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第一章 全日本魔法剣技大会
第24話 古びた鏡
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昔、ある村にある男女二人がいた。
二人は仲が良く、口には出さずともお互いが好意を持っているように周りからは見られていた。
実際にもお互いに好き同士だったのかもしれない。
そんなある日、男は国からの命で村を離れ、数日間かかる仕事に出かけた。
いつものように村に帰ると、そこは焼け野原になっていた。
建物は倒壊し、瓦礫となって積み重なっていた。
男は絶望し、せめてあの女が生きてるのではないかと、そう切望して村を走りまわった。
見つけることができた。けれど、女はもう生きているのが不思議なぐらいに衰弱しており、まさしく死にかけだった。
駆け付けた男に、女は言う。
「私はいなくなってしまうけれど・・あなたは生きて、私よりもいい子を選んでね・・。」
そのまま女は男の胸の中で息絶えてしまった。
男は泣き叫ぶ。この世の不条理を、自分が愛すべきだった人を守れなかった自分の無力さを、そしてこの元凶となった者共にたいする深い憎しみを。
それから男は誓った。絶対に自分の周りの人は死なせないと。
いずれまた、その誓いが破られることも知らずに・・・。
心の片隅に置いてあった惨い昔話を思い起こす。
いつまでも感傷に浸るのはよくないと思いなおし、俺は気持ちを改めた。
現在会場内はあわただしくなっており、戦闘場の修復や次の決勝戦の準備を衛術協会総出で行っているらしい。さっきスカルノが謝罪と感謝の言葉を述べに来た。
俺はいつも通り受け答えし、今に至る。
コンコン、と待機室のドアが鳴る。
「はい」
と俺が返すと、
「九條 都です。新条君、少しお話させてください。」
俺はドアを開けた。そこには、少しだけ泣き跡の残っている九條がいた。
「はい、もちろんです。」
九條をやたらと広い待機室に招き入れた。
そのまま椅子に座り、話し始める。
「さっきは、本当にありがとうございました・・。私、怖くて動けなくて・・。」
「大丈夫ですよ。悪魔討伐は僕の専売特許ですから。それに、九條さんこそ大丈夫ですか・・?渡辺さんのこと・・。」
「あの時は取り乱して泣いてしまいましたが、今は大丈夫です。結局は、あいつも私もどっちも悪いから、怒る権利も資格もないんです、私には。」
「そんなことないですよ。あなたは悪くないし、渡辺さんもそこまで悪くはないとおもいます。一番悪いのは、純心につけこんだヤツなのですから・・。」
「そう言ってくれるのはありがたいです・・。それで、次の試合なのですが、、。私は棄権して、新条君に譲ろうと思っています。」
「え、え!?何故ですか?」
「あなたに勝てる自信も全くありませんし、なんだか前に進もうという気になれなくて・・。」
「僕としては、戦ってみたい気持ちはありましたが・・。でも、こんなこと僕が言える義理ではないでしょうが、言わせてもらいますね。」
「は、はい・・。」
「今の九條さんの姿を見て、渡辺さんはどう思うと思いますか?さらに罪悪感に蝕まれるか、九條さんにがっかりするか、二つに一つだと僕は思います。勝ち負けではなく、今後のためにも、棄権ではなく参加したほうがいいとおもいます。もっと成長して、渡辺さんの死を乗り越えることを、彼は望んでいるような気がします。」
「・・。たしかに、洋介ならそう考える気がします・・。」
「どうしますか?」
「そうですね、、。私、決めました。死んでしまった洋介に顔向けできるように、これからもっともっと魔法を修行して、いずれは誇れるような、最高の魔法師になれるよう頑張ります!!だから、今回は棄権しません!あなたと戦って、勝てるよう頑張ります!」
九條はすっかり元気よくそう答えた。
「そうですね。僕もそれがいいと思います。」
こうして、九條との決勝戦が改めて確定した。
二人は仲が良く、口には出さずともお互いが好意を持っているように周りからは見られていた。
実際にもお互いに好き同士だったのかもしれない。
そんなある日、男は国からの命で村を離れ、数日間かかる仕事に出かけた。
いつものように村に帰ると、そこは焼け野原になっていた。
建物は倒壊し、瓦礫となって積み重なっていた。
男は絶望し、せめてあの女が生きてるのではないかと、そう切望して村を走りまわった。
見つけることができた。けれど、女はもう生きているのが不思議なぐらいに衰弱しており、まさしく死にかけだった。
駆け付けた男に、女は言う。
「私はいなくなってしまうけれど・・あなたは生きて、私よりもいい子を選んでね・・。」
そのまま女は男の胸の中で息絶えてしまった。
男は泣き叫ぶ。この世の不条理を、自分が愛すべきだった人を守れなかった自分の無力さを、そしてこの元凶となった者共にたいする深い憎しみを。
それから男は誓った。絶対に自分の周りの人は死なせないと。
いずれまた、その誓いが破られることも知らずに・・・。
心の片隅に置いてあった惨い昔話を思い起こす。
いつまでも感傷に浸るのはよくないと思いなおし、俺は気持ちを改めた。
現在会場内はあわただしくなっており、戦闘場の修復や次の決勝戦の準備を衛術協会総出で行っているらしい。さっきスカルノが謝罪と感謝の言葉を述べに来た。
俺はいつも通り受け答えし、今に至る。
コンコン、と待機室のドアが鳴る。
「はい」
と俺が返すと、
「九條 都です。新条君、少しお話させてください。」
俺はドアを開けた。そこには、少しだけ泣き跡の残っている九條がいた。
「はい、もちろんです。」
九條をやたらと広い待機室に招き入れた。
そのまま椅子に座り、話し始める。
「さっきは、本当にありがとうございました・・。私、怖くて動けなくて・・。」
「大丈夫ですよ。悪魔討伐は僕の専売特許ですから。それに、九條さんこそ大丈夫ですか・・?渡辺さんのこと・・。」
「あの時は取り乱して泣いてしまいましたが、今は大丈夫です。結局は、あいつも私もどっちも悪いから、怒る権利も資格もないんです、私には。」
「そんなことないですよ。あなたは悪くないし、渡辺さんもそこまで悪くはないとおもいます。一番悪いのは、純心につけこんだヤツなのですから・・。」
「そう言ってくれるのはありがたいです・・。それで、次の試合なのですが、、。私は棄権して、新条君に譲ろうと思っています。」
「え、え!?何故ですか?」
「あなたに勝てる自信も全くありませんし、なんだか前に進もうという気になれなくて・・。」
「僕としては、戦ってみたい気持ちはありましたが・・。でも、こんなこと僕が言える義理ではないでしょうが、言わせてもらいますね。」
「は、はい・・。」
「今の九條さんの姿を見て、渡辺さんはどう思うと思いますか?さらに罪悪感に蝕まれるか、九條さんにがっかりするか、二つに一つだと僕は思います。勝ち負けではなく、今後のためにも、棄権ではなく参加したほうがいいとおもいます。もっと成長して、渡辺さんの死を乗り越えることを、彼は望んでいるような気がします。」
「・・。たしかに、洋介ならそう考える気がします・・。」
「どうしますか?」
「そうですね、、。私、決めました。死んでしまった洋介に顔向けできるように、これからもっともっと魔法を修行して、いずれは誇れるような、最高の魔法師になれるよう頑張ります!!だから、今回は棄権しません!あなたと戦って、勝てるよう頑張ります!」
九條はすっかり元気よくそう答えた。
「そうですね。僕もそれがいいと思います。」
こうして、九條との決勝戦が改めて確定した。
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