生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
48 / 378

第47話 魔王信仰

しおりを挟む


「──おいッ、兵士共! お前ら邪魔だ、下がれ!」

 すると、そのフィップの言葉に、隊を指揮していた、髭の兵士がその場の兵士を代表し返事を返す。

「フィップ殿!? し、しかし、そういう訳には!」
「いいから、早く行け! お前らじゃ手に余る!」

 勿論だが、その間もこの敵は待ってはくれない。

 どんどん大きくなり〝黒い影が集まった上半身だけの巨人〟みたいな感じになった、この〝黒影元マント〟は──此方に腕を振りかざし、攻撃してくる。

 動きは比較的ゆっくりだが、腕自体が大きいので、このスピードでも広範囲で、それなりの威力はあるだろう。の片腕の大きさだけでも、大型トラックぐらいの大きさがある。

 俺はそれを阻止する為〝月夜〟を手に取り、タイミングを計るが……

「今度は何だ!?」

 ヒュンッ!! ダダダダダン!!

 と、上空から何者かが〝黒影元マント〟を〝魔法〟で攻撃する。

「──アーデルハイト王国の王女様方々! ご無事ですか! 私はギルド〝第3騎士隊所属〟──フィオレ・フローリアと申します! 第3騎士隊、以下数名、微力ながら援護させて貰います!」

 と、緑髪ショートの背中に白い翼のある〝鳥人族ハルピュリア〟の女性が話かけて来る。

 年は、十代半ばぐらいだろうか?

 そして、そのフィオレと名乗った少女に続き──同じく背中に翼のある〝鳥人族ハルピュリア〟が、6人程がこちらに向かってくる。

「フィオレ姉さん! 僕も負けないからね! それに、あの黒いスイセン服の人が、ヴィエラ姉さんの恩人かな?」
 
 最初に話してきた緑髪ショートのフィオレの隣を飛ぶ、同じく〝鳥人族ハルピュリア〟の緑髪の少年が、俺を見て何か話してるが「レオン、後にしなさい!」と怒られている。

「アリス、お前も兵士と下がれ──〝禁術〟だか、何だか知らんが、あの〝黒影元マント〟の狙いは、お前みたいだからな?」

「嫌なのです。そもそも、ここから一歩も動かなければ、お前が私を守ってくれるのでしょう? なら、私はここを動かないほうが安全なのです」

「──ッ……分かったよ。そう言われたら返す言葉も無いしな」

「おうおう、えらいお嬢に気に入られたな? それにギルドで噂になってた〝黒い女誑し〟ってのも、お前のことか?」

「おい、待て、フィップ! それ誰に聞いた!?」

「ユキマサ、フィップ、来るのです!」

「──グォォォ!!!!」

 先程と同じパンチだ。

 つーか、腕、また少し大きくなってないか!? 
 成長期にしても早すぎるぞ?

(てか、まずコイツ上半身しか無いしな……そもそも、この〝半巨人の黒影元黒マント野郎〟を成長期だとか、に見るのは間違ってるか……)

 それに口から出る、黒紫の煙を吸うと〝呪いカース〟を受けるらしいが──あと、それとは別に、コイツの黒い身体に纏っている〝黒い煙瘴気〟みたいなのも、触れてしまえば、普通にとかじゃ済まなそうだな。

(今の所は、相変わらず〝真っ黒な上半身のみの人形ひとがた巨人お化け〟みたいな姿で、サイズは家屋ぐらいだが、これ以上に大きくなったりして、更に厄介になる前に、早めに片付けたほうがよさそうだ……)

 ──ヒュンッ! ザクザクザクザク! ドバンッ!

 俺は〝月夜〟で、迫り来る〝黒影元マント〟の、エセ巨人パンチを取り合えずは……

 ──斬って、斬って、斬って、斬るッ!

 最後は〝魔力〟を纏った〝月夜かぐや〟を逆手に持ち、下から上に振り上げるような形で力任せに吹っ飛ばす。

 ドシャーン!! 

 と〝黒影元マント〟は俺が振り上げた──〝魔力〟を帯びたと、で体勢を崩して大きく倒れる。
 
「──うわッ、すっご!? 何、あれ……本当にヴィエラ姉さんの言ってた通りみたいね……」

 大型トラック程度の大きさの〝黒影元マント〟の腕が、ひじの辺りまで、野菜みたいにザクザクと切れるが……どうも手応えが

 斬った後の腕からは、直ぐにモワモワと黒い煙があがり、その煙に包まれ、傷はすぐに治ってしまう。

「身体の何処かに〝魔力〟のになる物がある筈なのです。それを破壊しなければ、コイツは倒せないのです!」

(……なるほど、そういうことか?)

「──敵襲!! 西より、新たに〝魔王信仰〟と見られる敵が接近中です! 数はおよそ4人です!」

 空を飛び回って辺りを見ていた、第3騎士隊の緑髪の少女──フィオレが慌てた様子で知らせてくる。

(4人か……どの程度の奴かによるが、もしこの〝黒影元マント〟みたいにのが4人なら面倒だな?)

