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第三章
昼寝と新たな任務
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「しかしまぁ…」
昼食を済ませた私は畳に横たわり、同じく横たわるアウルに声をかけた。
「まさか昼寝の時間とスペースがあるとはね…」
ここは食堂の近くに設けられた休憩室。旅館の大広間くらいのスペースに畳が敷き詰められ、押入れの中には多数の座布団が用意されていた。利用する者はそこから自由に座布団を取り出し、座るなり枕にするなりしている。
部屋の一画には魔法テレビが設置され、何人かが横たわりながらテレビを見ている。隅に置かれた朝顔のような植物からリラクゼーション効果のある音楽が流れており、聴いているだけでウトウトしてしまう。こんなファンタジーな異世界でまさか畳の上で寝られるとは思わなんだ。まあ、和風の文化を時々ぶち込むラノベはよく見るけど。
「昼間の仮眠は脳を活性化させる効果があるんですよ。眠れなくても目を閉じてリラックスするだけでもかなり効果があるそうです」
仰向けの姿勢でアウルが解説した。
「…そういえばさぁ…」
「なんですか?」
仰向けのまま私はアウルに声をかけた。アウルは顔を向けることなく返事をした。
「この世界の『勇者』ってどんな奴なの?」
以前ズワースに聞こうと思ったが、邪魔が入って聞きそびれた話題である。その後が忙しくなってすっかり忘れていたが今になって思い出した。昼寝のリラクゼーション効果がさっそく現れたようだ。
「勇者…ですか?」
「ズワースが言ってたのよ。この世界には勇者ってのがいるって」
まぁ、魔王側に魔勇者なんてものがいるんだから人間側にも勇者がいてもおかしくないわよね。
「そうですね…私は直接見たことはありませんが、情報によると各地に点在しているとのことです」
「マジで?」
その言い方だと世界に一人じゃないってことよね?
「やっぱり強いの?」
「かもしれませんね。勇者と相対した者はほとんどが生きて帰って来なかったという報告があります。生還した者が少ないせいで具体的な情報があまり得られず我々は困っております」
アウルは溜息をついた。その様子から察するに勇者という存在は魔族にとって厄介なものなのだろう。だから魔勇者が必要とされているのか。
「それにしたって――ぶへっ!」
顔面に何かが落ちてきた。天井に穴が開き、そこから降ってきたようだ。手に取って見てみるとどうやら手紙みたいだ。魔王の印が描いてある。
「その印…魔王様からの手紙のようですね」
寝返りをうったアウルが印を見て教えてくれた。
「魔王から?どれどれ…」
身体を起こし、封を切って中身を見てみた。
・・・・・・
親愛なる魔勇者よ。こんな形で申し訳ないが。本日の任務を伝える。
その内容は『調査隊の救出・遺跡調査の支援』である。
クラウディ大陸南部に位置するペスタ地方。そこにある砂漠の遺跡の調査隊からの連絡が途絶えた。おぬしにはその遺跡に侵入し、調査隊を救出した後、そのまま遺跡調査の支援を行ってもらう。詳細は現地にある我々の拠点にいる者達に聞くがよい。
昼寝の時間が終了次第、クロムのもとで装備を整えてからアウルの移動魔法でペスタ地方に向かいたまえ。
魔王オグロジャックより。
追伸
納豆に卵を入れるのは邪道だってゴードンに言われたけどどう思う?
・・・・・・
「昼寝終わってからでいいのかよ!てか、追伸どうでもいいわ!」
救出って書いてあるやん!普通こういうのって一刻も争う事態とかじゃないんかい!
「ペスタ地方に派遣されている者達は比較的頑丈な連中ですのでその辺は心配無用です」
姿勢を仰向けに戻しながらアウルが冷静に答えた。
「とにかく、昼寝が終わったらクロムの元へ向かいましょう。砂漠である以上、準備は万全に整えなければなりません」
ホントに昼寝させてくれるのか…。
「でもなんだってまぁ、こんな形で任務を伝えたの?」
普段は魔王の間に私が出向いて魔王から直接聞くのだが。何か事情があるのだろうか?
