親父の形見が無骨で巨大な剣~キセキのありふれた世界で~

穴澤メェ~

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プレイヤーズ・ハルドナリ

4.汚物を浄化する剣②

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「なんやイタル、その可愛らしい耳は」

 日が変わりアガタザルの討伐へ赴いた三番隊は、山道を少し進んだところにある、古びた立て看板の前で準備を整えていた。
 鬱蒼と茂った森はどんよりとした空気に包まれ、荒れた山道はあちこちから無造作に草が伸び大部分が緑に覆われている。人間の往来が消えて久しいこのような景色は魔族が蔓延るのにうってつけだった。

「昨日帰ってから見つけたんですけど、これ使えるかなって思って持ってきたんです」

 布にくっついたふさふさとした獣の耳をイタルは手に持っていた。茶色く若干丸みを帯びている。イタルはそれを髪に巻き付け装着する。耳はほどほどに大きさを持っているため、少しお辞儀をする形になった。

「あはは、カワイイ~」

 もふもふした耳を愛おしそうに触るカスミ。

「下が作業服なのが台無しですけど、中々似合ってますね」

 スズもカスミに賛同し、にやけ面でイタルを眺めている。
 イタルは偵察役を全うするため、昨日の打ち合わせ通りの格好であった。銀色の清掃服は清潔感を通り越して潔癖を印象づけるほど異様な光を見せている。

「別に、場を和ますために持ってきたわけではないんやろ?」

 フキノも少しの間「これはなかなか……」とニヤニヤしながら眺めていたが、すぐに任務を全うする隊長の顔に戻りイタルに尋ねる。

「ええ、これは聴覚が異常に発達するかわりに、嗅覚をしばらく失う装備です」

 ベタベタと耳を触られるがままにしていたイタルは流石に恥ずかしそうにカスミを振りほどく。

「なるほどな、においをかき消しながら偵察も捗るって寸法か、でも嗅覚を失うってのがちょっと怖いけど本当に装備していい奴なんかそれ?」
「一応買うときに確認もしましたし、自分でよく”呪い”の検証もしておいたので大丈夫です」
「まあ、お前さんがいうならそれでいいけど……」

 装備に付与するイノリは、製作者の技術や素材の良し悪しでどうしても性能に差が生まれてしまうものだが、凡庸な素材であってもその装備に呪いをかけることで強力な奇跡を生み出すことが可能である。
 以前イタルが装備していた灼熱の呪いの装備もその技術を使い凡庸な鎧に異常な炎の耐性をつけることに成功していたし、今回においてはただの宴会道具のような小物に聴覚を発達する能力を付与することが可能となっているのだった。

「よくそんなもの見つけてきますよね」

 スズの言う通り簡単に流通しているわけではないこのような装備だが、元々収集癖のあるイタルはこのような珍しい装備をたくさん抱えているのだった。

「まあ、ええわ。じゃあちゃっちゃと存在転移でイタルの存在を消すとしようか」

 全員の準備が整ったところで少し怖い物言いでフキノが音頭をとる。

「じゃあ、昨日の作戦通り、まずはカスミにイタルの存在感を移す、ええな?」

 存在感が増すということは逆に言えば少しの行動で相手に気づかれてしまうということだ。単体の戦闘能力で頭一つ抜け、所作に無駄のないカスミは有事の際の囮として適任である、と、昨日の会議で決定していた。
 隊長に視線をかわされ準備は万端であると二人は頷く。フキノはそれを見て手のひら大の鍵穴のついた手帳を取り出し長い詠唱を始めた。
 フキノが手帳を取り出したのはけして彼女が記憶力に乏しいというわけではなく、彼女はこの手帳を媒体にしてキセキを発現させるプレイヤーだからである。
 プレイヤーがキセキを発動する際、自分が大切にしてきた何かを媒体にすると効果が増すということは大昔から判明していた。老婆が偶然キセキを発動していたとき握りしめていたのは長年を共にしてきた杖だ、そこから人間はキセキの原理を一つ見つけ出したのである。
 鍵穴のついた小さな手帳をフキノは大切そうに扱っている。いつも気さくな隊長ではあるがたまに物憂げにこの手帳を見つめているときがあり、「中に何が書いてあるのか?」は、イタルをはじめ三番隊全員疑問に思ってはいたがそれを口に出したことはなかった。

