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第一章
魔導士は鬼になっていた
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「い、いったい何なんですか…?」
「コイツら?熱狂的な私のファンよ」
「そうじゃなくて!あ、あなたは何者なんですか!?」
ようやく立ち上がったステラは身体の震えをこらえながら巫女を指差して尋ねた。
「言ったでしょ?ただの巫女だって。これも巫女の仕事の一環よ」
「何をバカな?巫女が…巫女がこんな恐ろしい真似を…!」
「殺られる前に殺るのは当然でしょ?特にこの国では……?」
話の途中でステラを見た巫女は何かに気づき、眉をひそめた。
「…なるほど…そういうことね…」
「…え?」
一人何か納得した巫女はステラに一歩近づいた。それだけでステラは背の粟立ちを感じた。
「まさか鬼の生き残りがこんな所に姿を見せるとはね」
「オ、オニ?何を言っているのですか?」
「とぼけても無駄よ。そんな立派なもの頭に生やしておいてよく言うわね」
巫女は拾い上げた買い物袋から鏡を取り出し、ステラに見せつけた。
「頭?……!」
フードが外れた頭髪に手を当てると何か違和感があった。頭に何かがついている?まるで動物の骨がくっついているような感触であった。
巫女が突き付けた鏡を覗き込むとそこにはよく知っている自分の顔が映っていなかった。
「こ…これは?」
雪のような銀の頭髪、ルビーのような紅い瞳、そして仔牛のように曲がった小さい二本の角を頭に生やした少女が両目を見開き、愕然としていた。瞬きをすると鏡の少女も瞬きをした。
「…悪魔になっている!?」
悪魔とは魔王の眷属。狡猾で残虐な知性を持ち、暗黒魔法によって人間を苦しめる邪悪な存在である。
「どうして…悪魔の姿に……?」
人間が悪魔に変身したという事例は未だ存在していない。他の動物に変身する魔法は存在するが、悪魔に変身する魔法など聞いたことはない。ましてや悪魔になりたがる人間はいない。
この世界では悪魔は『オニ』と呼ばれる存在なのであろう。しかし、いつの間にこんな姿に?これもあの魔法陣の影響なのだろうか?思考するステラをよそに巫女は話を続けた。
「こいつらはあんたの差し金なんでしょ?さしずめ、さっきの三文芝居は奴らへの合図…ってところかしら?」
鏡を袋にしまい、親指で足元の亡骸を指しながら巫女は困惑する鬼に向かって歩きだした。
「そ、そんなことは…がっ?」
巫女は一瞬で距離を詰めて右手でステラの首を掴み、その後ろの大木に押し付けた。
「かはっ!」
衝撃で一瞬息が詰まった。巫女の顔に目をやるとその表情には先程までの胡乱な気配はなく、明確な殺意に満ちていた。
「鬼がいるとわかった以上、生かして帰すわけにはいかないわね」
静かに、そして恐ろしく冷たい声で捕えた鬼に対しそう告げた。彼女の首を抑えるその右手は絞めてこそいないが鋼鉄の首輪のように固く、どれだけもがいても逃れることはできなかった。
「コイツら?熱狂的な私のファンよ」
「そうじゃなくて!あ、あなたは何者なんですか!?」
ようやく立ち上がったステラは身体の震えをこらえながら巫女を指差して尋ねた。
「言ったでしょ?ただの巫女だって。これも巫女の仕事の一環よ」
「何をバカな?巫女が…巫女がこんな恐ろしい真似を…!」
「殺られる前に殺るのは当然でしょ?特にこの国では……?」
話の途中でステラを見た巫女は何かに気づき、眉をひそめた。
「…なるほど…そういうことね…」
「…え?」
一人何か納得した巫女はステラに一歩近づいた。それだけでステラは背の粟立ちを感じた。
「まさか鬼の生き残りがこんな所に姿を見せるとはね」
「オ、オニ?何を言っているのですか?」
「とぼけても無駄よ。そんな立派なもの頭に生やしておいてよく言うわね」
巫女は拾い上げた買い物袋から鏡を取り出し、ステラに見せつけた。
「頭?……!」
フードが外れた頭髪に手を当てると何か違和感があった。頭に何かがついている?まるで動物の骨がくっついているような感触であった。
巫女が突き付けた鏡を覗き込むとそこにはよく知っている自分の顔が映っていなかった。
「こ…これは?」
雪のような銀の頭髪、ルビーのような紅い瞳、そして仔牛のように曲がった小さい二本の角を頭に生やした少女が両目を見開き、愕然としていた。瞬きをすると鏡の少女も瞬きをした。
「…悪魔になっている!?」
悪魔とは魔王の眷属。狡猾で残虐な知性を持ち、暗黒魔法によって人間を苦しめる邪悪な存在である。
「どうして…悪魔の姿に……?」
人間が悪魔に変身したという事例は未だ存在していない。他の動物に変身する魔法は存在するが、悪魔に変身する魔法など聞いたことはない。ましてや悪魔になりたがる人間はいない。
この世界では悪魔は『オニ』と呼ばれる存在なのであろう。しかし、いつの間にこんな姿に?これもあの魔法陣の影響なのだろうか?思考するステラをよそに巫女は話を続けた。
「こいつらはあんたの差し金なんでしょ?さしずめ、さっきの三文芝居は奴らへの合図…ってところかしら?」
鏡を袋にしまい、親指で足元の亡骸を指しながら巫女は困惑する鬼に向かって歩きだした。
「そ、そんなことは…がっ?」
巫女は一瞬で距離を詰めて右手でステラの首を掴み、その後ろの大木に押し付けた。
「かはっ!」
衝撃で一瞬息が詰まった。巫女の顔に目をやるとその表情には先程までの胡乱な気配はなく、明確な殺意に満ちていた。
「鬼がいるとわかった以上、生かして帰すわけにはいかないわね」
静かに、そして恐ろしく冷たい声で捕えた鬼に対しそう告げた。彼女の首を抑えるその右手は絞めてこそいないが鋼鉄の首輪のように固く、どれだけもがいても逃れることはできなかった。
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