤ら顔で、不躾な視線をルチアへと向けてくる。

「わしはまだ挨拶回りがあるのでな、しばらくルチアについていてくれないか?」
「ええ、もちろん。彼女は責任をもってお預かりします」
「怪我が回復したばかりであるからな。ルチアはしばらくベンノとここで休んでいるといい」

 快く頷いたベンノだったが、子爵の姿が見えなくなった途端、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「まったくなんでこのオレが乳臭い小娘ガキの世話なんか」

 子爵には実子がいないため、彼がブルーメ子爵家を継ぐ話が出ているらしい。そんなときに突然現れたルチアのことを、ベンノは快く思っていないようだ。
 彼はいつも外面そとづらが良く、誰も見ていないところではルチアに冷たく当たってくる。そんなわけでルチアはベンノに苦手意識を持っていた。

「仕方ないな。一曲だけ踊ってやる」
「でもわたくしは……」

 ゆっくり休むよう言われたのに、無理やりダンスフロアへ連れていかれてしまった。有無を言わさず手と腰を取られて、流れ出したワルツに仕方なくルチアは踊り出した。

「叔父上は怪我だなんだと大げさすぎる。お前も貴族街ですっ転ぶなんざ、育ちが知れてるってもんだ」

 せせら笑いながら強引にリードしてくる。初めて踊る相手とは息が合わないことも多いが、乱暴な動きばかりするベンノは、女性に対する気遣いがまったく見られない。もつれてステップが乱れたルチアは、ベンノの足を踏みそうになった。

「ちっ、ダンスも下手くそすぎるな。なんでこんなのを叔父上は養子に迎えたんだか」
「そんなことわたくしに言われたって……」
「口答えするな! お前は黙ってオレに従っていればいいんだっ」

 強くまくし立てられて、ルチアは益々委縮してしまった。唇を噛みしめ、涙がにじみそうになる。

(カイだったら、もっとやさしくリードしてくれるのに……)

 デビュー前に呼ばれたデルプフェルト家の夜会で、ルチアはカイに無理やり踊らされた。でもそのときはベッティのはじくピアノに合わせて息ぴったりに踊れたのだ。
 あの日も渋々踊ったが、今思えばカイと過ごせるとても貴重な時間だった。勿体もったいないことをしたなどと、カイのことばかりが頭を巡る。

「ここまで付き合ってやったんだ。あとはすみの方でおとなしくしてろ」

 曲が終わるなり、ベンノはルチアを置き去りにしてどこかへ行ってしまった。ダンスフロアの片隅に、ぽつんとひとり取り残される。
 見回してもブルーメ子爵の姿はない。酔った紳士の不躾な視線を感じ、意を決しルチアは女性専用の休憩室がある扉へ向かっていった。このままここにいて変な男に絡まれるのは避けたいところだ。

(そこまで行けばベッティにも会えるだろうし)

 休憩室のそばには侍女用の控室もある。義父が戻るのを待つよりもその方が安全に違いない。心の内でそう言い訳をして、ルチアは目立たないよう壁伝いに歩を進めた。
 ふと先ほどカイを見かけた付近で立ち止まる。その先にある扉から、カイは夫人と出て行ってしまった。

 真相を確かめたい思いに駆られたルチアは、行き先を変えその扉から廊下へと向かったのだった。









【次回予告】
 はーい、わたしリーゼロッテ。カイ様の後を追って、人気ひとけのない廊下に出たルチア様。そこで出くわしたのは酔った不埒ふらちな殿方で。ピンチを迎えたルチア様の前に、ようやく現れたカイ様は……?
 次回、6章第20話「嘘つきな騎士 - 後編 -」 あわれなわたしに、チート、プリーズ!!


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