「Parabola」

 聞きなれない詠語が最後に響く。キセキはどうやら成功した様だった。

「うん、これでええはず。実行した人間のみ影響を受けないって話だから……どうやお二人さん互いの変化は?」

 実行者、すなわちフキノを除くこの場にいる人間は、イタルの存在を認識できず、カスミの存在を強く認識するようになるはずである。
 フキノの言葉を聞いてイタルとカスミは目を合わせる。

「なるほどたしかに……」

 イタルの視点ではカスミの輪郭が妙にハッキリと映り吸い込まれるような感覚を得ていた。しなやかな顔の輪郭、少し下がって凛とした首筋、喉元の窪み、豊かに膨らむ胸……危ねえ!
 カスミの胸まで視線が下がったところで、自制心の働いたイタルは目線をカスミの顔の方に戻した。

「……あれ?」

 イタルはその瞬間違和感に気が付く。なぜならカスミは、捉えていたからである。

「あれあれ?」

 そっ、と横に移動したイタルを目で追うカスミ。そのまま近づいてイタルの頭に付いたケモミミをもふもふと触り始めた。完全にイタルを認識している様子である。

「嘘やろ?」

 素っ頓狂な声を上げたフキノは焦り始め、記憶の中の詠語を辿り間違った部分はないかを確認している。

「いやいや、フキノさん私にはちゃんと効いてるみたいですよ。今カスミさんは虚空をなでなでしています」
「マジ? じゃあ、一応は成功してるんやろか……ほんまなんやねんカスミは……」

 耳を撫でながら「えへへ」と少し照れたような笑いを見せるカスミ。

「別に褒めてるわけちゃうよ、不思議な子やなあ……とりあえずスズにはちゃんと効いてるみたいだから、イタル、そっと移動してスズに触れてみて」

 隊長としてはきちんとキセキが効いているかどうかの確証が欲しいのだろう、ちょっとした悪戯心も見え隠れしてはいたが。

「いやいやいや! ちゃんと見えてませんから、別に確認する必要はないっすよ!」

 突然の指名に驚くスズは「先輩、やるならやるで、へんな所は触らないでくださいよ!」と念を押した。

「……ひぅ!」

 数秒後、スズの肩がビクンと震える。

「せ、先輩、ほっぺは充分へんなところでしょ!」
「や、肩とかだったら見えてないことの証明になんないかと思って……」
「にしても、触り方ってもんが、人差し指でツーンじゃないっすよ! って……あれ? なんかちょっとだけ先輩がぼやけて見えるような……」

 目をこすりながらイタルがいる方を見つめるスズ。

「おう、ばっちりみたいやな。説明してなかったけど相手に干渉すると効力が薄まる仕組みらしい。だから戦闘は極力避けてほしい、分かってると思うけど」

 スズの反応を見て満足そうに頷いたフキノ。忠告を受け取ったイタルは「了解しました」と頷く。

「じゃあ、そろそろ……」

 ケモミミと清掃服とそして大剣を背負った男は覚悟を決めて一歩を踏み出した。

「効力は一時間ぐらいやから気をつけてな。戻る気配がなかったら探しにいくから」

 歩みを進めながら振り返ったイタルは屹然とした表情で応える。

「行ってきます」

 残された女性三人は薄暗い山道をゆっくり進んでいく男の背中を、不安な面持ちで見送るのであった。





 単独行動となったイタルは寂しい山道を慎重に進む。聴覚が発達しているおかげで、木々が風にざわめく音が鮮明に耳に届いてくる。件の廃村へ至る道は、ぼうぼうと生えている草もだんだんと深くなっており、獣道の様相を呈していた。
―――――転移門の出現は人間の生活圏を飛躍的に広げると同時に、人々を都市へ引き込んだ。設置と機能の維持に莫大な費用のかかる転移門は、勿論大都市から優先して建設されていく。
 転移門という便利な存在の出現で生活の水準が著しく引き上げられると、この世界の人々はこぞって転移門の敷かれた都市に集まり始めた。
 人材がまばらに広がるよりも拠点に集約された方が魔族に対抗しやすいのは明白で、そういった意味では安全かつ効率的な進歩を遂げたと言えるが、今回のように人が消えた村に魔族が出現するようになったのは皮肉な結果と言わざるを得ない。

(少し、寂しい気もするな)

 道端に倒れた看板を見つけたイタルは、感傷的な気分を覚える。
 自分の生まれ故郷であるシラサトは都市の体裁を保ってはいるものの、転移門で自由な移動を行えるようになった時代では大都市とそれ以外という感覚が人々の間に芽生え始めていて、それ以外に分類された都市はいつしか名前を忘れ去られるのではないだろうかと時々不安になる。
 棄てられた村にももちろん名前はある。「ヤエスガ」倒れた看板にはそう書かれていた。

