10コ上のイケボと付き合ってます

マカリ

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恋人編 8

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 モデルの仕事を終えて息付く間もなく映画の撮影の為にアメリカへ飛んだ。
 30年程続くシリーズ物の、スピンオフ映画の撮影だった。アクションも有り、僕にとってとても良い経験になった。

 撮影も無事に終わって、世の中はすっかりクリスマスのイルミネーションで彩られていた。
 撮影が予定より早く終わった12月20日。僕は空港に居た。一日でも早く智ちゃんに会いたくて帰る日を繰り上げたのだ。

 二ヶ月半ぶりの日本。やっぱりホッとする。
 智ちゃんには内緒で帰ってきてた。別にサプライズとかしたかった訳じゃない。
 連絡もたまにしていた。本当は毎日声を聞きたかったけど、智ちゃんも凄く忙しい時だったし時差もあったしで、週に一度位しか話せなかった。

 空港にはマネージャーの佐々木が迎えに来てくれていた。
「お疲れ」
「うん」
 だいたいこんな感じ。佐々木は無駄話をしない人だ。仕事をちゃんとこなしていれば、僕がプライベートで何しようが口を出さなかった。
 だが今回は違った。
「将暉、今誰と付き合ってる?」
 唐突すぎて返事が出なかった。
「な、何?」
 やっと返せた返事がこれ。
「お前、入り浸ってるマンションがあるだろう」
 入り浸ってるって、智ちゃんの所には毎週行くけど、まともに会えるのは月に一、二回位だった。
「何でだよ。別に関係ないだろ」
「うーん、週刊誌がな。お前を撮ったんだってさ」と佐々木は言いながら僕にゲラを渡してきた。

『棗 将暉 深夜の密会』

 クソダサいタイトルだ。そこには僕が一人で智ちゃんのマンションに入っていく所と出ていく所を撮られていた。
 
『有名な事をもっと自覚しろ』
 
 そう智ちゃんに怒られた事があるけど、確かにパパラッチの事は何も考えていなかった。

「これ記事の内容も相手分かってないじゃん」と、僕は言った。
「そうだけど、もしかしたら第二弾とかあって、それに相手が出るのかもしれないぞ」
 ちょっと困った事になったな、とその時思ってしまった。
 智ちゃんとの関係がバレるのが嫌な訳じゃない。僕たちの事が世間に知れたら、もしかしたら智ちゃんが離れていってしまうかもしれない、と思ってしまったからだ。

「相手の素性くらい教えてくれよ。そうじゃないと、こっちも対処のしようがないだろ」
 分かってるよ。でも……
「ちょっと時間くれよ。必ず連絡するから」
 僕はそう言って、いつものホテルの部屋に戻った。ここに着く途中、智ちゃんにはメッセージを送っておいた。

 ◇◆◇◆

 チャイムが鳴る。
 僕は週刊誌の事で頭がいっぱいで、服も着替えず荷解きもせず、窓辺に立ち東京タワーをずっと見つめていた。
 慌ててドアを開ける。
「おかえり将暉」
 そう言って智ちゃんが抱きしめてくれる。
「ただいま、智ちゃん。会いたかったよ」
 やっぱり智ちゃんの声は安心する。

「帰ってくるなら教えておけよ。それに、うちに来ればよかっただろ?」と智ちゃんは言った。
「そうなんだけど、さ……」
 僕はゲラを見せられないでいた。
「何かあったな……」
 智ちゃんはそう言うと僕の話を聞く体勢になった。

  しばらくして勇気を出して、
「僕が智ちゃんのマンションに出入りしているのがバレたみたいで。記事には誰とは書いてないけど……」
 そう言ってゲラを見せた。
 智ちゃんは無言でそれを読んでいた。その時間が凄く怖かった。智ちゃんがどんな反応をするのか怖かった。
 でも、
「だから?」
 そう言って智ちゃんは僕を見る。
「だから……とは……」
「俺との関係がバレるのが嫌か?」
「違うよ!智ちゃんに迷惑掛かるんじゃないかって……心配で……」
 智ちゃんはフッと笑った。
「バレて困る関係じゃないだろ?でも世間はどうかな。偏見はあるだろうな。俺も将暉が思っている程強くないけど、一緒に支え合おう。いずれこういう時が来ると思ってたけど、それが今日だったんだよ。ただそれだけだ」
 智ちゃんは本当に勇敢で優しい。僕は嬉しくて、やっぱり泣いちゃった。
 智ちゃんの前で佐々木に電話した。智ちゃんとの関係を説明した。ずっと黙って聞いていた佐々木だったけど、
「分かった」とだけ言って電話が切れた。

「智ちゃん……」
「大丈夫だよ。世間にバレるからって、俺たちの関係が変わる訳じゃない。そうだろ?そりゃ、今思っているより厳しい現実が待ってるかもしれない。でも、将暉が居れば俺はそれでいいんだ。将暉もだろ?」
 僕は智ちゃんの胸に顔を埋めて、わんわん泣いた。

 いつの間にか眠っていて、目を覚ますとベッドだった。智ちゃんが僕を抱き締めたまま眠っていた。
 僕はこういう朝の迎え方をしたいと思った。
 目を覚ますと愛する人が、当たり前のように居る毎日が欲しかった。
 それからだったと思う。僕は仕事を完全に辞めようと考え始めたのは。
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