「あぁ、この時間は魔王様も昼寝の時間ですので」
「魔王も昼寝するのかよ!」
昼食を済ませた私は畳に横たわり、同じく横たわるアウルに声をかけた。
「まさか昼寝の時間とスペースがあるとはね…」
ここは食堂の近くに設けられた休憩室。旅館の大広間くらいのスペースに畳が敷き詰められ、押入れの中には多数の座布団が用意されていた。利用する者はそこから自由に座布団を取り出し、座るなり枕にするなりしている。
部屋の一画には魔法テレビが設置され、何人かが横たわりながらテレビを見ている。隅に置かれた朝顔のような植物からリラクゼーション効果のある音楽が流れており、聴いているだけでウトウトしてしまう。こんなファンタジーな異世界でまさか畳の上で寝られるとは思わなんだ。まあ、和風の文化を時々ぶち込むラノベはよく見るけど。
「昼間の仮眠は脳を活性化させる効果があるんですよ。眠れなくても目を閉じてリラックスするだけでもかなり効果があるそうです」
仰向けの姿勢でアウルが解説した。
「…そういえばさぁ…」
「なんですか?」
仰向けのまま私はアウルに声をかけた。アウルは顔を向けることなく返事をした。
「この世界の『勇者』ってどんな奴なの?」
以前ズワースに聞こうと思ったが、邪魔が入って聞きそびれた話題である。その後が忙しくなってすっかり忘れていたが今になって思い出した。昼寝のリラクゼーション効果がさっそく現れたようだ。
「勇者…ですか?」
「ズワースが言ってたのよ。この世界には勇者ってのがいるって」
まぁ、魔王側に魔勇者なんてものがいるんだから人間側にも勇者がいてもおかしくないわよね。
「そうですね…私は直接見たことはありませんが、情報によると各地に点在しているとのことです」
「マジで?」
その言い方だと世界に一人じゃないってことよね?
「やっぱり強いの?」
「かもしれませんね。勇者と相対した者はほとんどが生きて帰って来なかったという報告があります。生還した者が少ないせいで具体的な情報があまり得られず我々は困っております」
アウルは溜息をついた。その様子から察するに勇者という存在は魔族にとって厄介なものなのだろう。だから魔勇者が必要とされているのか。
「それにしたって――ぶへっ!」
顔面に何かが落ちてきた。天井に穴が開き、そこから降ってきたようだ。手に取って見てみるとどうやら手紙みたいだ。魔王の印が描いてある。
「その印…魔王様からの手紙のようですね」
寝返りをうったアウルが印を見て教えてくれた。
「魔王から?どれどれ…」
身体を起こし、封を切って中身を見てみた。
・・・・・・
親愛なる魔勇者よ。こんな形で申し訳ないが。本日の任務を伝える。
その内容は『調査隊の救出・遺跡調査の支援』である。
クラウディ大陸南部に位置するペスタ地方。そこにある砂漠の遺跡の調査隊からの連絡が途絶えた。おぬしにはその遺跡に侵入し、調査隊を救出した後、そのまま遺跡調査の支援を行ってもらう。詳細は現地にある我々の拠点にいる者達に聞くがよい。
昼寝の時間が終了次第、クロムのもとで装備を整えてからアウルの移動魔法でペスタ地方に向かいたまえ。
魔王オグロジャックより。
追伸
納豆に卵を入れるのは邪道だってゴードンに言われたけどどう思う?
・・・・・・
「昼寝終わってからでいいのかよ!てか、追伸どうでもいいわ!」
救出って書いてあるやん!普通こういうのって一刻も争う事態とかじゃないんかい!
「ペスタ地方に派遣されている者達は比較的頑丈な連中ですのでその辺は心配無用です」
姿勢を仰向けに戻しながらアウルが冷静に答えた。
「とにかく、昼寝が終わったらクロムの元へ向かいましょう。砂漠である以上、準備は万全に整えなければなりません」
ホントに昼寝させてくれるのか…。
「でもなんだってまぁ、こんな形で任務を伝えたの?」
普段は魔王の間に私が出向いて魔王から直接聞くのだが。何か事情があるのだろうか?
「あぁ、この時間は魔王様も昼寝の時間ですので」
「魔王も昼寝するのかよ!」
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