 しばらく進むと路傍に一軒の小屋が建っているのが見えた。村の外れに小さな小屋があるということは昨日聞いていたので、ここまでは情報通りという訳だ。逆に言えば、ここから先は調査の及んでいない範囲である。イタルは背の大剣をそっと触り呼吸を落ち着かせた。

(でもなんで、この小屋を拠点にしなかったんだろう)

 村の中心、おそらくアガタザルがたむろする場所から適度に離れているし、先ほどの看板近くで準備をするよりはこの小屋で行った方が効率的に思えた。

(うっ! ……なるほど)

 小屋に近づき中を覗いたイタルは顔をしかめる。いくつか家具の残った家の地面は、茶黒いぬかるみで埋め尽くされていた。嗅覚を失っているイタルではあったが、その見た目だけで吐き気を催すには充分だった。流石にこの近辺に拠点を敷くのは無謀というものだろう。

(だけど、アガタザルの気配は全くしないな)

 不思議にも、アガタザルのありったけの痕跡がありながら、未だ足音の一つも両耳には入ってきていない。実は不良品なのだろうか。頭のケモミミを触りながら周りを見渡すイタル。

(とりあえずもう少し進んでみるか……ん?)

 かすかではあったが、今まで木々のざわめきしか情報を受け取らなかった鼓膜に違和感のある音が飛び込んできた。
 足音、ではなさそうだ。何かが破裂した音のような、いや何かを絞ったような……かなり先から聞こえてきたはずだ。
 この道の先の村から発せられた音だろうと確信を持ったイタルは警戒を強め歩みを進めた。
 音の方向に近づくにつれて、イタルはその音の原因に察しがつきはじめる。極めて不快な音―――――そして、その正体に気づきつつもそれを否定したいイタルの中では、プレイヤーとしての正義心と人間としての尊厳が激しくせめぎ合っていた。

(あいつら、やってるな……!!)

 音はアガタザルが排泄物を産み出す際に発生している! 
 自分はプレイヤーの中でも真面目な方であると自負していたイタルだが、流石にこの状況は任務を放棄して帰還したい気分に駆られていた。近づけば近づくほど大きくなっていくその音は、十人十色の独自性を備えてはいたが、そのどれもが不快であることに変わりはなかった。

(そうか、耳を外せば……)

 嗅覚は現段階で失っており、装着後もしばらく効果は持続するらしいので、今ここで外しても匂いを消すという目的の一つを達成していることに変わりはない。
 だが……イタルは耳を外すことが出来なかった。
 偵察の本文は敵の数、周りの状況を調べ上げることである。発達した聴覚はその本分を全うするのにふさわしい能力であり、それは託された大役を投げ出すに等しい。
 フキノの顔が目に浮かぶ。「頼りにしてるで~」昨日の作戦会議が終わった後、自分の肩をポンと叩いてくれた、あの信頼を裏切るわけにはいかなかった。
 結果、イタルの中の天秤はプレイヤーとしての正義に傾いた。

(やってやろうじゃねえか……!)

 肩をいからせてズンズンと歩き始めるイタル。依然定期的に届けられる不愉快な音に少し慣れ始めてはいた。





 村は、村唯一の井戸を中心に、いくつかの建物が周りを囲むようにして配置されている。
 渡された地図を確認しながら、現実の情報と相違ないかを確認する。村に続く道を外れ、森の中をかき分けながら村の様子を伺っていたイタルは、概ね地図が正しいことを確認しおえていた。

(にしても、村の外に一匹もいないなんてな)

 発達した聴覚の扱いに慣れつつあったイタルは、アガタザルの足音や鳴き声(そして言うまでもなく……)が全て村のほうからしか聞こえてこないことに不気味さを覚える。徒党を組んでいるという表現は正しく、完全に村を自分たちのものにしているようだった。
 魔族は群れることはあるが、このように住処を明確にするのは珍しい。繁殖しないということは巣を持たないということであり、すなわち決まった住居を持たないということでもある。そこが人間や動物と一線を引く部分ではあった。ただし、今回は違う。以前のジロウのようにただただ襲い掛かる相手より、一定の場所に留まり戦う相手のほうが何倍も手ごわい。

(どうしたもんか……)

 予定されていた刻限は迫りつつあった。これ以上長居をしていては存在の転移の効果が消えてしまうおそれがある。
 だが、イタルはどうしても確認したいことが一つだけあった。

(この音、決まった場所から届いてきてるような)

 最早感覚の麻痺していた彼は、ひりだす音がある一定の場所からしか聞こえてこないことに気づいていた。

(あそこと、あそこか?)

