10コ上のイケボと付き合ってます

マカリ

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同棲編 END

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「あんた、今日こそは奢らせるわよ」

 僕は何故か元カノで女優の阿川友理子に呼び出しを食らっていた。
 多分、智ちゃんと元奥さんの記事を読んだか見たんだろう。

 週刊誌の内容は瞬く間にSNSに広がっていき、テレビのワイドショーでもチラッと取り上げていたりしていた。こんな形で自分がフォーカスされるのは正直好きじゃないけど仕方ない、と智ちゃんは言っていたけれど、この類のゴシップって止められるものではないから、時間が経つのを待つしかないわけで。

「元嫁ってさぁ、あんたの彼氏バツイチだったの?」
「言ってなかったっけ?」
「知らない。記憶にない」
「で、何だよ。呼び出した理由」
「元嫁とまだ繋がってるって大丈夫なの?」

 普通は心配になるというか、まぁそう思うかもしれない。でも、智ちゃんと元奥さんは、そんな簡単な関係じゃない。それを友理ちゃんに説明するのも違う気がする。

「まさか、別れないわよね?」
「別れるわけないだろ!」
「まぁ、あのイケボで、あの見た目だものねぇ」
「智ちゃんは、遊び人じゃないよ」
「そんな事言ってないわよ」
「生き方が不器用なんだよ。凄く誠実な人だよ」
「あんたも不器用じゃない」

 過去を掘り返したって、互いにとって意味は無いと思うんだ。特に互いが出会う前の過去は、どうしようもない。それを受け止める事しか出来ないんだから。

「で、何で、呼び出したんだよ?来なきゃ良かったって思い始めてるからな」
「そこまで言う?心配してやったのにさぁ」
「…………」
 僕は友理ちゃんをじっと見る。
「何よ」
「彼氏いないの?」
「いないんじゃなくて、いらないの!」
「どーだか」

 友理ちゃんこそ幸せになって欲しいのに。僕はいつも思っていた。彼女はこの業界の第一線で活躍している割には、凄く真面目でそれこそ凄く誠実な人だ。誰からも慕われている。

「番宣でバラエティに出る度に『結婚は?』って、うっさいっつーの」と、友理ちゃんはアルコール度数高そうなお酒を一気飲みした。
「だって、美人でスタイル良くて。なのに結婚しないのは何で?ってなるの普通じゃん」
「じゃ、あんた何で結婚しないのよ?」
「僕たちは法律上無理だもの」
「『僕たち』って……」

 単に智ちゃんと元奥さんの記事に驚いて、そして僕が落ち込んで死にそうなんじゃないかと思ったらしい……何だよそれ。

「次こそは奢らせる、マジで!」
 そう僕に宣言すると、颯爽と帰って行った友理ちゃん。奢らせる気は無いのは知ってるけど、にしても飲みすぎだと思った。
 僕は病気の事は表には伏せていて、知っているのも智ちゃんと事務所の偉い人と佐々木のみ。友理ちゃんに話そうか悩んだけれど、話す間もなくって言うか、僕も話すの忘れていた。
 次でいいか……と、僕は『今日は結局、友理ちゃんが一人で飲みたくなかった日』と認識してタクシーで帰った。

 ◇◆◇◆

「おかえり」
 帰ると仕事で居ないはずの智ちゃんが居た。
「あれ、仕事は?」
「うん、スムーズに進んで予定より結構早く終わってさ。日付変わる前に帰ってきたの、久々だよなぁ」
「ごめんね、せっかく早く帰ってきたのに、出掛けちゃってさ」
「いいよ、姐さんに呼び出し食らったんだろ」
 あっ、何かそんな感じの事を智ちゃんに言って家を出た気はします。

「なぁ、阿川さんとは付き合い長いんだろ?」
 珍しく智ちゃんが僕の過去の恋愛に興味が湧いたみたいで、そう聞いてきた。
「まぁ、知り合ってからは長いけど、恋愛的には一年くらいだよ」
 僕は風呂に入る支度をしながら返事をする。
「でも、今でも姉弟みたいな関係なんだな」
「単に世話好きな人なんだよ、あの人。そうじゃなければ、とっくに切れてる縁だよ」
「俺たちも、例え………」
「僕たちは別れないから、余計な事考えるなよ」と、僕は智ちゃんが言う前に食い気味で遮る。
「例え話をしようとしただけだよ」
「どうして智ちゃんは、すぐ『もしも』って考えるんだよ」
「可能性がゼロじゃないからだって、いつも言ってるだろ」
 これ以上返事を返すと、本当に喧嘩になりそうだから、僕は言葉をのんで風呂に入った。

 ◇◆◇◆

 僕が湯船に浸かっていると、智ちゃんも入って来た。こっちをチラチラ見ながらシャワーを浴びている。
「風呂場でセックスはしない」と、僕が釘を刺す。
「分かってるって、そんなに嫌がんなよ」
「だって、この間背中痛かったし……」
「ごめんごめん、もう痛くしないから」と、言いながら智ちゃんは湯船に入りながら僕の後ろに回り抱きしめる。
「もう怒るなよ」と、智ちゃんはキスしてくる。
「んっ……別に怒ってないもん……」

『ちゅっ』
『ちゅぱっ』

 キスする音が響く。
「エッチしないって言った……」と、僕は気持ちいいキスに酔ってしまいそうになる。
「分かってる。風呂場ではキスだけにするから」と、僕の耳元で囁く智ちゃん。
「ずるい……そんなイケボで……囁いて……」
 僕は智ちゃんを甘やかしたくないから、立ち上がって風呂から出た。
「やっぱり、ご機嫌斜めじゃん」と、智ちゃんが後を追ってくる。
「そんなんじゃないよ」
「じゃぁ、いいだろ」
 智ちゃんは僕の体を弄る。
 でも僕は何だか気持ちが乗らなくて、
「智ちゃん、ちょっと待って……」と、拒否してしまった。
「……具合い悪い?」
 そうに聞いてくる智ちゃん。
「違う……何か今日は、そういう気分じゃなくて……ごめん」
 正直に謝るしかなくて……
「いいよ。具合い悪い訳じゃなくて、良かった」

 智ちゃんは優しい。セックスを拒否しても、絶対不機嫌になったり怒ったりしない。愛し合ってたら、そんなの当たり前だけれども、拒否られた時の焦燥感は分からないでもないから。僕だって毎日セックスしたい気持ちなのは変わらない。でも、どんなに愛してる智ちゃんだったとしても、気持ちが全く乗らない時のセックス程、不快な事はない。

「将暉、ラーメン食う?」
 僕がこんなに気にしてるのに、智ちゃんはこんな感じで、思わず苦笑いしてしまう僕。
「こんな時間にラーメン?」
「だってさぁ、何か食いたくってさぁ」と、智ちゃんは即席ラーメンを作り出す。
「じゃぁ、もやし炒めようか?」
「え、豪華になるじゃん」
「キャベツも炒めようか」
「超豪華になるじゃん」

 こんな事で互いに幸せを感じられるのが嬉しいなと、つくづく感じた日だった。

〈同棲編 終〉
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