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第148話 魔王の一撃
しおりを挟むあれが魔王──
人型では無いな。魔族のアルケラのが人に近かった。勝手な最近の漫画とかのイメージだともっと人間に近いか、外見は人間と差ほど変わらないような魔王を想像していたが、思ったよりザ・モンスターだったな。
パッと見だが、会話はできそうに無いな。力の限り暴れる化物、少なくとも死に際まで追い詰めても世界の半分をどうのみたいな事は言って来なさそうだ。
まあ、世界の半分で手を打ってやるつもりは無いけどな。俺が頼まれたのは世界全部の平和だ。
夢物語と笑いたい奴は笑え、俺は諦めないぞ!
「α、Ω──!!」
シラセの呼び声で、透明な〝人工精霊〟である、犬神のαと白龍のΩがシラセを守るような位置に付く。
「第一に奴孔楼を狙ってください! あの魔族の能力が一番厄介です!」
瞬時にαとΩが奴孔楼を狙い攻撃を仕掛ける。
だが……
──ヒュン、バン!
と、奴孔楼は辺りに散らばる黒い玉──〝座標石〟と自分の位置を入れ替え、αとΩの攻撃を避ける。
その時だ、シラセの方を向いた魔王が大きく口を開けると、その口元に光が集まる──嫌な感じだ。ビリビリとあの場所の空気だけ重い……
つーか、これはどうみても、さっきのノアの結界にヒビを入れた熱線だ!
シラセは険しい顔でその様子を見て、自身の剣に魔力を込める。魔力を込めた剣で受け止める気だ。
だが、あれでは恐らくは防ぎきれない──
シラセは強い、この世界でも指折りだろう。
これはシラセが弱いんじゃない──
魔王が桁違いに強いのだ!
幅数百mの隕石3つを易々と防いだノアの結界に致命的なヒビを入れるような光線だ。
客観的にだが、結果だけ見れば、あの熱線は、その隕石3つよりも威力が強いと言うことになる。
万が一、街に当たったら壊滅的な被害を受ける。そんな物が人体に何て当たったら、恐らくシラセでも即死だ。
ビュン、ドババババババンッ──!!
魔王ガリアペストから熱線が放たれる。
αとΩが駆け付けようとするが、間に合わない。
──バン!!
俺はシラセと熱線の間に入り〝アイテムストレージ〟から取り出した剣に魔力を強く込め、シラセに向かう、魔王の熱線を真正面から止める!
(やはり、重いな……)
──ギンッ!
「ゆ、ユキマサさん!?」
「──よう、シラセ? 任せっきりで悪かったな。あっちはもう大丈夫だ、怪我は無いか?」
「あ、はい、わ、私も大丈夫です……お陰さまで」
シラセはホッと胸を撫で下ろす。
さっきの魔王の熱線は、自分の剣と魔力じゃ、防ぎきれないのが分かってたような表情だ。
「あれが魔王か、ちょっと行ってくる──」
こちらから行こうと思ってたんだが、向こうの方から、わざわざ現れてくれるとは気が利いている。
異世界召喚以降は、毎日魔王の事が頭から離れなかった。正直、どんなもんかの興味もあったし、それにこれは神様との約束だしな、それも超美人の。
そうして俺が魔王に向き合おうとした、
次の瞬間──
──ヒュン、バン!
魔王が消える。
「は──消え……いや、違う、これはさっきの〝座標石〟での移動かッ!?」
不味いぞ、どこに行きやがった!?
「しくじりました……やはり先に奴孔楼を倒すべきでした。私のミスです、すみません」
帽子を直しながらシラセが悔しげに言う。
街の何処かにはいる筈だ、すぐ分かる、追うぞ!
*
──大都市エルクステン
ギルド・ギルドマスター室──
「エメレアさんからの連絡は確かですかッ!?」
ロキは珍しく本気で焦り、目の前にいるフォルタニアに問いかける。
「はい、間違いありません。魔王の出現、それに隕石を防いだ、街を囲んだ大聖女様の結界も、魔王の攻撃により破壊されたようです」
「現在、魔王の出現場所には第8隊が?」
「はい、それと〝六魔導士〟の──シラセ・アヤセ様と、ユキマサ様がおられるようです」
「〝独軍〟と彼が!? それは一体どういった偶然ですか! 彼らならば、もしかすると!」
ロキは兆しが見えたとばかりに表情を明るくする。
「はい、私も報告を聞いてそう考えてます」
「魔王の一番の狙いは恐らく、この都市の〝八柱の大結界〟の、その名の通り8本の基盤である〝魔術柱〟の破壊でしょう。残りの〝魔術柱〟は、この都市を含む四ヶ所に合計4本、これは絶対に死守しなければなりません」
すると、フォルタニアが耳に手を当てる。
何か〝精神疎通〟で受け取ったようだ。
「──ロキ、悲報です。経緯は分かりませんが、魔王が〝聖教会〟の大聖堂前に現れました」
*
──大都市エルクステン
〝聖教会〟大聖堂──
「──大聖女様、ま、魔王が……急に……!!」
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そう言いながら、ノアは大聖堂の外に出る。
外に出ると、直ぐに魔王ガリアペストが視界に入って来る。
その近くには大勢の人が倒れている。
〝座標石〟で、突如として現れた魔王に対処できなかったのだ。
だが、魔王はまだ何もしていない。
ただ単に、現れ、そこにいるだけだ。
それなのに被害は甚大であった。
魔王ガリアペストが現れた場所には不自然にクレーターができている。
魔王の迫力に押され腰を抜かす者、そして魔王の吐く毒に苦しみ、のたうち回る者がいた。
魔王ガリアペストの周囲に渦巻く、2種類の色の紫と黒ガスのような物──それは強烈な毒と病原体であった。
それに触れた者は、体に黒い発疹が出て、急激な高熱に苛まれている。
その数はもう80、90、100人を越えた。
そんな中、魔王の毒ガスを平然とした顔で通り、真っ直ぐ魔王ガリアペストの前まで歩いて行き、極自然に魔王ガリアペストに話しかける少女の姿があった。
「こんにちは、魔王様──貴方を止めに来たよ」
銀髪の美しい長い髪を風に靡かせながら〝大聖女〟──ノア・フォールトューナは、いつもと変わらない落ち着いた口調で、魔王ガリアペストを相手に優々と告げた。
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