 いつでも撤退できるように先ほど歩いてきた道に戻る。
 近くの木々に身を隠し、村の方に耳を傾けたイタルは木々から頭をのぞかせている二階建ての建物と、中心近くにある教会から聞こえてきているとあたりをつけ、より一層神経を集中させた。

(聞こえた、多分教会……まただ、これは村の奥のほうか?)

 そこまで聞いたところで、彼の脳内に電流が走った。

(高い建物?)

 地図を確認すると、村の奥には三階建ての家があった。教会も二階部分に大時計を備えているため村の中では高い建物の一つである。
 投擲物があれば当然上方を確保できれば戦闘は有利に進む。しかし、(魔族がそんな知恵を?)今までイタルが相手にしてきた魔族はほぼ単純に己の身体能力で立ち向かってくる相手ばかりだった。
 だが徒党を組むという異常な状況も手伝い、疑いはすぐに消え去った。

(戻ろう)

 情報は充分すぎるほどに集まった。奴らは村に篭り、来訪者を効率よく撃退するため高所を陣取っている。その事実を頭の中で反芻し、イタルは踵を返し撤退を始めようとした。

「!?」

 その時だった。こちらをじっと見つめる小さなアガタザルが一匹、イタルはその妙にくりくりした瞳と目があった。

(しまった、音に集中しすぎた)

 まだ存在転移のキセキが効いているのか、すぐには動きださないアガタザルだったが、いつ感づかれてもおかしくないと焦ったイタルは意を決し木陰を飛び出した。
 すると、ビインという張り詰めた弓の音が聞こえ、アガタザルの頭に一本の矢が突き刺さった。イタルがその矢の飛んできた方向を見ると、フキノが少し遠くで早く来いと手で合図を送っていた。

「遅いから見にきた、危ないところやったな」
「すみません、ちょっと調べたいことが多くて」
「成果は上々みたいやな、とりあえず看板のとこまで戻ろう」

 二人は小声でやり取りをかわし、足早に撤退を始めた。





「アガタザルは完全に村の中にこもりっぱなしです。村の外にいるとしても周りの森を警戒するようにうろうろしているだけ」

 イタルは地図にある村の境界線をなぞりながら、アガタザルがぴったりこの線を出てこないことを強調する。

「かなり難しそうですね」
「ここの墓地は?」
「墓地にはいませんでした」

 フキノは地図の右上にある墓標を指し示す。村の外れの小高い丘にある小さな墓地は、森を挟み村から離れているためか敵の姿は見当たらなかった。

「それと……おそらくアガタザルは高い建物に集まってそこに……糞を貯めてる」

 言い淀みかけたイタルだが重要なことなのでしっかりと言葉に出した。

「なんでそんなことが分かるんや、まさかズケズケと村の中に入ってったわけちゃうやろ」
「いえ、聞いたんです」
「?」

 三人は一同に首を傾げる。

「えーと……その、なんていうか、する時の音が聞こえてくるんです、これをつけてると」

 女性三人の手前今度は流石にぼかした言い方をするイタル。
 三人はそれを聞いてもまだ理解できていない様子だったが、彼のモジモジとした態度を見てだんだんと察しがつき始めた様子だった。

「あの……もし私の想像してることが本当だったら……」
「本当だったら?」
「先輩のことめちゃくちゃ尊敬します」
「好きにしてくれ……」

 顔を伏せる彼を見て三人も申し訳なさそうな態度になる。

「すまん……すまんイタル! 地獄からよく生きて帰って来たなあ……」
「イタルはすごいね、私じゃ絶対できない」
「やめてくれ、あまり褒められたもんじゃない」

 三人の賛辞を恥ずかしそうに断るイタルだったが、言葉とは裏腹に内心ではその反応に満足していた。あのような状況、持て囃されなければお釣りが帰ってこない。

「相手の兵器の場所が分かってれば行けそうかもな。村の建物は破壊していいって話やけど、教会と……調べもののために数軒は残しておこうか」

 報告を受け頷きながら作戦を練り始めた隊長を見て、イタルはもし自分の報告が間違いであったらと少し不安になる。流石に馬鹿らしすぎる報告だと自分は思う。相手の排泄の音を聞いた? 他の部隊であれば一笑に付されるような事実だ。

