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筆(強制リバ)
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「ふああっ!……あっ……ぁぁ……」
自分の声で目を覚ました。ベッドに仰向けで寝ている俺は胸を大きく上下させて息をしている。
布団が盛り上がっていて、俺の足の間にいるのは人狼の深雪。真っ白い毛に水色の瞳でかわいいからと、変な人に囚われて色々やらされていた。男の子なんだけど。
退魔師というと魔物を狩るようなイメージだけど、実際は人間と人外の揉め事に公平に対処する。そのために退魔師は人間と人外がペアで動く。俺のペアはこの深雪。
俺にはそんなことしなくていい、普通はしないものだと何回言っても好きでやっていることだと聞かない。
「深雪……」
俺が懲りずに言おうとするのを今回も聞いてくれないみたい。
「やっぱり庸平のは最っ高においしい!」
布団の中を上がってきて俺の胸に抱きつく。せめてパンツとパジャマを直したい。
俺の鳩尾あたりに顎を乗せて上機嫌で見上げてくる。キスでもしそうな空気だけど、それは冴に止められている。
冴は国宝級の太刀の付喪神で、いま深雪が口にした場所以外は俺の全てが自分の物だと言い張っている。太刀そのものは俺が退魔に使っているからお相子という言い分。
「おはよう。シャワーを浴びてくるからリビングで待ってて」
「はーい」
深雪が元気にベッドから出て、捲られた部分を慌てて直す。中でパンツとパジャマを直したら冴の声が響いた。
〈シャワーを浴びるのだからいっそ脱いでしまえばいいのに〉
〈そんな恰好で歩けないよ〉
このマンションは玄関を入ってすぐにお風呂とトイレ、ドアの向こうにキッチン、リビング、寝室がある。つまり寝室のドアを出るとすぐにリビング。そこを通らなければお風呂に行けないんだから。
シャワーを浴びながら考える。
深雪は囚われていた場所でずっと生成りのパジャマを着せられていた。そのせいで人間になる時は自動でパジャマもセットで再現してしまう。
それに変なことばかりさせられていたから、今朝俺にしたようなことを何とも思っていない。
人狼、せめて人の姿になれる人外の友達ができたら色々参考にできるのに。
シャワーから出たら電話が鳴った。長門さんからで仕事の依頼だった。
午後二時。事務所の自動ドアの前に、ドアが開かない程度に近付き様子を見る。受付の中にいるのは運動部と不良のライン上みたいな成人男性。人が来ることを想定してないみたいな自由っぷりで、逆にこっちが気を使う。
今日は椅子に座って背もたれに寄りかかり腕を組んでいる。顔にはしっかり目のサングラス。
俺が自動ドアを通っても微動だにしない。
あ、寝てる。
深雪を手で止めて様子を見る。
あ、起きた。
「お疲れ様です。ほん」
「はよー……。中会議室いちー」
「お早うございます。中会議室1ですね。ありがとうございます」
「はーい。おやすみー」
廊下を歩きながら気配で分かる。もう一度寝る気は絶対に無い。
中会議室に入ると長机が横に二個、縦に三個。ホワイトボードの前に机が一つ。
長門さんは文系の大卒一年目という見た目で、今日はシャツにベスト、いかにも事務員さんというアームカバーをしている。
一列目の椅子を跨ぐように座って、二列目の机に書類を広げている。
ネットで調べた情報によると、長門家は『正』という字が付くのが本家の人らしい。この人は『正純』。入社一か月の俺が会えていい人なのかな。
長門さんは相変わらず普通だし、本人から長門家に関する説明はない。
「お疲れ様でーす。どうぞ座って下さい」
二列目の椅子を勧められて座ると、書類は俺に合わせた向きで置かれていた。
「受付寝てたでしょ」
「もう起きるみたいです」
「そうですか。オッケーでーす。
人外カフェ『カチューシャじゃないよ♪』に行ってきて下さい」
チラシを見る。やけに明るく言うなと思ったら音符を表現してたのか。
「人外カフェなんてあるんですか」
「合法ですけど、簡単に違法行為ができる環境です。仕事内容は覆面調査員。人外が被害を受けていないか、人外が人間を攻撃していないか、それとなくチェックしてきて下さい。
退魔師だとバレるまで定期的に頼みたいので、無理はしなくていいですよ」
机の上にある身分証に目が行った。俺の年齢が20歳になっている。
「これは?」
「バーフロアもあるので」
ここの二歳差はけっこう大きい。
「あの、なにか二十代に見えるアドバイスをいただければ」
