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第26話 第2騎士隊長と第3騎士隊長
しおりを挟む──双熊の変異種……?
確か双熊って言うと確か俺も戦ってるな? 記憶だと言葉のまんま、首が2つある熊の魔物だった筈だ。
「2日連続で〝変異種〟の出現ですか。でも〝アーデルハイト王国〟の方々も無事こちらに着いたと言う事は、大事なかったと受け取って宜しいですか?」
「──はい。アーデルハイト王国の〝千撃〟と、その場に駆け付けた、ギルドマスターにより〝双熊〟の〝変異種〟は、既に討伐済みとの事ですじゃ」
「そうですか。それは何よりです」
ホッ……とした様子のフォルタニア
「〝千撃〟殿からの伝言で、双熊の〝変異種〟を含め、魔物達の集まり方に、不可解な点があると伺ってます。可能なら辺りを少し調べてほしいとの事です」
次に口を開いたのは、背中に白い翼の生えた長い緑色の髪の美女〝第3騎士隊長〟のヴィエラだ。
「誰かが糸を引いている可能性があると?」
「そういうことかと思われます。可能性としては〝魔族〟もしくは〝魔王信仰〟の手によるものかと──」
(……魔王信仰? また知らないのが出てきたな?)
「分かりました。ヴィエラ隊長──第3隊から何名か集めて、調べていただいてもよろしいですか?」
「わかりました、お任せください」
「適任でしょうな、索敵に置いては、ヴィエラちゃんの右にでる者はそうはおらんからのう!」
ガハハ。とリーゼスは軽く笑う。
「我々からの報告は以上です」
『以上です』と報告を終える、ヴィエラのその言葉に合わせて、リーゼスも軽く頭を下げる。
「ご苦労様です。アーデルハイト王国の王族の方々の到着と魔物達の件──確かにお伺いました」
と、フォルタニアは丁寧に報告を受理する。
「……と、報告も終えた所で」
ふぅ……と少し方の力を抜くヴィエラは、
「第8隊の友人て貴方達だったのね! 昨日のヒュドラの件は聞いているわ。本当に無事でよかった……!」
と、クレハ達に話しかけて来る。
「ヴィエラさん……ありがとうございます!」
クレハはペコリと頭を下げる。
「私は正直……生きた心地がしませんでした……」
昨日を思い出してか顔が青くなるエメレアと、その横ではコクコクとミリアが頷いている。
「システィアちゃんも随分危なかったそうじゃの?」
「はい……と言いますか、ユキマサ君がいなければ、システィア隊長と、私は死んでいた可能性が高いです」
チラりとクレハは俺を見ながら言う。
「ユキマサというと……おお、見ない顔じゃと思っておったが。お主が先日のヒュドラの〝変異種〟を単独で討伐したという、確か──〝黒い変態〟じゃったかな? だが、妙じゃの? 聞いておった話と比べると、わしにはそうお主は変な奴には見えんがの……?」
「──オイ、待てコラッ! 誰が〝黒い変態〟だ! 一応聞いておくが、それは何処のエルフに聞いた?」
(誰から聞いたかは、火を見るよりも明らかだが……念の為、その話の出所を聞いておいてやろう)
「待ちなさいよ! 何でエルフに絞るのよ!」
と、抗議してくる〝明らか〟こと、エメレア。
「──ッ……それもそうだな……」
確かに、この場にいる無実なエルフの、フォルタニアを容疑者に含めるような言い方は、流石に悪い。
「悪いな、爺さん。質問を変えるぞ? ──それ、何処のエメレアに聞いた?」
「な ん で 私に絞ったのよ!!」
「お ま え に心当たりがあるんだよ!!」
むしろ、心当たりしか無いと言っても過言じゃない。それに、どう考えても話の発端はコイツだ。
「ほっほ。確かにわしがこの話を聞いたのは、そこのエメレアお嬢ちゃんじゃよ?」
(──そらみろッ!)
「むむむッ……だ、だったらどうしたって言うのよ!」
このやろ……開き直りやがったぞ……!?
「それに、黒い変態で、女誑しなのは事実でしょ!」
「何で、サラっと何か増えてんだよ!」
まあ、全体的に黒いのは認めるけどさ。
「さーて、何のことかしらー」
プイッとそっぽを向き惚けるエメレア
「ヘタクソ! 惚けるなら惚けるで、もう少し何かねぇのか!? 下手すぎて、逆に信じちまいそうだったじゃねぇか!」
「へ、ヘタクソって何よ! 最ッ低! こっちだって頑張って惚けてるんだから、もう少しちゃんと気を使いなさいよ! ──バーカ、バーカ!」
べーと舌を出してくるエメレア。
てか、最後は逆ギレじゃねぇか! それに『バーカ、バーカ!』って……ガキかコイツは……?
すると……
「エ~メ~レ~ア~ちゃん!!」
俺とエメレアの会話を、隣で聞いていたクレハが、ちょっと怒った感じでエメレアの名前を呼ぶ。
「く、クレハ……! えーっと、違うのよ? これは……その……う……ご、ごめんなさい…」
(──瞬殺かよ……?)
名前を呼ばれただけで、撃沈するエメレア。
こいつ、一周回って面白く思えてきたぞ?
「もぅ……喧嘩はダメだよ。まあ、確かに私もユキマサ君は女誑しな所はあると思うけど……」
じーっとクレハは俺をジト目で見てくる。
「お前もかよ……だから何でそうなる……?」
まさかのクレハからも、俺は女誑しと言われる。
そういえば。確か昨日もクレハは婆さんに俺の事を話してる時に『あ、でもちょっと女誑しかも』とか言ってた気がする──。
「………具体的には……エルルカさんの事とか……?」
「……う、……あー……。あれは……別に……」
お、俺は特に何もして無いぞ……?
「別に……ね……ふーん……そうなんだ……ふーん……」
相変わらず、ジト目のクレハは更に不機嫌になる。
「──え、エルルカと言いますと〝六魔導師〟の〝剣斎〟エルルカ・アーレヤスト様ですかっ!?」
フォルタニアが驚いた様子で聞いてくる。
(そういや、この世界だとエルルカは有名人らしいな。それに人類屈指の実力者らしいし……)
「あ、はい……そうです」
と、クレハがファルタニアの質問に答える。
「し、失礼しました。プライベートな事でしたね。少し気になってしまったもので、すみません──」
おほん……と軽く咳払いをするフォルタニア。
「ユキマサ……貴方〝剣斎〟にまで何かしたの?」
うわぁ……とドン引きのエメレア。
「別に何もしてねぇよ。あ、でも、剣は貰ったな?」
「そ れ と ユキマサ君……エルルカさんにプロポーズされてたよね……?」
「嘘ッ……!?」
「……お、驚きました……!」
「それ本当なの?」
「なんじゃと!?」
「わ、わぁ、ユキマサさん結婚するんですか……?」
と、クレハの台詞に、エメレア、フォルタニア、ヴィエラ、リーゼス、ミリアは、皆して、それぞれ驚いた反応をし、俺の顔を一斉に見てくるのだった──。
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