「あの……」
「なんか他に?」

 試すような目つきでイタルを見るフキノ。

「いえ、ありません」
「せやろ?」

 少し微笑んだ隊長の顔を見て、イタルの些細な不安は消し飛ぶ。この人は俺のことを、たとえ馬鹿みたいな報告であっても。

「じゃあ、まずはこの墓場からこの建物を狙おう。攻撃はスズ、頼むで」
「了解です」
「そのまま反時計回りに建物を燃やしていって、それでも敵が村から出てこなかったら残りは乱戦や、ええな?」
「はい!」

 隊長の確認を三人は勢いのよい返事で応えた。

「これはもう外しときますね、汚いのはコリゴリだ」
「え~、もったいない」

 ケモミミを外したイタルを見てカスミは残念そうに呟いた。





 森を密かに進みながら墓地へたどり着いた四人は村の様子を伺う。草に覆われた墓地には無造作に墓石が転がり、刻まれた文字は読み取れないほど風化している。
 遠目からではあるが村の方では何匹かが周りを警戒する様子でうろついているのが確認できた。

「三階建ての建物はあれやな、じゃあ頼むでスズ」

 村の端にある三階建ての建物は木造だった。詠唱をはじめたスズは時間をかけて自分の頭上に火球を産み出した。ゆっくりと大きくなっていく火球を途中で止め「こんぐらいですかね」と隊長に確認をとる。あまりに大きいと周りに被害が及ぶ可能性があるからだ。

「ええんちゃう?」

 その答えを聞いて深呼吸をついた彼女は建物に狙いを定める。

「シューティングファイアボール!!」

 標準的な詠語の一つを唱えたスズの頭上から人間大の火球が放たれる。弧を描いた火球はそのまま吸い付くように建物へ着弾した。轟音の後、建物に移った火は対象を燃やし尽くそうと浸食を始める。

「流石の制球力だ」

 賛辞を贈るイタルだったが次の瞬間耳をつんざく爆発音に耳をふさぐことになる。

「なに!?」

 見ると建物から巨大な火柱が立ち上っている。そこから飛び散った木片や黒い塊が墓地まで到達し、足元に突き刺さった。

「スズちゃん、いつの間にこんな凄いキセキを!?」
「し、知らないっすよ!?」

 キセキを放ったはずの本人は困惑して立ち上る火柱を眺めている。

「中の糞に燃え移って爆発したんか? 肥料には使われるって聞いてたけど火をつけるとこうなるんやな」

 一人冷静なフキノは村の様子と飛んできた物体を交互に確認している。

「とにかく、中にあいつらの武器があったことは確かみたいやな。あいつらもかなり動揺してるみたい」

 突然の爆発に甲高い鳴き声をあげるアガタザルが村のあちこちから出現してきた。

「じゃあ、次も頼む。今度はちょっと遠いけど」

 右手側の二階の建物は少し離れた場所にある。騒ぎを眺めていたスズはハッとして次なる火球を準備する。もう一度放たれた火球は前回と同じく正確に建物を捉えた。そしてこれまた同様にすさまじい爆発音を残して火柱が出現する。

「これも正解か、次は一番奥の建物やな」

 手際よく準備を行っていたスズはすでに火球を放っていた。上側を通り抜け森に着弾することをおそれてか、少し低いところに着弾したが、しばらくして前回同様すさまじい爆発が起こる。

「……結果イタルの仮説は大正解だったわけか、無策に飛び込まんでよかった」

 立ち上る三つの炎に慌てたアガタザルは村の中をひっきりなしに駆け回り動揺している様子だった。それでも散り散りになって森の方向に逃げ出すものはおらず、かたくなに村に留まっている。

「うーん、不気味」

 村に留まり続けるアガタザルの行動に不自然さを感じるフキノだったが、意を決したように「動揺してる今が好機や、行こか」と命令を下した。
 三人はそれに続いて墓地から村につながる下り坂を駆け下りた。

 村の地面は足場が悪くぬかるんでいた。

「ちょっとこれ! まさか?」
「や、先日雨が降ってたからきっと……というかそれや多分! うん!」

 明らかに森の中やその他の地面と質が違うように思えたが、先頭をきって村に飛び込もうとするフキノに、スズもカスミも遅れてはなるまいと覚悟を決めたように一歩を踏み出した。地面を踏んだ三人の顔は一様にひきつるも、プレイヤーの使命を全うせんと次なる一歩を踏み出そうとしている。