「その愚か者共は、この老骨にお任せください!」

 すると、ストン! と華麗に、この場に飛び降りて来たのは〝妖怪世話焼き爺〟こと──アーデルハイト王国の〝千撃せんげき〟だ。

(クシェリの踵落としといい、フィップの魔法といい、そして最後には妖怪世話焼き爺とは……今日はやたらと、空から何かが降って来る日だな)

「やっと来たのですね。ジャン、今までどこをほっつき歩いていたのですか!」
「お嬢様、ご無事な様子で何よりでございます」

(てか、アリス『どこをほっつき歩いてた』も何も、お前が、その妖怪世話焼き爺から逃げろって言って、逃げてきたんだろうが……)

「オイ、老いぼれ小僧! そっちは任せたぞ? あと兵も連れてけ──この〝禁術者〟相手じゃ、負傷者が出るだけだ!」

「かしこまりました。では、フィップ先輩は、あちらのデカブツの相手をお願いできますと言うことですかな? 呉々くれぐれもお気をつけくだされ〝魔王信仰〟の者の行動は、常に常識から逸脱しておりますので」

「ハハハ、みてーだなぁ? 今、一杯食わされた所だ。こりゃ、あたしも歳を取ったか?」

(そーいや。コイツの歳はいくつ何だろうな? 吸血鬼ってのは、やっぱ長寿なのだろうか?)

「──失礼します。初めまして、私は〝第3騎士隊所属〟フィオレ・フローリアと申します」

 スタッ! と、緑髪ショートの鳥人族ハルピュリアの少女──フィオレが〝千撃〟の前に降りてくる。

「現在ギルドより〝第3騎士隊長〟及び──〝第8騎士隊長〟率いる、残りの〝第3隊〟と〝第8隊〟が此方へ向かっております! こちらは、ギルドの方で対応いたしますので〝アーデルハイト王国〟の皆様は、アリス王女を連れ、この場からお下がりください!」

(──第8隊……!? マジか……!)

 やっべー、エメレアとか来るじゃん?
 後、エメレアとか? エメレアとか?

 物凄く面倒な予感しかしない……

「ど、どうしたのですか?」

 急に『まじか……』みたいな顔をする俺を見て、頭に『?』を浮かべ、不思議そうに聞いてくるアリス。

「──要するに、あれを倒しちまえばいいんだな?」

 極論。あの──上半身のみの〝黒影エセ巨人〟をさっさと倒して、この場から去ればいいんだろう?

 〝触らぬエメレアエルフに祟りなし〟だ。

 ──よし、急ごう!
 
「オイ、あれはあたしが倒すぞ?」
「んな、暇は無い!」

 即答する俺に、フィップは「……」と無言でいる。

 ──それに少し強めの魔法も試してみたいしな?

 そして俺が〝魔力〟を込め始めると……

 バリバリッ! バチッ! バチッ!

 俺の両手から、強めのの走るような音が鳴り出す──そして、その音は次第に強くなって行く。

(遊びの対人相手でも、もし殺しちまったら困るからな? だからさっきは使えなかったの魔法だ!)

「アリス、あれの核を潰せばいいんだよな?」
「その筈なのです。何をする気ですか?」

「そうだな。強いて言えばだ」

 お怒りであろうエメレアからな? 九分九厘くぶくりん『クレハに迷惑かけるんじゃないわよ!』みたいな感じで、になってらっしゃることだろう──

 まあ、クレハには後で謝っておこう。

「お前は何から逃げるつもりなのです……?」

 ズレた話をする俺に、またまた不思議そうに、アリスは『?』を頭に浮かべる。

「おい、フィオレって言ったな? 今戦ってる〝第3隊〟の奴らを退かしてもらえるか? 後は俺がやる」

 このやり取りの間、第3隊の〝鳥人種ハルピュリア〟の連中が、空から上手く〝エセ巨人の黒影元マント〟を引き付けてくれていた。

「わ、分かりました! ──皆、一度下がって!」

「「「「了解!」」」」

 フィオレの一言で、直ぐ様〝第3隊〟は、その場を離れる……ちゃんと、統率されてるんだな?

 そして俺は……
  
 ──バチ! バチ! ゴロゴロ!

(さて、こんな感じか?)

 俺はを使い、そして技名を唱える!

「──〝四鬼しき雷来らいらい〟!」

 すると辺りが、一瞬、ピカッ! と大きく光り──

 ──ゴロゴロ、ドッカーンッ!!!!!!

 と、落雷のような音が辺りに強く響き渡る!!

 そして、その〝雷撃〟が〝黒影元マント〟を直撃すると、その〝雷撃〟が全身を焼き焦がし──
 数瞬で〝元影黒マント〟を跡形も無く消し去る!

 それにしても、技名を出してみるってのも、
 ──思いのほか、楽しいじゃねぇか!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...