「大丈夫ですよ。最初から二十代に見えてましたから」
「………………そうですか」
自分の声で目を覚ました。ベッドに仰向けで寝ている俺は胸を大きく上下させて息をしている。
布団が盛り上がっていて、俺の足の間にいるのは人狼の深雪。真っ白い毛に水色の瞳でかわいいからと、変な人に囚われて色々やらされていた。男の子なんだけど。
退魔師というと魔物を狩るようなイメージだけど、実際は人間と人外の揉め事に公平に対処する。そのために退魔師は人間と人外がペアで動く。俺のペアはこの深雪。
俺にはそんなことしなくていい、普通はしないものだと何回言っても好きでやっていることだと聞かない。
「深雪……」
俺が懲りずに言おうとするのを今回も聞いてくれないみたい。
「やっぱり庸平のは最っ高においしい!」
布団の中を上がってきて俺の胸に抱きつく。せめてパンツとパジャマを直したい。
俺の鳩尾あたりに顎を乗せて上機嫌で見上げてくる。キスでもしそうな空気だけど、それは冴に止められている。
冴は国宝級の太刀の付喪神で、いま深雪が口にした場所以外は俺の全てが自分の物だと言い張っている。太刀そのものは俺が退魔に使っているからお相子という言い分。
「おはよう。シャワーを浴びてくるからリビングで待ってて」
「はーい」
深雪が元気にベッドから出て、捲られた部分を慌てて直す。中でパンツとパジャマを直したら冴の声が響いた。
〈シャワーを浴びるのだからいっそ脱いでしまえばいいのに〉
〈そんな恰好で歩けないよ〉
このマンションは玄関を入ってすぐにお風呂とトイレ、ドアの向こうにキッチン、リビング、寝室がある。つまり寝室のドアを出るとすぐにリビング。そこを通らなければお風呂に行けないんだから。
シャワーを浴びながら考える。
深雪は囚われていた場所でずっと生成りのパジャマを着せられていた。そのせいで人間になる時は自動でパジャマもセットで再現してしまう。
それに変なことばかりさせられていたから、今朝俺にしたようなことを何とも思っていない。
人狼、せめて人の姿になれる人外の友達ができたら色々参考にできるのに。
シャワーから出たら電話が鳴った。長門さんからで仕事の依頼だった。
午後二時。事務所の自動ドアの前に、ドアが開かない程度に近付き様子を見る。受付の中にいるのは運動部と不良のライン上みたいな成人男性。人が来ることを想定してないみたいな自由っぷりで、逆にこっちが気を使う。
今日は椅子に座って背もたれに寄りかかり腕を組んでいる。顔にはしっかり目のサングラス。
俺が自動ドアを通っても微動だにしない。
あ、寝てる。
深雪を手で止めて様子を見る。
あ、起きた。
「お疲れ様です。ほん」
「はよー……。中会議室いちー」
「お早うございます。中会議室1ですね。ありがとうございます」
「はーい。おやすみー」
廊下を歩きながら気配で分かる。もう一度寝る気は絶対に無い。
中会議室に入ると長机が横に二個、縦に三個。ホワイトボードの前に机が一つ。
長門さんは文系の大卒一年目という見た目で、今日はシャツにベスト、いかにも事務員さんというアームカバーをしている。
一列目の椅子を跨ぐように座って、二列目の机に書類を広げている。
ネットで調べた情報によると、長門家は『正』という字が付くのが本家の人らしい。この人は『正純』。入社一か月の俺が会えていい人なのかな。
長門さんは相変わらず普通だし、本人から長門家に関する説明はない。
「お疲れ様でーす。どうぞ座って下さい」
二列目の椅子を勧められて座ると、書類は俺に合わせた向きで置かれていた。
「受付寝てたでしょ」
「もう起きるみたいです」
「そうですか。オッケーでーす。
人外カフェ『カチューシャじゃないよ♪』に行ってきて下さい」
チラシを見る。やけに明るく言うなと思ったら音符を表現してたのか。
「人外カフェなんてあるんですか」
「合法ですけど、簡単に違法行為ができる環境です。仕事内容は覆面調査員。人外が被害を受けていないか、人外が人間を攻撃していないか、それとなくチェックしてきて下さい。
退魔師だとバレるまで定期的に頼みたいので、無理はしなくていいですよ」
机の上にある身分証に目が行った。俺の年齢が20歳になっている。
「これは?」
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「大丈夫ですよ。最初から二十代に見えてましたから」
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