「ちょっと待った!」

 そこへイタルがやけに自信を湛えた笑みで待ったをかける。

「先輩はいい服着てるんですから前へ行ってくださいよ!」

 後ろで何やら大剣をいじっていた先輩に、少し苛立ちを見せているスズ。

「や、わざわざ淑女にこんな茨の道を歩ませるわけにはいかないと思ってね……」

 歩みを進めたイタルは大剣を両手で持ち地面に突き刺した。すると剣の切っ先から光の波紋が広がり、瞬く間に地面が変化していく。

「あれ? 何が起こったの?」

 不思議そうに地面を眺めるカスミはつま先で確かめるように地面を触る。先ほどとは違い足に伝わる感触は非常に健康的だった。

「浄化のイノリが大剣に付着したんだ。不確定要素だったから今まで言わなかったけど、これは便利な能力だな」

 イタルの大剣が、装備した服の能力を付着するのには時間差がある。条件はイタルが言語化するところ、使命を持った活動が必要なのである。つまり、イタルが清掃服を着て偵察任務をこなしたため、いつの間にか大剣には能力が一つ追加されていたというわけだ。
 付着する能力はばらばらであり、自分の想定したものとは違うイノリが追加されることもあったが、今回は完全に想定通りの能力が手に入りイタルは満足そうにうなずいている。
 そのまま村の方へ進み大剣を突き刺しながらイタルは道を切り拓いて行った。

「初めてあの大剣をカッコイイって思ったかも」
「後姿がえらい神々しく見えるわ……」

 三人はまるで神を見るかのような眼差しであった。
 無事に道が出来上がり、村の中に入っていくと、あたりには燃える建物を見上げけたたましい鳴き声をあげているアガタザルが散らばっていた。来訪者に気づいている様子はなく、今なら楽に事を済ますことが出来そうだ。

「俺は足場を作っときます」

 小声でつぶやいたイタルは率先して村の足場の浄化を続けている。

「よし、行くで!」

 弓を構えたフキノは遠くの敵にに狙いを絞り矢を放った。それが開戦の合図だった。近くの敵に斬りかかるカスミ、詠唱をはじめるスズ、地面を浄化するイタル。
 侵入者に気づいた何体かのアガタザルはプレイヤーの方へ攻撃をしかけてくる。そこから両陣営入り混じっての乱戦が始まった。大きな武器を失ったアガタザルは原始的な攻撃方法しか持たず、プレイヤーとして活動する四人にとって対処は難しくない。みるみる内に村の広場へアガタザルの死体が積みあがっていった。

「浄化もだいぶ終わったな」

 元の土色に戻った広場の地面を見渡し、満足げに頷くイタル。そろそろ自分も戦闘に参加しようとした瞬間、自分の腹部に突如として巨大な塊が飛び込んできた。

「いっ――――」

 重たい衝撃とともに嫌な音が耳に付く。同時に清掃服のキセキが発動し勢いよく出現した水流で塊は浄化された。衝撃によって後ろに少し吹き飛ばされたイタルはその塊が飛んできた方向を見やる。
 教会の時計台、その時計が開け放たれている。そこから姿を現したのは他とは段違いに体の大きいアガタザルだった。

「なんだあれ……」

 集団の頭とでもいうべき存在なのだろうか。随分と遅い出勤ではあるが、先ほどの破壊的な投擲を見れば脅威であることは明白だ。大きなアガタザルは次の攻撃を始めるべく時計台の影に隠れる……が、しばらくしてまた姿を現した。
 その後、少し、力むような表情を見せ、自分の下半身に右手を持っていく。

「出来立てかよ!」

 恐るべき洞察力というべきか、それとも今朝からの一連の流れで察しがついたのか、イタルはその行動を一瞬で読み解く。
 次の照準はまだ頭領の出現に気づいていない女性三人の方に向けられている様子である。間に合うか間に合わないか、イタルは既に走り始めていた。
 時計台のアガタザルは出来上がったブツを満足気に眺め、右手でそれを持ち、構える。

「スズ、危ない!」

 集中し詠唱を続けていたスズは声に気が付きそれを止めたが、危険の正体には気づいていない。時計台のアガタザルが大きく振りかぶり時計台から射出されたそれは、唸りをあげてスズの方へと向かっていく。

