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無邪気×もじもじ(微エロ)
菖蒲湯 2(無邪気サイド)
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「ただいま!
これ貰った」
俺の運命の相手はだいたいソファで本を読んでいて、俺が帰ると立ち上がってお帰りを言ってくれる。別に座ったままでいいのに。
「お帰りなさい。
菖蒲だ。大丈夫なの?」
「うん。むしろ力になるって退魔師が言ってた」
人間の中でも「インテリ」と呼ばれる系統だそうで、やっぱりこれが何か知ってたらしい。なんか考え込んでぶつぶつ言ってる時はいつも邪魔しないことにしてる。
そこそこ考えが落ち着いたっぽいタイミングで話を続ける。
「風呂に浮かべるんだろ?
この香り好きだ。速攻飲んでいい?」
「いいよ。すぐ支度するね」
菖蒲を束ねていた紐をほどいて湯船に浮かべるのを見てちょっと驚いた。
「バラすの?
片付け大変じゃね?」
「俺だけ裸なのってなんか恥ずかしいから……」
香りが広がるとかじゃなくて浴槽の中を隠したいのか。
10分したら来てって言われたから、その間に倒れた時のためにバスタオルを敷いたりナイトテーブルにも多めに水を置いたり浴衣を用意したり。
裸足になって脱衣所へのドアをノックして入って、浴室のドア越しに声を掛ける。
「どうだ?」
「いいよ」
俺が入ると、浴槽の縁に両腕を置いて胸より少し下までお湯から出した。
「ほんと良い香りだな。俺も後で入ろ」
一緒に入ろうかとも思ったけど、のぼせた時になんとかしやすいように俺は服を着てた方が良い。のぼせたのはホワイトデーの1回きりだけど念のため。
「主は葉っぱよりも薔薇の方が似合うよ。薔薇も今が開花時期だから香りが気に入ったら試してみようよ」
「……そうか?
じゃあ今度な」
予想外の言葉にどうしたらいいかちょっと分からなくなった。
だんだん怖がられなくなってきてるとは思ってたけど、俺に花が、しかもバラが似合うとまで思われてたなんて。
どうしよう。ここで噛みついたらせっかくの打ち解け具合が台無しになるかな。
嬉しくて噛みつきたいような、嬉しいから噛みつけないような。自分でも解んない変な感じ。
床に両膝をついてバスタブに乗せられている左手を取る。
「飲んでいい?」
「なんで手なの」
不思議そうな空気が少しも無く小さく首を傾げながら穏やかな表情で言うと、更に首を傾けた。
「めちゃくちゃ飲みやすい状態だよ?」
一番の急所がためらい無く差し出されて、俺にできることは何でもしてあげたいって改めて思った。
できるだけショックが少ないように、牙を出さずに唇だけで触れて噛む場所の予告をする。タイミングも分かるように唇を肩から離さないままで口を開けて噛みついた。
大好きな風呂でリラックスしてるからかな?
ベッドでする時より体が柔らかい。それなのにいつもより怖がってるみたいに俺にしがみついてきて、でもすぐに手を離した。
美味しくて口を離せないから、二の腕を掴んでいた手を滑らせて俺から離れた手を探す。手首を捕まえて俺の背中へと引っ張った。
「あ、主?」
顔の位置はそのままに牙を抜くだけで答える。
「捕まってろよ。沈んだら大変だろ?」
優しく言おうとしたけど早口になっちゃった。それを言うのももどかしくてまた飲み始める。
ごめん。浴槽から引き上げるのが大変って意味じゃなくて、お前がしんどいだろって意味だからな。
俺とほぼ同時に契約した2組はそこそこ意思の疎通ができてるのに、俺たちはイマイチだ。考えてることが全然違って言わないと伝わらない。今回もやっぱり予想外な反応が来た。
「服が濡れちゃうよ」
「どうせ着替える服だよ」
「濡れた服がくっつくの嫌じゃない?」
相変わらずごちゃごちゃ考える奴だな。
「じゃあ濡れる前に脱ぐ」
「え!?」
俺の思ってることも伝わらないみたいで、驚いて少し離れた隙にばっと脱いでまた引き寄せる。この感じを前に見たのを思い出した。
「人魚みたい」
「は!?」
人間の世界にはいないのかな。
「友達の恋人が、上が俺たちみたいで下が魚みたいなんだよ。友達は上下まあ俺たちみたいな感じ。二人がこうしてるの見たことあんだよ」
二人は血を飲んだりしないけどと思いながら食事を再開する。
なんかすごいバスタブがジャマだ。あいつらもこんな気持ちなのかな。
いや、あいつら恋人同士じゃん。
今の俺よりもっと、あいつらの方がくっつきたい気持ちが強いんだろうな。この気持ちより強いって相当辛いだろうな。
これ貰った」
俺の運命の相手はだいたいソファで本を読んでいて、俺が帰ると立ち上がってお帰りを言ってくれる。別に座ったままでいいのに。
「お帰りなさい。
菖蒲だ。大丈夫なの?」
「うん。むしろ力になるって退魔師が言ってた」
人間の中でも「インテリ」と呼ばれる系統だそうで、やっぱりこれが何か知ってたらしい。なんか考え込んでぶつぶつ言ってる時はいつも邪魔しないことにしてる。
そこそこ考えが落ち着いたっぽいタイミングで話を続ける。
「風呂に浮かべるんだろ?
