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第343話 小さな手
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エメレアとミリア、そして冒険者パーティー〝吟遊詩人〟の一行は〝ルスサルペの街〟にある、団子屋・花選に来ていた。
「おばちゃん、こんにちはございます!」
「あらあら、ミリアちゃん。エメレアちゃんも、それに〝吟遊詩人〟の皆さん、珍しい組み合わせね。いらっしゃい、よく来てくれたわね、ゆっくりしてってちょうだいね!」
お邪魔します。と、一行は頭を下げる。
「おばさん、今日は私がお団子を買いたいの。3種類の団子を3本ずつ、お供え用で3セット貰えますか?」
エメレアが一歩、足を踏み出し言う。
「お供え用かい。直ぐに用意するわね」
「ごめんなさい、よろしくお願いします」
パタパタと店の奥に走るおばさんを見ながら、一行はしばしその場で待つ。
「にしても、団子屋・花選。ミリアちゃんとの事を思い出すな」
「ああ、確か盗賊に店が絡まれてる時に俺たちが割って入ったがいいが、押されて危ない所にミリアちゃんが、思いっきり体当たりして現れて、幹部の男を吹っ飛ばして助けてくれたやつか」
「あれがなかったら私たち死んでたかもねぇ」
エルセム、エルバ、レベッカが話をする。
「凄いわ、ミリア、ヒーローね!」
「そ、そんなこと無いよ。私も必死だったから」
きゃー、っと、ミリアの頭を撫でるエメレア。
何だかんだでやっぱり嬉しいミリア。
そんな光景を微笑ましそうに見る吟遊詩人一行。
エメレアがお団子を受け取ると、店を出る。
すると誰がみても名残惜しそうにお店を見るミリアにエメレアが優しく声をかける。
「帰りにまた寄りましょ? お昼はここで決まりね」
するとミリアは「!」っと、少し驚いた表情を見せた後──「うん!」と、花が咲くような笑顔で笑う。
次にエメレアは街で手に持てるだけの花束を買った。花の匂いというのは全くもって嫌いじゃないエメレアだが、花の匂いと言うのが、エメレアに取ってお墓参りの匂いとなってきている事に気づいて、一瞬だけ寂しそうな顔をする。
「エメレア、大丈夫? 悲しい顔……」
「えっ……あ、ごめんなさい。少し昔を思い出して。何だろ、この気持ち。兄さんにやっと、やっと会えるのに、震えが止まらないの……怖い、怖いんだわ……私」
エメレアの右手に小さな手が重なる。
温かい優しいミリアの手だ。
「ミリア……」
「エメレア、大丈夫だよ。何があっても私が付いてるから。今ここには居ないけどクレハもシスティアお姉ちゃんもお婆ちゃんもずっと一緒だよ」
だから心配無いよ。と、ミリアは笑う。
「エメレアは私が辛い時に一緒に居てくれた。手を握って励ましてくれた。私、嬉しかった。本当に心強かった! だから今度は私の番、私にできることなら何でもするよ──頼りないけど私じゃダメかな……?」
真っ直ぐな目だ。ミリアは真剣に話す。
「うん、うん……ありがとう……ミリア、ありがとう」
止まる気配の無かった震えが止まった。
よし、っと、エメレアは気合いを入れ直す。
「皆さん、お願いします。私を兄さんの所へ連れてってください」
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