「届け……!」

 大剣を目いっぱい前方に伸ばすイタル。半分飛び込むような姿勢でジャンプしたイタルは、頭部めがけて発射されたブツを間一髪大剣で受け止めることに成功する。
瞬時に浄化のキセキが発動し黒い塊は茶色い土のような塊に変化して地面に落下した。

「……!? なんか凄い悪寒が……」

 まだコトを呑み込めていない様子のスズだったが、息を切らすイタルが指し示す方を見て驚愕する。

「な、なんすかアイツ!?」

 時計台のアガタザルは第三弾を繰り出そうと歯を食いしばっている。

「また来るぞ!」

 またもスズを狙って飛んできた塊をイタルはなんなく大剣で受け止めた。その様子を見てアガタザルは首を傾げている。自分の必殺技を糸もたやすく攻略されたのが腑に落ちないらしい。
 散らばって各々アガタザルに対処していた三番隊だったが、イタルの鬼気迫る声に残りの二人も異常に気が付き集まってくる。

「カシラのおでましっちゅうことか」

 時計台の方を見たフキノは弓を構え、素早く放った。それを察し時計台の影に隠れるアガタザル。矢は時計台を通り抜け反対側に飛んでいく。

「ちっ、賢いな」

 壁を背にしてこちらを横目で確認しているアガタザルの行動は、人間さながらといったところである。こうなればあの時計台に入り込んで直接始末するほかなかった。

「私が行きます」

 状況を素早く判断したカスミは自ら名乗りを上げて教会の方へ走り出した。途中とびかかってきた小さなアガタザルを斬り伏せ教会の扉を開ける。

「わっ」

 やはりというべきか、教会の中は惨憺たる光景が広がっていた。朽ちた長椅子と剥げた土壁、そして大量の汚物。しかし、状況が状況であるからか、カスミは一瞬躊躇をみせたものの、軽い身のこなしで汚物を避けながら飛び跳ねるように教会の中へと入っていった。
 一方外では必殺技を看破された時計台のアガタザルが奥の手を繰り出していた。先ほどまでは出し惜しみをしていたのか、教会の時計台に貯め込んであった排泄物を全てかき集め両手で持ち上げている。

「オイオイオイ!!!」

 敵が両手で持ち上げた球体は人間三人を容易に包み込むような大きさだった。

「ありゃ反則ちゃうんか!?」
「せ、先輩!!」

 ニヤリと少し微笑むような顔を見せたアガタザルは大きく腰を反らし、その反動で大きな塊をこちらへ投げつけた。

(……やることは一つ!)

 飛んでくる塊に対して、斬りつける形で対応すれば完全に浄化しきれないと踏んだイタルは大剣の握りを変えた。浄化は水滴が波紋を生み出すように、円形に広がっていく……。

(ならば!)

飛来する大きな塊のなるべく中心を捉え、剣を突き刺したイタル。手にムニュっとした嫌な感触が伝わる。浄化の大剣をつきさされた塊は刺さった部分から円形に浄化されていく。投擲の余韻を残している塊に、大剣は奥へ奥へと深く突き刺さっていき、イタルは塊に呑み込まれる形になった。

「お、おい、大丈夫か!?」

 清掃服をまとってるとはいえ、塊に包み込まれたイタルを心配し二人は急いで駆け寄った。しばらくして盛土のようになった塊からボコッと顔をのぞかせるイタルは「多分、大丈夫です」とほほ笑む。その笑顔は若干引きつっていたが。

 時計台の上では奥の手も破られたアガタザルが呆然とした表情で佇んでいる。
そこへ鋭く刀剣を抜き放つ音が響き渡った。時計台へと辿り着いたカスミが大きなアガタザルを頭頂から一刀に両断する音だった。吹き出す鮮血に動揺することなく、剣戟の後の余韻をゆっくりと残すカスミ。

「よくやったカスミ!」
「やりました!」

 カスミは刀を鞘におさめながら一息つく。そして、真っ二つになった時計台のアガタザルを見て、残り少ないアガタザルは森の方へ消えていった。
 今の今まで固執するように村に留まっていたアガタザルだが頭領の死によってその縛りが解けたのだろうか。辺りは静けさを取り戻し、村にはいくつかの焼けた建物とあちこちに散らばる茶色い残骸だけが残った。





 一仕事終えたイタルは、清掃服を外し、「The cutting edge is sharp」と書かれた白地のTシャツに着替えていた。
 村の外れにあった川の方ではカスミとスズが死に物狂いで衣類を洗っている最中で、既に体を洗い終わっていたイタルは切株に腰を下ろし「うおおおおおおお」という気合の入った声と衣服を擦る音をぼんやりと聞いていた。

