吸血鬼 詰め合わせ

ritkun

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無邪気×もじもじ(微エロ)

ホワイトデート 3

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 一緒に入るの!?

 勘違いするな。心配してるだけだ。求めるようにまっすぐ見つめてくる瞳は、俺が倒れないかってそれだけの意味しかないんだ。

 いいか俺、絶対に見るなよ。見たら目を離せなくなる。あくまで普通に、あるじの首より下に視線を落としちゃ駄目だ。

 駄目だ! あるじの頬が陶器から桃になってる。髪も湯気で張り付いて、シャワーを浴びて完全に濡れた時よりもむしろ色っぽい。もう俺どうしたらいいの!?

 松葉を包んで浮いているガーゼを、助けを求めるように抱きしめた。爽やかな香りで冷静さを取り戻そう。この後に来るあるじの浴衣姿という衝撃に備えるんだ。

「辛い? そろそろ帰るか?」
 背中に直接あるじの手が!
 落ち着け、落ち着け! 貴重なあるじの浴衣姿を見るまでは!

 絶対色っぽい。それとも袖をふりふりして可愛くはしゃぐだろうか。駄目だ考えるな。落ち着けって!

「おい、大丈夫か?」
 背中の左手はそのままに右手で肩をつかまれた瞬間、横から抱きしめられているみたいになった。視界の端にあるじの胸板。

 ですよねー。
 あれだけの動きができるんだから、これだけの筋肉ありますよねー。

 俺は意識を手放した。

 次に目を開けると、開いている窓の向こうに露天風呂が見えた。

 えっと畳の上? バスタオルを敷いてるのか。浴衣を掛けてあって、胸の上に松が置かれてる。そして、浴衣を着て長座しているあるじの、あるじのひ、膝枕!

 のぼせていて良かった。俺がどんな気持ちだろうと完全に萎えている。

「起きたか。お前が『ゆかた~、ゆかた~』って言ってたからこっちに残ったけど、どうする?」
「もう少し、このままで」
 今の俺は何の心配も無くあるじに甘えられる。だって絶対に動かない。今度からヤバイ時は熱いお風呂に入ろう。

 そこまで考えて、なんだかなあって目を閉じる。
 こんなことばっかり繰り返してるな。何年後か何百年後かには心も体も落ち着いて、この温度差もなくなるのかな。でもやっぱり。

あるじ
「ん?」
「ずっとこんな風でいられたらって俺は思うよ」
 それだけ言ってもう一度眠った。






 そうだね。こんなすれ違いも愛おしいよ。
 鼻血が出そうなくらいパニックになりながらも、そんな自分を楽しんでいる自分もいる。

 帰ってから数日後、あるじがパジャマの代わりに浴衣を着るようになった。俺の分も用意してくれた。

 違うんだよ。浴衣姿のあるじを見たかっただけなんだよ。
 朝になると帯だけになるなんてもんじゃない。早い段階から鎖骨や胸板を見放題で、俺たちの腕やら足やら当たりまくって、もうラッキー通り越して拷問だよ。



 こうして俺は寝る前に熱めのお風呂に入るのが日課になった。
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