この香り好きだ。速攻飲んでいい?」
「いいよ。すぐ支度するね」
菖蒲を束ねていた紐をほどいて湯船に浮かべるのを見てちょっと驚いた。
「バラすの?
片付け大変じゃね?」
「俺だけ裸なのってなんか恥ずかしいから……」
香りが広がるとかじゃなくて浴槽の中を隠したいのか。
10分したら来てって言われたから、その間に倒れた時のためにバスタオルを敷いたりナイトテーブルにも多めに水を置いたり浴衣を用意したり。
裸足になって脱衣所へのドアをノックして入って、浴室のドア越しに声を掛ける。
「どうだ?」
「いいよ」
俺が入ると、浴槽の縁に両腕を置いて胸より少し下までお湯から出した。
「ほんと良い香りだな。俺も後で入ろ」
一緒に入ろうかとも思ったけど、のぼせた時になんとかしやすいように俺は服を着てた方が良い。のぼせたのはホワイトデーの1回きりだけど念のため。
「主は葉っぱよりも薔薇の方が似合うよ。薔薇も今が開花時期だから香りが気に入ったら試してみようよ」
「……そうか?
じゃあ今度な」
予想外の言葉にどうしたらいいかちょっと分からなくなった。
だんだん怖がられなくなってきてるとは思ってたけど、俺に花が、しかもバラが似合うとまで思われてたなんて。
どうしよう。ここで噛みついたらせっかくの打ち解け具合が台無しになるかな。
嬉しくて噛みつきたいような、嬉しいから噛みつけないような。自分でも解んない変な感じ。
床に両膝をついてバスタブに乗せられている左手を取る。
「飲んでいい?」
「なんで手なの」
不思議そうな空気が少しも無く小さく首を傾げながら穏やかな表情で言うと、更に首を傾けた。
「めちゃくちゃ飲みやすい状態だよ?」
一番の急所がためらい無く差し出されて、俺にできることは何でもしてあげたいって改めて思った。
できるだけショックが少ないように、牙を出さずに唇だけで触れて噛む場所の予告をする。タイミングも分かるように唇を肩から離さないままで口を開けて噛みついた。
大好きな風呂でリラックスしてるからかな?
ベッドでする時より体が柔らかい。それなのにいつもより怖がってるみたいに俺にしがみついてきて、でもすぐに手を離した。
美味しくて口を離せないから、二の腕を掴んでいた手を滑らせて俺から離れた手を探す。手首を捕まえて俺の背中へと引っ張った。
「あ、主?」
顔の位置はそのままに牙を抜くだけで答える。
「捕まってろよ。沈んだら大変だろ?」
優しく言おうとしたけど早口になっちゃった。それを言うのももどかしくてまた飲み始める。
ごめん。浴槽から引き上げるのが大変って意味じゃなくて、お前がしんどいだろって意味だからな。
俺とほぼ同時に契約した2組はそこそこ意思の疎通ができてるのに、俺たちはイマイチだ。考えてることが全然違って言わないと伝わらない。今回もやっぱり予想外な反応が来た。
「服が濡れちゃうよ」
「どうせ着替える服だよ」
「濡れた服がくっつくの嫌じゃない?」
相変わらずごちゃごちゃ考える奴だな。
「じゃあ濡れる前に脱ぐ」
「え!?」
俺の思ってることも伝わらないみたいで、驚いて少し離れた隙にばっと脱いでまた引き寄せる。この感じを前に見たのを思い出した。
「人魚みたい」
「は!?」
人間の世界にはいないのかな。
「友達の恋人が、上が俺たちみたいで下が魚みたいなんだよ。友達は上下まあ俺たちみたいな感じ。二人がこうしてるの見たことあんだよ」
二人は血を飲んだりしないけどと思いながら食事を再開する。
なんかすごいバスタブがジャマだ。あいつらもこんな気持ちなのかな。
いや、あいつら恋人同士じゃん。
今の俺よりもっと、あいつらの方がくっつきたい気持ちが強いんだろうな。この気持ちより強いって相当辛いだろうな。
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