「ふう、疲れた疲れた」

 そこへ、ケモミミをつけたフキノがやってきた。肩の方にはおさげの使い魔がちょこんと乗っかっている。
 アガタザルの討伐後、「少し調べものがある」と村に残ったフキノだが、その際イタルのつけていたケモミミを装着したいと言って家屋の中に入っていったのである。

「本当に匂いが消えるんやなあ、どのぐらいで治るん?」
「説明では明日から漸次的に、らしいです」
「漸次的なあ……」

スンスンと音を立て服の袖を嗅ぐフキノ。

「ま、それはそれとして今日は大活躍やったね」

 肩をたたいてイタルと同じ切り株に腰掛けるフキノ。下半身でイタルの体を少しズラそうとするフキノの大胆さにイタルは少し緊張した。

「いえ、偶然です」

 謙遜を見せるイタルだったが急な接触で動揺していい言葉が出てこなかった面もある。

「謙遜なさんな、多分報酬もはずむと思うで」

 そんなことはつゆ知らずフキノはアハハと笑いながらイタルの肩を叩く。
 散級からは個人の戦績によって特別な報酬が出る。それらは隊長と使い魔の報告で依頼側が決定するが、斥候に戦闘に大車輪の活躍を見せたイタルには間違いなく割りのいい報酬が払われることになるだろう。
 それを聞いてイタルは思いをはせる。戦闘においてこれといった取り柄のなかったイタル。祈術きじゅつも体術にも秀でず学校では座学の成績のみそこそこ優秀な結果を残していた自分。どうしてもプレイヤーになりたくて、苦心して編み出した大剣を様々な用途で扱う方法は、周りの目がどうしても気になったし、当初はその戦い方に自分でさえ自信を持てなかった。
 しかしハルドナリの三番隊にどうにか入隊して、そこで出会ったフキノという隊長はこんな自分の戦い方を真摯に理解し、そして信頼してくれていた。それは入隊当初から一つも変わっていない。
 逞しい体躯か? 豪気な統率力か? 明晰な知略か? そして、命を守る能力か? イタルはそれ以上に人を信頼する能力こそが人をまとめるために必要な能力だと考えていた。そして、隣にいる隊長はそれを、少なくともイタルの視点から見れば存分に発揮していた。

「フキノさんのおかげです」

 ボソッと呟いた言葉に「ん?」と顔を覗き込むフキノ。開いてるのだか開いてないのだかよく分からない細い目がイタルを見つめている。

「ああ、いや、何を調べていたのかなって……」

 どきっとしたイタルは取り繕うようにまったく別の言葉を発する。

「ああ、まあね。ちょっと嫌な話やけど最近うるさいやろ?」
「うるさい?」
「そう、魔族にも権利がある! 痛めつけない方法を模索せよ! って叫んでいる団体」

 イタルが住んでいるシラサトではあまり見られない活動だったが、帝都やその他の大都市では魔族も生物のうちの一つであり、それを無闇やたらに傷つけるのはいかがなものかと説く人が増加しているのだという。

「それで、今回の一件はアガタザルが家族のような行動をしていたか、またその痕跡があったか? という調査も依頼の一部やったんや。もしそれが見つかれば大事やから」

 辛気臭い話だから黙っていたと付け加えたフキノは一つため息をついた。

「まあ、今回はそのような痕跡はまったく見られませんでしたという報告になるな。家の中は無秩序に荒らされてて、墓場も教会も荒れ果ててたし……これは人間の物差しでしかないけど、とにかく奴らに仲間を思いやるなんて能力はないって結論や」

 少し遠くを見つめたフキノの両目は少しだけ開いている。

「あれ? やっぱつまんない話やった?」
「いえ、聞いたのはこっちですし……なんかすいません」

 いつもと違う雰囲気のフキノに違和感を覚えたイタルだったが、こちらを覗き込んだ顔はいつも通りに戻っていた。

「あれ? イタルと隊長、仲良しだね」
「先輩、なんかデレデレしてませんか?」

 そこへ普段着に着替えた二人が戻ってくる。切株を分け合うイタルとフキノに思うところがあるようだ。

「えへへ、せやろ~?」

 冗談めかして肩を抱き寄せるフキノに、イタルは照れながら「やめてくださいよ」と必死に抵抗するのだった。

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